寒い日は寂しい歌を聴きたくなるんだ(Hello Sadness,Hello Winter)
今日は朝から一段と寒く、空気全体が身体をじわじわと刺してくるような鋭さがあった。おまけに厚い雲が空を覆い、冷たい雨が1日中降っていた。
午前中、私は両親と某ショッピングモールまで買い物のため車で移動していた。前方の座席では、両親が目的地までどうやって行くのかで喧嘩していた。それを見て私は、「また今日も目的地に着く前から雰囲気が台無しじゃないか」と笑っていた。
こんな時は、冷えた鉄のような寂しい歌が心に響くらしい。
車内オーディオでランダムに流れてくる曲から1曲、引っ掛かりを覚えるものがあった。
歌詞はまとまりとしては全然入ってこなくて、「君からの連絡を待ち続けている携帯電話」「君に会いたい」など、単語・ぶつ切りのフレーズは入ってくる感じ。歌の中でどんな物語が繰り広げられているのかはわからない。
それでも、なんとなく別れを歌っているっぽいことは伝わってきた。
急いでShazamを開き、曲を聴かせてみる。
Apple Musicでヒットしたのは、高橋真梨子「連絡」。
家に帰ってから改めて聴いてみた。
(このとき、あえて歌詞カードは見なかった、また歌詞を一言一句聞こうと注意したわけでもなかった。最初に聴いた時の感覚をまた味わいたかったから)
泣いているようなピアノの音と、テンションを抑えつつ歌い上げるボーカルが素敵な歌だった。曲全体から伝わる陰鬱な雰囲気がとても心地いい。あれ、この気持ち、すごく懐かしいな。そうだ、わかった、毎年冬になると感じるあの寂しさだ、澄みきった空の下で何となく感じるいたたまれなさ、湿度の香りのしない無情な雨、手袋をしているから全然反応しないスマホのタッチパネル、指がくっついてしまいそうなくらい冷えたドアノブ、好きな人に渡せなくて結局一人で食べたバレンタインのチョコレート、それらを全て混ぜ込んだ寂しくて暖かい孤独の陰だ。
そうか、もう冬はすぐそこまで来ていたんだ。
おかえり、冬。そして、こんにちは、冬。