『海の向こうでこんなこと言われた』#17
「ウエルダン!ウエルダン!」
デレク・ジーターがメジャーリーグの殿堂入りをした。
で、ジーターにもちょっと関係のある話をひとつ。
かなり後になるがニューヨーク・リンカーンセンターで三島由紀夫作『卒都婆小町』『弱法師』 (よろぼし)』の公演があった。
千秋楽は夜公演のみなので、その年限りで取り壊されるヤンキースタジアムのデーゲームを観に行った。
ダフ屋から買ったのは一塁側のグランドに迫り出したエキサイティングシート。‥よくあんな席で観たものだ‥高確率でファウルボール直撃の危険地帯。
僕はジーターの大ファン❤︎
なるたけ近くで見たかったのだ。
スタジアムの売店で念願のジーターTシャツをGET、
背番号「2」!!
街のヤンキーズショップにはなかったのだ。すぐにそれに着替えて観戦した。
ヤンキーズが追う展開。
7回が始まる頃に楽屋入りのために球場を後にした。
ホテルの部屋でTVの中継を観ながら支度。
すると松井秀喜が逆転の三塁打!
‥球場で観たかった!
さて劇場。
上演順は先ず『卒都婆小町』(僕の老婆・高橋洋君の詩人)、休憩を挟んで『弱法師』(藤原竜也君の俊徳・夏木マリさんの桜間)。
カーテンコールは夫々。
『卒都婆小町』が終わり、衣装を取りメイクを落として寛いでいると舞台監督が
『今日の千秋楽はラストの舞台挨拶あるよ!』
そうだった、忘れていた!!
「衣装メイクありですか?」
『いや、平服でいい』
‥平服ったって‥僕は球場帰りのまま、
ジーターTシャツに半ズボン、ビーチサンダルで来ているのだ。
着替えに帰ろうかと思ったが、夫々短い芝居。間に合わなかったら大変だ。
「ままよ!」とその格好で『弱法師』終演後、舞台挨拶に出た。
終わって背を向けた途端、
客席から歓声が上がって大喝采!!
ニューヨークだもん、
ジーターだもん、
背番号「2」だもん!
舞台袖に入ると、劇場スタッフたちが僕の頭や背中を叩いて
『ウエルダン!!ウエルダン!!』
‥でも、怒られなかったよ。