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剣客商売第6巻 第5話 金貸し幸右衛門
地図作ってます
「金貸し」が頭にあるので、ガリガリ亡者の第一印象ですけど、娘のお順探しの人情噺でもあり・・・幸右衛門が金貸しになったきっかけは、持っていた小金を、つい、同情して貸してしまったことから始まっており、ポリシーに沿って取り立てもした。
「借金はおのれの金ではございませぬ。危急をしのぐ方便ですゆえ、どこまでも、これを返済することによって、ひいてはその人の信用も却って増すのでございます」
金貸しを業にしたことの後悔もあり・・・人生の歯車を掛け違ったように感じました。「剣客商売」という題名からすると、剣を捨て金の道へ入った幸右衛門さんもテーマを体現している一人かもしれません。
● 当記事はネタバレありです!
● 当記事は「江戸散歩」がテーマ、江戸を出たら追いかけません。旅好きなかた、ごめんなさい。
どうぞ、ご一緒に。仮空間旅行、お楽しみいただけますように。
地図(画像)
地図1
小兵衛:➀小川宗哲宅で碁、②元長で酒・・幸右衛門に会う。
幸右衛門(尾行者あり)の帰るコース②→③④⑤⑥⑦、⑧で襲撃に会う。
襲撃した藤丸は、友人の渡部甚之介(道場⑪)に相談に行く→⑫妙縁寺死体
⑬弥七(小兵衛)の調査に協力してくれた御用聞きの家
⑯川田兄弟の家
⑰犯人をさそい出すために寂しい場所へ
◆昨年娘・お順が家出(実際はかどわかし)。墓参⑮道涼寺、⑱団子坂で襲われ、近くの百姓地へ埋めた。
◆手引きしたおうのは亀戸天満宮に誘い出し、押上に埋めた。
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⑳㉑㉒は、地図の見当をつけるための場所(江戸時代=現代)
地図2 ・・全体(小石川・白山前町道涼寺、渡部道場含む)
⑮幸右衛門の菩提寺。⑱お順が殺された団子坂、⑲おうの・亀戸天神
こちらの地図には、➀小川宗哲宅も載っています。
⑮菩提寺が結構遠いい。女への犯行現場は⑱団子坂と⑲亀戸天神~⑯犯人宅からすると、等距離くらいに見える。流石・池波先生・・・
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地図データ(本文抜書・切絵図その他)
以下、本文抜書です、「51)」等の数字は、文庫本のページ数です、私自身の備忘録として入れさせていただいております。煩雑でごめんなさい。
浅野幸右衛門
187)秋山小兵衛は、63歳の新春を迎えた。
➀宗哲宅へ碁(二刻)、②元長へ・・浅野幸右衛門に出会う。
⑨湯島天神下に住んでおいでの人形師で峯岸又七が、おもとへ
「あれは、⑨私の家の近くに住んでいる浅野幸右衛門という金貸しで、血も涙もないやつ」
(2階座敷の窓から)小兵衛が外を見下ろすと、いましも、幸右衛門が②駒形堂の傍らを表通りへ出て行こうとしている。
駒形堂の裏に屈み込んでいた浪人風の男が後をつけて行く。
・・・小兵衛は慌ただしく店を出て後を追った。
192)幸右衛門は、③田原町から④東本願寺門前へ出た。
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⑤新堀川をわたると、大通りが一筋に下谷の車坂まで続いてい、両側は諸寺院と門前町だ。
用意の提灯に日を入れた幸右衛門は、その通りへは出ずに、⑥新堀川沿いの道を南へすすみ、⑦安部川町の角を西へ曲った。
幸右衛門が旗本・井上英之助邸の土塀の角を右へ曲がりかけた。
そのとき・・・・。
道をへだてた⑧松前伊豆守屋敷の土塀の裾の闇に溶け込み、息をころしていた黒い影が、突如立ちあがって、浅野幸右衛門へ走り寄った。
・・・小兵衛応戦。
