豚提督オジャム3 サイレント ネオ-ムーン ソング
そこに10将を引き連れてシャギがやってきた。
「これは、これは、オジャム閣下とソデ大臣、ご機嫌はいかがでしょうか。どうも顔色がよくありませんな。どこがお体の具合でも悪いのでしょうか」
しらじらしくシャギが言う。
「ソデ様、朝議に遅れたことお詫びいたす。さあ、早速始めましょう。議題はそうだな…」
とシャギが首をかしげる。
すると、参謀のマーバイムが前に進み出て言った。
「シャギ様、次の提督に誰がつくかという議題はいかがでしょうか」
それを聞くと、シャギは愉快そうにクックと笑い、大きくうなずいた。
「それもよかろう。さあ、ソデ大臣、この議題で話をしましょう」
「な、なにを言うか…提督はオジャム閣下が生きている限り、変更などありえぬ…」
ソデがそう言い終わるやいなや、シャギは愛刀を抜いた。
「ほう、オジャム閣下が生きている間はと申されるか…」
シャギは一度はオジャムの方を向いたが、すぐにソデに向き直った。
「しゃ、シャギ、貴様は受けた恩を忘れたのか!?」
ソデが叫ぶが、シャギには何も響かない。
「恩…恩とは、何とも…」
シャギはため息をつくと、ゆっくりとソデに近づいていく。
巨躯の仮面騎士が、ぶるぶる震えるソデを見下ろしている。
「いつお主がワシに恩を売ったというのか!? いつも血を流すは我がシャギ党のみ。貴様のように都合が悪い時は陰にかくれて、裏でこそこそする狸などに恩を受けた覚えはないわ!」
「しゃ、シャギ…本気でそう言っておるのか!?」
「・・・お主はムーンキングダムの小娘と連絡を取っているそうではないか!?」
ソデはそれを聞くと顔色をさっと変えた。
「お前のような文官ふぜいが、我がシャギ党と対等に戦えると思ったか!?」
シャギはそういうとソデを蹴り飛ばした。
「ぎゃ!」
と悲鳴をあげたソデは、壁に叩きつけられた。
生きた心地もしないソデは赤ん坊のようにはって近づくと、ついにはシャギの足にしがみついた。
「シャギ…いや、シャギ殿、シャギ様…どうか、命だけは…」
シャギは不気味なほど冷たい目で、ソデを見下ろしている。
「わ、わかり申した。提督の座は、シャギ様にお譲りいたします。どうか、どうか、お許しを…我が息子、オジャムはシャギ様のお好きなようにして結構です」
「ほう、ワシが提督になることに不服はないと申すか」
「もちろんですとも…実を言えば、私はいづれシャギ様に提督の座をお譲りするつもりでした。それが、予定より早くなってしまって、はは…」
ソデが作り笑いすると、シャギが「なるほど、それならこのような大層なことせずにすんだの」と言って大笑いした。
すると、シャギにつられて10将も笑い声をあげた。
「では、これからワシを提督としてあおぐのだな」
「もちろんです」
ソデはよろよろ立ち上がると、手でごまをすりながらうなずく。
「なるほど、ならば、まず提督として最初の命令を下さねばならんの」
「なんなりとおっしゃってください!」
ソデがほっと息をついたのも束の間…
「ソデ、貴様を死刑といたす」
「…え!?」
「ソデよ、ワシはお主のような輩が反吐がでるほど嫌いでの。自分の手を汚さず権力を握り、心にもないことを平気で口にするような奴がの」
「しゃ、しゃ、シャギ様、御冗談を…どうか御慈悲を」
ソデは再び腰を抜かした。
「ああ、慈悲はかけてやろう、今までのつきあいもあるで。本来ならば、はりつけにして八つ裂きにするつもりじゃったが…」
シャギは抜いていた刀を一閃、ソデの首を切り落としてしまった。
「これが、ワシができる唯一の慈悲じゃて…」
ソデの首はごろごろと転がり、提督の椅子に座るオジャムの足元で止まった。
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