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幻の休日-カフタス銀の夜事件3-ジャック・ソック覚書-サイレント ネオ-異聞-

時は冬であり、北風が身に染みる。しかし、興奮と怒りでほてった身体にはちょうど良かった。
すると、間もなくハインリヒ・ナウマンが私の家にやってきた。
直属の部下であるナウマンは私の家のすぐ近くにある軍の独身寮で暮らしていたのだ。


「ソック副隊長、にゅ、ニュース見ましたかぁ!?」
「ああ、今みたよ。いったい、何が起こっているんだ!?」
この時、ナウマンの声を聞いたとど子が、上機嫌で家から出てきた。
何でも長身でなかなかの美男子であるナウマンは、とど子が見ているドラマの主人公に少し似ているそうだ。
とど子いわく、「ナウマン君は私の初恋の人に似ている」だとか。そんなことはどうでもいいと思うが、私は言葉にせずに心にとどめている。
だから、とと子はナウマンをとても気に入り、見かけるたびに家に呼ぼうとしていた。
ナウマンは両親を戦争で早くに失っていたので、家に呼んでご飯を食べさせることもしばしばだった。
「あ、すいません。今、ちょっと大事な話がありまして…」
ナウマンが言うと、とど子が「そう、仕事の話なら仕方ないわね。終わったら、家によって行きなさい!」
と言って戻って行った。


「いったい、誰がこんなことを起こしたんでしょうか!?」
ナウマンが問いかける。
当然、私もわからないが推測で答えた。
「おそらく、北閥だろう」
「北閥…北閥って、フィヨルドⅢ世の兄も死んでますよ!」
ナウマンが答える。
ナウマンは若く浅はかであるから、このような答えとなる。
「確かにそうだが、フィヨルドⅢ世は兄であるルガ外務大臣のことを煙たがっていたという噂もある。
そうであるならば、一石二鳥であろう。こういう時は、最も得をした人間を疑うのが筋である」
「なるほど、さすがはソック副隊長!」
とナウマンが称賛した。
私も少し調子にのって、
「もちろんニュースで言うように、キングダムの属国であるリムリの反対勢力がやった可能性もあるだろう。あとは…これは考えたくないが、ムーンキングダムにいる御家中の中に、エビル様を気に入らなかった人間がいたかもしれない…」
「まさか!?」
「ああ、だから、これはあくまでも推測だよ。とにかく、これから大変なことが起きそうだから、お前も帰ってしっかり休んでおけ」
私の言葉にナウマンは「さすがは副隊長」と再び持ち上げて、独身寮に帰って行った。
私は少し夜風にあたりながら電子たばこで一服して、家の中に戻った。

家の中ではとど子が鼻歌をうたいながら、まんじゅうを用意して待っていた。
いれたてのお茶も準備して、ナウマンのために準備万端だ。
驚いたことに化粧までしている。
「あら、あんただけなの!?」
とど子が私を見るなり、不機嫌になり言った。
「ああ、ナウマンには明日に備えて、帰って早く休むように言ったよ」
すると、とど子の鼻歌がやみ、憎しみの目で私をにらみつけた。
「ちょっとぐらい、大丈夫でしょうが!」
とど子が毒づく。
私は空咳をしながらいれたてのお茶に手を伸ばすが、とど子がひょいと取り上げてしまった。
「あんたは飲みかけのお茶があるでしょ!」
とど子は野太い腕で、出がらしの冷めたお茶を私の前におもむろに置いたのだった。
仕方なく私はそれを飲み、
「ともかく、これから大変なことになりそうだ」
私がいつになく深刻な表情で言うと、さすがにとど子も心配になってきたのであろう。
「まあ、何とかなるわよ。難しいこと考えたって、なるようにしかならないもんよ」
再びチャンネルを回し、深夜ドラマを見始めたとど子が、まんじゅうをほおばりながらポツリと言った。
「まあ、そういうことだな」
私はお茶を飲み干すと、再び二階の寝室に戻った。
次の日の早朝、やはりと言うべきか、デニ・オム隊長から電話があり、休日返上、出勤の命令が伝えられた。
こうして私の休日は幻となったのである。

次はシャローンの初陣が再開します!


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遥ナル
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