剣客商売第11巻 第6話 助太刀
夏。堤の草の上に筵を敷いて、扇子などを並べて売っている男。
大治郎は懐かし気に目を細め、父と自分のために扇子を買い求めた。
堤を降りていく。不穏な音に振り向くと扇売りの男へ、三人の侍が蹴ったり撲りつけたりしている・・・こうして始まる物語。
このサイトでは、「剣客商売」の地図を作っています。
今まで作った地図は「目次」記事でチェックいただけると嬉しいです。
ではでは。机上ツアーにお付き合いいただけますよう。
地図(画像)
地図1出会い
➀柳原土手<現住所:柳原土手跡・和泉橋 説明板>神田川沿いの堤
②事情を話してくれた〔芋酒・加賀や〕小さな居酒屋店主の店
③大治郎が当身した侍:二千五百石大身旗本・高田壱岐守の長男(屋敷)
④柳原土手で狼藉を働いた三人の侍が通う道場:酒井忠兵衛
地図2その日(大治郎の心づもりルート)
大治郎は隠宅に父を訪問⑭。風邪気味の父の代わりに、<⑤松崎邸へ>使いに出る。早めの辞去にて、⑮団子坂へ杉本に会いに行く予定(北へ)。
地図3松崎邸を辞去。北へ
北ルート。⑤松崎邸→⑥四谷を通り→⑦牛込・天神町→⑨中里町→⑪小川を東へ→⑫木立の中の百姓家(扇売りの男:林牛之助と判明)+中島伊織
◆⑦で、扇売りの男を襲った侍が大治郎を見て、尾行開始。扇売りも確認。
※⑩「遠くに崇伝寺の大きな屋根が見えた」・・・たぶん、⑦の近くに見晴らしの良い場所がある。そこを通過しているのだが、場所不明。なお、崇伝寺は地図にない。「崇伝」は、江戸幕府ゆかりの人(始祖が政治に参加、幕府を支えた)なので、消えたのかも。
⑬改代町・・・大治郎は、団子坂へ行くのをやめ=ルート変更:(林氏に会いたがっていた小兵衛の)隠宅へ直行を決意。
地図4大治郎、隠宅へ/高田・酒井は闇討ち画策
補足:大治郎⑫木立の百姓家に扇売りの男と再会→⑭小兵衛隠宅
尾行➀中村>木立から高田家へ報告→酒井道場(密談参加)
尾行②赤井>(駕籠屋利用)鐘ヶ淵の隠宅を突き止め、大川を渡って高田家へ(駕籠代を支払ってもらう)。尾行②のみ、説明アリ。
<地図は、大治郎を討つためのチーム?の動き>
中村・赤井は、大治郎を討つべく密談参加(④酒井道場)。首謀者は、当身をくらった高田の③父親だが、密談の場に来たのは用人の成瀬喜右衛門。
酒井の色子二名は、⑭鐘ヶ淵へ監視に出た(一人は往復)
高田家家来・浪人・色子の計12人が、大治郎がいる隠宅へ。
⑯両国橋を渡ってから二手にわかれ、とあるので、こんな感じか?
集団で堤の上を行くと目立つし‥町は避けたかもしれない。
地図5伊織の敵討・・こんな感じか?
⑫木立の中の百姓家:二人は、午後7時ごろ寝て・・・午後11時ごろ起きて身支度。そのあとは「夜更けの畑道をゆっくり」としか書いていない。
地図データ
本文抜書の『51)』等は、文庫本のページ数です。
切絵図はお借りしています。出典:国会図書館デジタルコレクション
出会い
217)➀柳原土手を歩んでいた秋山大治郎は、なつかしげに目を細めた。
堤の草の上に筵を敷いて座り込み、扇子や団扇を並べて売っている男。
221)ふり向くと扇売りの男へ、三人の侍が蹴ったり殴りつけたりしている。
222)駆けもどってきた大治郎は、打ち込んできた一人に当身をして(気絶)、他の侍に「さ、連れて帰りなさい」
扇売りの男は、大治郎へ礼をのべると、片づけて、堤を下って行く。その足元に、まったく乱れがない。堤を下った大治郎が、男の後を追った・・・寸暇のためらいがあったので、見失ってしまった。
227)翌日、大治郎は堤へ
「もし・・・昨日のお侍さまではございませんか」
②神田・豊島町一丁目の柳原土手に面した一角に〔芋酒・加賀や〕小さな居酒屋
「一昨日のことでございましたが・・・」・・・男は横柄な侍に扇を売らなかった。
229)④神田松永町の酒井忠兵衛道場のもの
(その日)大治郎・千駄ヶ谷・松崎助右衛門宅へ
231)数日後・・・その日、大治郎は⑭隠宅へおもむいた。
231)「実は昨日、⑤千駄ヶ谷の隠宅に住む旧友、松崎助右衛門殿に招かれ、一夜ゆっくりする約束をしていたのじゃが・・・むりはすまいとおもってな」
