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プロローグ3-10(ソック、ナウマンにつきまとう!)-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「ソック副隊長…その…」
「どうした、ナウマン?」
ナウマンは車に入らず両手を前で組み、しきりに親指をすりあわせ、気まずそうにいった。
「なんでしょうか…!?」
「なんでしょうか…というと?」
「ですので、何の用なのかなと思いまして…」
「用か…用ねえ…」
ソックは残っている缶コーヒーの最後の一口を飲み干すと、急に険しい顔になった。
「そうか、ナウマンは用がないと、上司であるこの私を邪魔者扱いするのか…そうか、そうなのか…」
「いえ、決して邪魔者扱いは…!」
「ほう、ならば、しばらくこの車で涼んでいてもいいかな?」
「え…どうしてですか!?」
「みなまで言わすな、ナウマン、男には色々な事情があるだろう…」
「で、ですが…車の中で涼むって、もう、僕たちはララに向かって旅行に行かなくてはいけないんです」
「わかっておる、そんなことわ」
「ソックさん、わかってないですよ!?」
ナウマンがいつになく声を荒げた。
「わかっておる、わかっておる、私も一緒についていってやろう。いわばお目付け役だ!」
「ソック副隊長、ど、どうしたんですか…意味が分かりません!?」
「ナウマン!」
「なんですか!?」
ナウマンは上司と彼女の板挟みとなり、非常に困っていた。
ナウマンの顔から滴り落ちるたくさんの汗は、暑さのためだけではなくなっていた。
「ナウマン…彼女ができてお前もかわったなあ…」
ソックは急に沈み込んで、うつむいてしまった。
「昔はよくお前と二人で釣りに行ったり、山登りしたりと、車で私が連れていってやったよなあ…」
「その節は本当にお世話になりました」
ナウマンは急に何を言い出すのだろうといぶかしがったが、仕方なくお礼を言った。
「それから、お前が新兵の頃も要領が悪くてな。いつも私がかばってあげたっけ…」
「あの時は助かりました…」
「さらにだ、お前は俺のおかげで怪我をして入院し、リサさんと出会ったんだよな。いわば、なれそめのきっかけは私というわけだ」
「そ、それは、訓練の時、ソック副隊長が慌てて射撃した銃弾が被弾して怪我をさせられたんじゃないですか…むしろ、僕は被害者…」
「うるさい、そうであろうとも、リサさんと付き合えたのは私のおかげであることは違いないだろ!」
「ま、まあ…そうでしょうか…」
「それでだ……ここで恩返しするっていうのはどうだ?」
「恩返しですか…?」
「ああそうだ、我々軍人はいつ命を落とすともわからない。だから、こういう時にな、しっかり返しておくべきなんだ…」
「そうなんですか…!?」
「そうだとも、ナウマン。昔の素直なお前を思い出せ。昔のお前なら二つ返事で私を喜んで車に迎え入れていただろうよ」
「わかってます…だけど、今は彼女がいるから…」
「任せておけ、私が説得するから! そのかわりお前は私が呼ぶまで一言も口をきくな!」
こうしてソックは、ナウマンを無理やり言いくるめたのである。
つづく
→プロローグ:3-1 3-2 3-3 3-4 3-5 3-6 3-7
3-8 3-9 3-11
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