シャローンの初陣2-サイレント ネオ-ムーン ソング
そんな折であった。
政庁広場前に東から5機の小隊が現れた。
偵察型のシェルたちである。
シェルというCAは月歌では最も平均的な機体とされ、多くの兵士がのる一般的なCAであった。
ただし、偵察型を使うのは斥候隊と諜報隊のみである。
斥候隊を率いるはデニ・オム少尉である。
実を言えばこの5機の中に、ジャック・ソック、ハインリヒ・ナウマンも加わっていた。
広場にいる守備隊の隊長が斥候隊を止めようとするが、
「邪魔はしないでもらいたい。我ら密命を帯びて行動している最中。何も聞かずに通行させていただく」
とデニ・オムが早口で言った。
守備隊長は困ってたずねる。
「しかし、我々は何も聞いてござらん。そもそも、いったいどなたの命令で動いてなさる」
「我ら斥候隊はシャローン閣下の命令で動いてござる」
「シャローン閣下…?」
守備隊長はピンとこず、納得していない。
しかし、急いでいるデニ・オムは、
「ともかく、時間がない。通らせていただく!」
と言って、強引に広場を通って西へと姿を消してしまった。
守備隊の兵士があっけにとられていると、今度は一機のみのCAが広場に向かってきた。
黄金色のCAである。左肩には鳳凰の紋章…月歌の提督のみが乗ることを許されるエクスぺリオン・メルセデウス家専用機である。
その黄金色のCAから、非常によく通る女の声が聞こえたきた。
「道を開けよ! これより、西門を強襲いたす! 命いらぬもの我に預けよ、志をあるもの我に続け!」
と叫ぶと、やはり単騎のこのCAも西へと通り過ぎて行った。
これが、後の世にいうシャローンの単騎駆けである。
守備の兵士たちが…
「あれは提督のCAではないか…」
「ああ、しかし提督は死んだのではないか…」
「若い女の声だったが…」
とざわめき立っている。
続く…
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