【短編小説】レンタル・スーツケース
「これはね、ニュージーランドのテカポ湖。それはもう、美しい星空でね。二人で息を呑んだわ」
うす紫色の星空に、乳白色の星が無数に輝いていた。今にも手のひらに落ちてきそうな星々に、言葉を失った。その光景を、昨日のことのように思い出す。
省吾と二人、白い息を吐き、手を握りあい、一言も喋らないで何時間もその星空を見上げていた感動を、うまく言葉にできないことが悔しい。
「これはね、ミルフォードサウンド。省吾さんと一緒にカヤックに乗ったの。カヤックはもちろん省吾さんが漕いでくれて