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コンクリオン家の悲劇6 サイレント ネオ-ムーン ソング

シャローン編先行配信開始

月歌の中央に位置するムーンキングダム。
月歌一の超大型都市であり、王都と呼ばれることもある月歌の首都である。

月歌では通常、朝と夕方に会議をする習わしがあった。
すなわち、朝は朝議、夕方は夕議といった
その夕議が、ちょうど開かれている時だった。
エピ・コンクリオンら3人はやっとのことで、キングダムにたどりついたのである。

提督の椅子には、キングダムを治める若干20歳のシャローン・メルセデウス18世が座っていた。
ムーンキングダムをおさめる提督は”月歌の大都督”とも呼ばれ、他の提督とはその意味合いが全く違っていた。
シャギが「中央の小娘」と吐き捨てる人物こそが、その大都督として君臨していたのだ。

「シャローン様、シャローン様、大変です!」
政庁の会議の場に、1人の兵士があわただしくかけこんできた。
「いががいたした、今は夕議の最中、後にはできぬのか!?」
シャローンの横に立っている、いかにも賢いという風情でメガネをかけている軍師カペッロマンJrが言った。
「申し訳ありません。しかし、何卒火急の知らせということで…」
「というと…」
提督の椅子に座るシャローンが口を開いた。
「は、カイバのコンクリオン家・当主のご長男、エピ・コンクリオン殿ら3名が、使者として面会を求めておりまする…」
「コンクリオン家だと…」
シャローンだけではなく、夕議にいる家臣たちが怪訝そうな顔をして、ざわめき立った。
「シャローン様、コンクリオン家といえばカイバの名門。しかし、カイバではつい先日、提督だったレプザ殿が病死しております。跡目はレプザ殿の甥にあたるオジャム殿というお方が継いだとか。
しかし、納得しない家臣が謀反を起こすなど、色々うまくいっていない話を聞いております」
「ふむ…」
シャローンがうなずく。
「そういえば、シャギ党とかいう砂漠で一大勢力を誇る悪党を招き入れたそうだな?」
「その通りです。しかし、シャギ党の噂は芳しくありませんな。市民に略奪を働き、諌める者あらば容赦なく処刑していると聞きます」
シャローンの問いにカペッロマンJrは続ける。
「しかも、最近は北閥と接近していると言います」
「なに!?」
シャローンは”北閥”と聞いて声を荒げた。
北閥は兵強く、将きら星の如くと言われ、北方で一大勢力を誇るシャローン、最大のライバルである。
北閥を束ねるのは60歳を超える老獪な政治家、フィヨルドⅢ世だった。
シャローンの父であるエビル・メルセデウス17世の暗殺にも絡んだとされる人物だ。
「カペッロマンJrよ、それは聞きづてならん話だな」
「はい、このままではカイバが北閥に転ぶは時間の問題かと…」
「そうか…」
シャローンはダークブラウンの瞳を一瞬きらめかせ、うなずいた。
「それで、エピ殿はどのような目的の使者として参られた?」
「はっ…現在、エピ殿の父上を始めその一族はカイバの西、砂漠基地を拠点としています。その砂漠基地で挙兵するとのこと。援軍を求めて参られたようです」
兵士が答えると、家中の者は再びざわめいた。
「援軍じゃと!?」
「いきなりきて、兵を寄越せとは虫がよいのではないか!?」
「しかし、エピ殿といえばカイバでも名高い知勇兼備の将と聞くぞ」
「だからなんだというんだ。まだ、まだ若造と聞く。我々は安易にかかわるべきではない」
などと、各々が勝手に意見を言い始めた。
それを遮るように、カペッロマンJrがシャローンに意見を具申した。
「シャローン様、これは安易に受けるべき事柄ではございませぬ。砂漠基地にこもるコンクリオン家の兵は、たかが知れております。
今援軍を出すとも、おそらくは間に合いませぬ。しかも、カイバは北閥に傾いているとはいえ、今後の外交次第では中立に戻せるかもしれません。
ここは、断るが上策かと心得ます」
カペッロマンJrの意見に、家臣たちも「そうじゃ、そうじゃ!」と大いに賛同してうなずいている。
シャローンは「そうか…」とだけ言って、瞳を再びきらめかせた。

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遥ナル
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