232)「いや、父上。その御手紙は私が届けましょう」
234)早い足取りで、一気に千駄ヶ谷の松崎家へ到着し、すすめられて昼餉を馳走になり・・・辞去した。
235)八ツ半(午後3時)前。⑭団子坂の杉本道場へ立ち寄る気になった。
帰り道、団子坂(北)へ。
大治郎は、⑥四谷、牛込の町々を北へ抜け、⑦牛込・天神町へ出た。
このあたりは幕府の組屋敷や旗本の邸宅が多い。
二人の侍が大治郎を見とがめた。中村栄五郎、赤井勘蔵。堤で追い払われた三人の侍のうちの二人。
この⑦近くに屋敷を構える五百石の旗本の長男。
※⑧は、濟松寺とします。
気絶したものは二千五百石の大身旗本の子息・高田平馬といい、③屋敷は神田・駿河台にある。
大治郎は二人の尾行に気づかず、⑨中里町を過ぎた。
・・・⑩崇伝寺の大屋根がのぞまれた。⑪小川に沿った道を東へ向いつつあった。大治郎の足が止まった。⑫左手の木立の中で、激しい気合声と刃の打ち合う音を耳にしたからだ。
237)⑫左の畑の中の小道が木立の中へも通じている。百姓家が一つ。
再会
238)「実は、通りかかって刃の音が耳に入りましたので・・・」
「私、林牛之助と申します」
290)(一緒にいた年若い男)「中島伊織と申します」
尾行していた二人(会話は聞こえていない)は、すぐに畑の道へ引き返した。
242)大治郎が、二人に見送られ、木立からあらわれたとき、まだ、あたりは明るかった。
大治郎は、⑭団子坂に立ち寄ることをやめ、父に告げようと、⑬牛込の改代町へ出た。
大治郎を討つ
赤井は、通りかかった駕籠を呼びとめ、尾行を続け、⑭鐘ヶ淵の隠宅をつきとめた。
243)大川を越えてからは、駕籠舁きが赤井を残して尾行したりした。
赤井の懐中にあった金では、承知しなかったので、③駿河台の高田屋敷へ着けさした。
中村からの知らせを聞いていた高田平馬の父・高田壱岐守はみずから指図をしており、金は高田家から出たのである。
243)秋山父子の話はつづいて・・・。
246)おはるを先に休ませ、なおも語りつづけた。
伊織の敵討(助太刀)
246)林牛之助は伊織と枕をならべて眠っている。
247)④神田・松永町の浅井忠兵衛道場では、十数名の侍たちが密談にふけっている。
この中に中村栄五郎と赤井勘蔵の姿も見えた。
酒井には妻子がないが、そのかわりに、二人の若者が身のまわりの世話をしている。(噂)「あの二人は、酒井先生の色子ではないか」
248)この二人は、⑭小兵衛の隠宅の見張りに出ている。
四ツ半ごろ、見張りの若者③の一人が、④酒井道場へ駆け戻って来た。
合わせて十二名が道場へ集まっていた。
高田家の用人、成瀬喜右衛門も来ていた。
250)十名の討手と成瀬用人と酒井忠兵衛の小者二人が、⑭鐘ヶ淵に向った。
250)ちょうど、そのころ・・・。
林牛之助が目ざめ、伊織を、ゆり起こした。
252)敵(かたき)とは、ほかならぬ酒井忠兵衛であった。
酒井の本名は、渡辺九十郎といい、近江・水口二万三千石の加藤家に仕えていたものである。
九十郎は男色を好み、伊織の兄の佐太郎へ言い寄り、怪しからぬふるまい。父が申し入れると、口論の上、刺殺。逃亡した。
渡辺九十郎は、家老の一色多兵衛の縁者で、一色の庇護を受け、江戸へ出てから名を変えて、道場をひらいた。
254)小屋を出た二人(牛之助・伊織)は、夜更けの畑道をゆっくり歩んでいる。
一方、鐘ヶ淵へ向った討手、⑯両国橋をわたり、二手にわかれて、近づきつつあった。
255)秋山小兵衛はふと目ざめた。低い声をかけると、たちどころに大治郎の声が返ってきた。
「おはる、起きろ」
小兵衛はおはると共に、寝所の押入れへ入り、襖を閉めた。押入れの壁の一部が隠し戸になっている。はじめて役に立った。・・・戦闘。倒す・・用人と小者二人はあわてて逃げた。
侍を一人捕らえて、話を聞きだす。
259)そのころ・・・。
林牛之助と中島伊織は④神田・松永町の酒井道場へ。・・・討つ。
後日談
※伊織は国へ帰るも、退身して江戸へもどって来た。
林牛之助が忽然とこの世を去ったのは、翌年の初秋である。
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