樫の木庵のマボ-マボはどこに…!? 3
「そうだよ、ネネ。村中を探したってこんなにぜいたくをして、これほど豊かなディナーを迎える家なんてないよ。ネネは村で一番の幸せ者さ」
「違うわ、お父様。私は世界で一番の幸せ者よ」
「ああ、そうだ。これは、お父さんが一本取られたよ!」
アルマンゾさんがそう言うと、ネネと顔を見合わせて、大きな笑い声を立てました。
その時になってやっと、時計台に立っている樫の木ばあちゃんの存在に気が付きました。
貧しいばあちゃんですから、凍てつくような寒い夜だと言うのに、薄い2枚のセーターを重ね着して、その上にすすけたフードつきのショールをまとっているだけでした。かわいそうなことに、手袋さえしていません。
「ねえ、お父様…」
「どうしたんだい、ネネ?」
「こんな寒い夜にマボのおばあさんは、あんなところに立って何をしているのかしら? ほら見て! 手袋もしていないのよ!」
少し離れた所にいる樫の木ばあちゃんは精一杯の声を出していますが、風が空を切るようにピューピュー泣いていますから、何も聞こえませんでした。
ネネは自分のしている手袋をあげれば、樫の木ばあちゃんはどんなに喜ぶだろうと思いました。
ですが、アルマンゾさんは言いました。
「きっと誰かと待ち合わせでもしているんだよ。それに、付き合っても一文にもならない連中とは、関わらないのが賢いんだよ。
まして、何かをあげるなんてとんでもないことだ。ああいう連中はすぐにずうずうしくなり、しきりに屋敷にやってくるようになるだろう。そのたびに何かをせびられたら、どうするんだい!?
それに、ネネの手袋は金貨を出して買った上等なものなんだよ。だけど、ああいった連中は金貨なんて一枚たりとも持っていないんだ。関わると損するだけだ。さあ、ネネ、うちに帰ってディナーを食べよう」
アルマンゾさんは強くネネの手を引きました。ばあちゃんの方を心配そうに見つめるネネでしたが、引っ張られるようにその場から去って行ったのです。
樫の木庵のマボ第一巻・最終話を更新中
花を摘むモモ1
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