悠々と歩く君を見て、思ったこと
今年もお盆がやってきた。金曜日の祝日から1週間連続で休暇の人も多いだろうが、私の今の職場は一斉にお盆休暇を取得するのではなく、自分の有給休暇を消化して、自分の好きなタイミングで休暇を取る。
私は例年9月の中旬に2~3日の休暇をもらい、帰省することが多い。
今年の9月も同じように休暇をもらう予定だが、帰省はせずに一人旅に出ようと思っている。
初盆は一つの区切り
親族が亡くなったわけではないけれど、大切な人を亡くして初めてのお盆だ。簡単なお供えをして、いつもと同じように過ごし故人を偲んでみた。
毎年、お盆には和スイーツの店とフルーツパーラーへ行き、ちょっと贅沢なパフェを食べることが二人の楽しみだった。
今年は一人で和スイーツの店に行き、いつものパフェを頼んだ。カウンターの隣の空席には彼が座っていて、私が一人で食べているのをうらやましそうに見ているのかもしれないなと思った。
目の前の席には、仲良しの若いカップルがかき氷の写真を撮りながら楽しそうに食べている。若さがまぶしい。口元のピアスもネイルもおそろいでほほえましい。
一人の客は私だけと思っていたけれど、意外にも男性女性を問わずおひとり様で食事する人は最近増えているようだ。一人でも二人でも、おいしいものはおいしい。
一人になって、料理はますます適当なものしか作らなくなった。今は転居してシェアハウスに住んでいるので、キッチンを自由に使えないことを言い訳にもできる。
お供えは、お互いが好きだった手巻き寿司とお刺身。缶ビールもお供えし、自分が飲む分は冷蔵庫から出したものから、そこから半分を彼のためにグラスに注ぎ、乾杯! 直接缶から飲むビールは少々苦かった。
こうして、お盆の一日を終えて、気持ちにも少し区切りがついたように思う。
初めまして、だね
さあ、これから、生きていることを楽しもう。新しい体験をしたり、好きな事にこそ多くの時間を使ったり、とにかく、一生懸命やってみて新しい世界を切り開いていくのだ。そのために今の仕事もそこそこ(笑)頑張ろう。
仕事があって、住む場所があって、今のところ自分一人なら食べていけるだけの経済力はある。自由に動けるし、休日の一日は時間を好きなように使うこともできる。
普段忘れがちだけれど、何かが欠けている気もするけど、今は若いころに比べて私は十分に幸せなのだ。そんなことを考えながら、真夏の日差しの下、駅までの道を歩いていた。
急に一匹の野良猫が現れて私の前を斜めに横切り、塀の日陰に沿って悠々と歩いていく。目が合っても逃げる事はなく、普段のルーチンを淡々とこなしている様子だった。
三毛とかブチの子はたまに見かけるけど、君は初めましてだね。体が大きめだからきっと男の子だろう。そっと後をつけて見守っていると、毛づくろいをした後、座って何かを見ている。
「写真撮らせてね」といって後方からカメラを向けると、一瞬此方を見てくれた。
厳しい毎日の中の大切な居場所
毎日のご飯や安全な寝床は確保できているのだろうか。
心配だけれど、連れて帰ることはできない。世話をする覚悟ができないこともあるが、保護されることを野良ネコの君が望んでいるとは限らない。
外での生活に慣れている野良ネコ君は、毎日が厳しい分「自由」がある。のびのび動ける場所がある。生まれたときから外しか知らないのなら、厳しい毎日でも人に飼われなくても幸せなのかもしれない。
私を見ても逃げないということは、自分の大切な居場所はちゃんと確保できていて、誰かしら可愛がってくれる存在がいるのかもしれない。
日々の生活は大丈夫なのか?・・・なんて心配は、君にとっては大きなお世話だよね。
猫も人も、幸せはそれぞれ
野良猫君にサヨナラを言って私はまた駅に向かうために歩き出した。もう一度振り返えると、彼も悠々と歩きだした。
慌てるわけでもなく、逃げるわけでもなく、日陰を選んで歩いていく。きっといつものペースで。
とにかく前に歩いて行きなよ。
同じ場所でも毎日歩いていると、違った発見もあるんじゃないのか。
心配してくれなくても、僕は、そこそこ幸せなんだ。
今日も元気に歩くことができるんだから。
猫がそう言ったのかどうかわからないけれど、彼の背中からそんなメッセージを受け取った気がした。
今日も暑い一日だ。けど、汗をかきながら前を向いて歩いていける私は幸せだ。
さて、9月の休暇はどこを旅しようかな。そろそろ、計画を立てようと思う。