誰だって誰かのヒーローになれる
「もう少し身長が高かったら」
「もう少しスピードがあれば」
何度も何度も言われてきた「タラレバ」の言葉。
154センチ、ストレートはMAX90キロくらいしか出ない。
そんな私が、誰かのヒーロー(正確にはヒロインだけどここではヒーローって言葉を使うね)になれたのはついこの間のお話。
先日、千葉県松戸市の小学生のチームに100人規模でピッチング指導をさせてもらった。
各チームのエースはもちろん、ピッチング初心者、ピッチング指導をしている監督コーチが集まり、午前中3時間みっちり指導に励んだ。
代表の矢野さんのご厚意で、
「はるはるちゃんの今後の活動をみんなで応援しよう!」
と支援金を頂き、後日松戸市で有名な梨まで送っていただいた。
500円玉のお話。
頂いた支援金の中に、500円が1枚だけ入っていた。
その他はすべてお札だったので、少し不思議に思っていると、矢野さんからご連絡が。
とある女の子が「少ないけど…」と500円を渡してきたそうだ。
私は小学生の女の子から500円という大金を寄付金としてもらったのだ。
その子がどんな気持ちで渡したのか、どんな思いで出したのかは直接もらっていないからわからない。
でも、冷静に考えて、小学生のお小遣いなんて、月々たかが数百円、もらっても数千円だろう。
その中から振り絞って500円という大金を渡してくれたことが、今回のピッチング教室に大きな意味をもたらしてくれたのだ。
無名選手に長蛇の列
一度も実業団でプレーをしたことがない私は、「無名選手」といってもおかしくないポジションにいると思う。
そんな私が「サイン会」を経験することができた。
私にサインを書いてもらうために並んでくれる子どもたちや保護者の方々。
こんなに幸せな瞬間はきっと実業団に行っていない選手で味わうことはないと思う。
このサイン会を通じて、誰かに夢を与えられる存在なんだともっと胸を張って生きていこうと感じた瞬間でも会った。
長所は短所と紙一重
大学生までは、「身長が低い」「手が短い」と散々容姿で判断され、ピッチャーとしての評価が、「身長が低いのに」という言葉が冒頭につくことが多かった。
でも今は違う。
この身長だからこそ、この手足の長さだからこそ、「もしかしたら私にもあんなボールを投げられるかも?」と子どもたちに期待させてあげることができる。
もしかしたら子どもたちだけじゃないかもしれない。
私の身長、スピードが誰かのヒーローになるためのとっておきの調味料だったのだ。
ピッチングだけを見たら、日本代表選手の人たちには勝てないかもしれない。
でも、「154センチの女の子があんなボールを投げている」というレッテルは誰にも真似できないし、「もしかしたらできるかも?」という気持ちにさせることは、私のほうが得意なのではないだろうか。
私は背中で見せる選手ではなく、一人ひとりに寄り添った「会いに来るソフトボール選手」であり続けたい。