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194)「私めは、⑨湯島天神下に住まいまする浅野幸右衛門と申す者でございます」
195)つぶやくように言うや、身を返して⑩下谷七軒町(上の切絵図の赤線最後、「下谷七軒町ト云」とあり)の方へ消え去った。
切絵図:浅野幸右衛門の屋敷がある、湯島天神下・同朋町
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黒田道場へあらわれた浪人
197)⑪本所小梅代地町の黒田道場へ、ふらりとあらわれたのは昨夜の浪人。
黒田道場というより、むしろ渡部道場といったほうがよいであろう。
「おう、藤丸か、あがれよ」ー・・道場で話したいー道場へ
浪人の名を藤丸昭八という。二人は本所石原町の牧山右平太道場の同門であった。
「人を斬るつもりで・・・その男を殺せば却って世のためになると言われて。因業無類の金貸しで、五人もの人が首を括って死んだそうだよ」
「二十両を前金として」
藤丸は、深川の海辺大工町の裏長屋に独り暮らし。
そのころ・・・藤丸は抜いた大刀をつかんだまま、小梅代地町の道場からも程近い⑫妙縁寺裏の空地に倒れ、息絶えていた。
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幸右衛門が事情(弥七の探索)
208)弥七は、金貸し幸右衛門の住居がある⑨湯島天神下・同朋町に程近い⑬上野北大門町に住む御用聞きの文蔵の協力を得て、探り出して来た。
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209)幸右衛門は、三河・岡崎7万石、松平家の浪人だが、江戸へ出て来て⑭本郷の春木町へ住み、・・・現住所の門構えの家へ引き移った。
お順は、女中のおうのにつきそわれて、⑮小石川の白山前町の道涼寺へ生母の墓詣り・・・帰宅せず。幸右衛門は探しに出る
その留守中に下女が殺され、二百両が盗まれていた。
211)ーー北大門町の文蔵の話ーー
211)(幸右衛門は)去年秋ごろから、毎日外出し、暗くなってから帰るようになった。
214)「湯島から浅草まで、足繁くお通いなさるのは・・・」
215)「女中のおうのを浅草寺の境内で見うけましたので・・・」
216)おうのは足袋職人の市太郎の女房だったが、死別し、小石川仲町の糸物問屋〔伊勢屋勘兵衛〕方へ奉公、見込まれて幸右衛門の女中に。
小兵衛の探索
220)翌日、小兵衛は浅野宅に出向き、貸付帳を見せてもらった。
「このお人はどういう・・・?」
「川田十兵衛どの・・・」
幕府(こうぎ)の徒目付。⑯浅草富坂町に住み、30歳になった今も妻子がなく、弟の平四郎と共に暮らしている。
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そして
幸右衛門は、相変わらずおうのを探して歩き回わり、元長で夕飯を食べて帰る。
223)この夜は何をおもったか、新寺町の大通りを右へ折れ、武家屋敷と寺院が続く道を何度も曲がり、入谷田圃の方へ向かった。
今夜は、いつもより元長を出るのが遅くなり、幸右衛門が⑰入谷田圃の道を金杉の方へすすみはじめたときは五ツ(午後8時)ごろになっていたろう。
223)(待ち伏せ)猛然と刀を突き入れて来た。・・・
あらまし/結末
230)墓参のお順につきそって行ったおうのは、その帰り途に、⑱本郷の団子坂に待受けていた川田兄弟へお順を引きわたし、兄弟はお順を扼殺し、死体を近くの百姓地へ埋め込み、さらに天神下の浅野家に押し入り、下女を殺し金を盗み去った。
おうのは川田兄弟宅へ隠れていたが、浅草寺のことを告げるや、⑲亀戸天神参詣にさそい出し、帰途、これを殺して、押上村の林の中に埋めた。
231)⑬北大門町の文蔵が駆けつけて来、浅野幸右衛門の縊死を告げた。
遺産1500両と⑨天神下の家が小兵衛に残された。