コンクリオン家の悲劇4 サイレント ネオ-ムーン ソング
砂漠基地に戻ったコンクリオンの一族はすぐさま作戦会議を開いた。
降伏すると言う意見、断固として抗戦して逆賊・シャギ党を討つべしという意見は五分五分だった。
レッカは目を閉じて、一族が話し合うのを聞いていたが、目を開くと、
「兵を挙げよ」
とつぶやいた。
腹心のオルデン・カミンスキは、勇みよく進み出てひざまずいた。
「レッカ様、かくなる上はムーンキングダムに援軍を求めるべきです。キングダムの大都督であるシャローン殿と、シャギ党が近づく北閥は敵対関係にあります。きっと助力をしてくれるに違いありません」
レッカはうなずいた。
「どちらにしろ我々だけではどうにもならない。すぐさま使者を送ろう」
こうして、コンクリオン一族の命運を握る使者が、ムーンキングダムに向かった。
しかし、数日たっても何の反応はなかったのである。
「レッカ様、シャギ党はジャコウ川近く、この基地とキングダムを結ぶ唯一の通り道にある関所で、厳しく通行をとりしまってるとのこと。おそらく使者は捕まったか、殺されたかと…」
オルデン・カミンスキが伝えた。
「使者がたどりつかねば、どうにもならない。確実にたどりつける者にいかせねばなるまい。カミンスキ、お前が使者として出向け」
「かしこまりました!」
「しかし、お前だけでは心もとない…エピ」
レッカは長男を呼んだ。
「父上、いかがなされましたか!?」
「エピ、お前はオルデンと共に我が使者としてキングダムに出向け。護衛として従兄妹のラターシャとセンもつれていくように」
「父上! 私はここで戦いまする。そして、あの逆賊の仮面騎士を討ち果たします。使者は別の者をご指名くだされ!」
レッカはエピの肩に手を置くと言った。ずっしりと重みがあった。エピから見ると、レッカの目はいつもと違う優しい目をしていたという。
「よいか、エピ。今は群雄割拠、誰もが明日の命運を知らぬ。お前に使者を任せるのは、信頼しているからこそ。この役目は我が一族の運命を決める重要なものである」
「しかし!」
「しかも、シャギのことだ、関所に配下を配置しており、そこを突破するのは容易ではない。お前に行かせるのはそういうことだ。時間がない、急げ」
「…わかりました」
エピの言葉を聞くと、レッカの目は再び険しい将軍のそれになった。
「それでは、すぐさまキングダムに向かいます!」
エピはラターシャ、セン、カミンスキと共に砂漠基地を出発したのだった。
しかし、この動きはすぐさまシャギの知るところにあった。
実をいえば一族に裏切り者がおり、情報を流していた。
レッカの腹違いの兄弟であり、兄であるアンドレ・コンクリオンは、臆病者な上に、何度もつまらない犯罪をおかしていた。
それでも、レッカのとりなしで、牢獄に入らずにすんでいたのである。
アンドレはレッカに感謝してもしすぎることはない立場なのだ。
レッカはアンドレを遠ざけてはいたが、温情をかけて追放はせずにいたのである。
このようにレッカは上に立つものとしては、やや情に流されるところがあったと言えよう。
そのアンドレから情報がもたらされたシャギだが、動じるそぶりは見せなかった。
それどことか爪やすりで爪を整えながら、口笛さえ吹いていた。
「やはりコンクリオンの一族は、わしに刃向う気のようだの」
とシャギ。
あわててかけつけた、参謀のマーバイムが言った。
「閣下、一大事ですぞ。仮にムーンキングダムのシャローンが兵を送れば、カイバとて危機に陥るのは必至」
「わかっておるわい。関所には10将の1人、ユーゴが30機のCAを引き連れて目を光らせておる。ネズミ一匹、コンクリオンの配下は通らすまいて。さらに、念を入れてマトンの部隊にも兵を率いて追撃をさせたわい」
「さすがは閣下、抜け目はないですな」
マーバイムが膝をつき、礼を現す。
「コンクリオンのこせがれめが…なんでもきゃつは、知勇兼備の将というではないか。しかも、美男子で女にも人気があるようだの」
「腕前の方はあくまでも噂ではありますが…」
「ふふ…噂というはやっかいぞ。これほど優しいわしが、市民には鬼のように恐れられておるで。ともかく、にっくきレッカのこせがれは、わしがじきじきに始末せねば気がおさまるまいぞ」
「と、というと…」
「配下には射撃は禁じておるで。捕まえてつれてくるように、指示してある」
鉄仮面の下の瞳が不気味に光る。
「砂漠基地につれていき、レッカの目の前で美しい顔をずたずたにして、八つ裂きにしてくれるわ!」
「…」
「ものどもにつたえよ、これより砂漠基地のコンクリオン一族を1人残らず討ち果たす! 出陣に遅れたものは銃殺、レッカを討ち取った者は将軍にとりたてる!」