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コンクリオン家の悲劇8 サイレント ネオ-ムーン ソング

シャローン編 第1話 先行配信

会議の場に通されたオルデン・カミンスキは、シャローンに礼もとらずに、すぐさまエピに話しかけた。
目から涙をこぼしている
「エピ様! む、無念でござる。砂漠基地は落ち、レッカ様らコンクリオン家のご一族も…」
「間に合わなかったか…」
エピら3人は肩をがっくりと落とした。

カミンスキが語る砂漠基地の最後は、おおよそこのような内容であった。

エピら3人が援軍に向かうのと入れ替わるように、シャギ党がレッカらコンクリオンの一族がこもる砂漠基地に押し寄せた。
シャギはたかだか50機で基地にたてこもるコンクリオン家に対し、たかをくくっていた。
また、シャギ党の損害を出さないために、カイバ中央軍に先鋒を命じた。

カイバ中央軍は砂漠基地を取り囲むと、時の声を上げて攻め寄せた。
しかし、威勢の良い声とは裏腹に、ほとんど攻撃を仕掛けなかった。
なぜなら、カイバの兵士の中には、かつてのレッカの配下も多く、尊敬するものも多くいたためだ。
それゆえ、なかなか攻撃ができなかったのだ。
そんな状況が3日間続いた。

砂漠基地の前線から離れたところで指揮をとるシャギは、上機嫌そのものだった。
コンクリオン家さえいなくなれば、カイバを手中に収めたも当然であるからである。
しかも、詰めさえ間違わなければ、多勢に無勢、必勝という状況だった。
シャギ党だけではなく、カイバの兵権を握るシャギは、圧倒的有利だったのである。

そんな情勢であるので、シャギは女をはべらさせて10将と連日酒宴を開いていた。
そこに早馬で状況が知らされた。
すなわち、砂漠基地のコンクリオン家の被害は軽微、全く健在というものであった。
シャギはカイバ兵が遠慮して攻めない状況を聞くと、とたんに怒り狂った。
テーブルにおかれていた馳走も酒もひっくり返し、持っていたグラスをこなごなに握りつぶした。
手からは血がぽたぽたと垂れた。
そして、指揮をとる将軍3人を即刻処刑し、10将随一と言われるシェスターに命じてシャギ党を前線に加わらせた。
さらに、念を入れてシャギ自身も前線へと出向いたのである。

とたんに緩やかだった攻撃は激しくなり、コンクリオンの一族は防戦一方となった。
しかし、さすがはカイバに名をはせるレッカとコンクリオン一族である。
多勢に少数ながらももちこたえ、援軍を待ったのである。

しびれをきらしたシャギは、高機動パンツァーに乗り込むと自らが最前線におもむいた。
シャギの怒りすさまじく、攻撃に躊躇する兵あらば有無を言わさず切り捨てたのである。
一歩引けば処刑されると尻に火がついた兵士たちは、猛然と襲い掛かった。
コンクリオン一族は1人、また1人と倒れ、いよいよ後がなくなってきた。

すると、基地の城壁の上にレッカが現れ、毘沙門天のような表情で仁王立ちして押し寄せる兵の群れを睨みつけた。
この様子を見てシャギ党、カイバの兵士、さすがに怖気づいて攻撃の手をいったんとめざるをえなかった。
シャギは前に進み出ると、CA越しに声を伝えた。
「レッカ殿、いさぎよく剣をおさめられよ。我々はもとをただせば、共にカイバのために働く臣下ではなかったか。これ以上、無駄な損害を出すは指揮官のすることではあるまいて!?」
これを聞くと、レッカが猛然と叫んだ。
「シャギよ、逆賊の仮面騎士よ、よく聞くがよい。お前のような逆臣と同列に扱われるような覚えは全くない!
野犬のごとく市民の財産を略奪する貴様に降伏するつもりがあると思うか!?」
シャギはふむふむとわかったように聞いていたが、内心はらわたが煮えくりかえる思いだった。
それでも、取り繕って答える。
「レッカ殿、今降伏すれば、ワシも鬼ではないぞ。女子供は生かしてやる、降伏するが正しき道ぞ!」
それを聞き一瞬レッカの表情もゆがんだが、すぐに元の恐ろしい顔に戻った。
レッカはわかっていた。シャギ党に戦時国際法が通用しないことを…すなわち、降伏すれば一族はすべて残虐な方法で皆殺しにされることは目に見えていた。
「シャギよ、よく聞くがよい。貴様が支配する世など、いつまでも続くことはあるまい。我ら一族、いさぎよく一戦をまじえて死ぬ覚悟よ!」
「ほう、レッカ殿。負け犬の遠吠えかえ。お主がいう野犬に食いつぶされる気持ちはいかがか!?」
「約束しよう。私が死んでも、我が長男エピたちが遺志をつぎ、必ず貴様の野望を打ち砕き、その仮面をはいで雪辱をはたすはずだ!」
「ぬうう…言わせておけば!」
シャギが再び号令をかけると、基地の門に兵が殺到した。

レッカは愛機パンツァー・カスタムに乗ると、門に立ちふさがり敵を切っては捨て、捨てては切った。
「シャギ、一騎打ちを申し込む!」
レッカが叫ぶが、シャギは「断る!」と言って、兵士の群れの中に消えるように隠れた。
そうこうするうちに、レッカの周りを守る一族のCAが次々と斃れていく。
「レッカ様、この門もまもなく突破されます。早く基地の中に移動してください!」
一族の1人がレッカにうながした。レッカが気付くと機体は片腕がとれ、もはや戦える状況になかった。
仕方なくレッカは門の守りを託して、基地の中央に移動した。代わりに戦える一族はすべて、門に集結して時間を稼いだ。

基地の中央には一族の女子供…レッカの生まれたばかりの赤ん坊や妻もいた。
もはや一族の命運は、エピが援軍をつれてくるか否かにかかっていた。
不安がる一族の女たちを、レッカは「大丈夫だ、もうすぐエピが援軍をつれてくるだろう」と励ました。
しかし、それから間もなく、基地の奥で火があがったのだ。一族の邪魔者、アンドレ・コンクリオンがついに正体を現し裏切ったのである。
レッカはその報を聞くと、すべてを悟って目を閉じた。

基地から火の手があがるのと同時に、支えられなくなった一族の兵士は一気に押し込まれ、ついに基地の門が破られた。
こうなるとふせぎようがなく、コンクリオンの兵士は1人のこらず討ち取られてしまった。
「さあ、1人も残すまいぞ! にっくきコンクリオンの一族は皆殺しである! レッカの首を持ってまいったものは、将軍にとりたてる!」
シャギの号令にシャギ党はざわめきたって、基地中枢に殺到する。寝返った卑怯アンドレも、これに加勢した。
レッカはついに観念して火を放ち、女子供と共に灰と消えたのだった。

カミンスキの話は以上であった。
カミンスキが砂漠基地に戻っ時にはすでにカイバの兵士が取り囲んでおり、中に入ることができなかったのだ。
それから砂漠基地の最後を見届けると、エピの後を追いムーンキングダムに向かったのである。

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遥ナル
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