ムサシ、3都を訪問2-サイレント・ネオ-boy meets girl-
だが、月歌の事情に暗いムサシは、ここにいる連中がどういう人間なのかもろくに知らなかった。長髪のネスタは長身でもある上に、段差がある一段高い所からムサシを見下ろしている。
その目は冷酷そのもので、全く感情が見えなかった。
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一方、ムサシは燃えるようなぎらついた瞳でネスタをにらんでいた。
礼儀である臣下の礼はとらず、立ったままである。
「地球から来たとは珍しいな」
ネスタは肘掛に右腕を乗せると口を開いた。
「それで仕官を希望するのか?」
ネスタが問いかけると、ムサシは「いや、月歌の大将というのがどんな面構えをしているのか見に来ただけだ」と吐き捨てるように言うと、いきなり背を向けた。
ネスタを一目見て、ムサシは嫌な印象しか受けなかった。そして、ムサシはすべからく自分の直感を大事にする男だった。
「貴様、何だその態度は!」
「生きてかえさんぞ!」
この不遜な態度に家臣のラップは怒鳴りちらし、モンゴメリーは怒って顔を赤くした。
ネスタも右眉を大きく上にあげ、この若者は何を考えているのだと言うふうに、ムサシの背中を見つめている。
しかし、ドールだけは表情を全く変えず、
「御家中、怒るのはもっともですが、彼はまだ礼儀をわきまえない坊やなのでしょう。いきりたつのも時間の無駄というものでございましょう。ここはひとつ、穏便にすませるのがよろしいかと」
となだめた。
その声に反応し、ムサシは立ち止まると、体半分を横にして振り向いてドールを見つめた。
ドールのエメラルドの瞳は恐ろしいほどに深く、吸い込まれそうだった。それから、ムサシは何も言わずに政庁から出て行ったのであった。
結局ドールの助け舟によってムサシは事なきを得た。
このネスタ党の面々こそ、のちの大局で大きな役割をはたし、様々な恩讐や因縁を生み出していくのだが、それはこの物語とは別の話だ。
続く…(先行配信中)
サイレント・ネオ-boy meets girl-(先行配信)
BGM
-登場人物-
テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?
ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。