プラトーン
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
1986年のアメリカ映画。自らもベトナム帰還兵であるオリバー・ストーン監督が実体験に基づいて描いた、とてもリアルな戦争映画です。アカデミー賞4部門を受賞(作品賞/監督賞/編集賞/録音賞)。
1967年、有色人種や貧困層の若者たちが収入欲しさに次々と軍隊に入るアメリカ。そんな世相を見て義憤に駆られた白人大学生テイラーは、両親の反対を押し切って大学を中退しベトナムに志願する。最前線の小隊に配属されたテイラーが戦地で見たものは、想像をはるかに超える過酷な現実だった――。原題 "Platoon"。
出演は、主人公「クリス・テイラー」役に『ウォール街』、『メジャーリーグ』、『ホット・ショット』のチャーリー・シーン。
共演は、小隊を仕切る鬼軍曹「バーンズ」役に『山猫は眠らない』、『インセプション』のトム・べレンジャー、小隊の良心「エリアス」軍曹役に『ミシシッピー・バーニング』、『永遠の門 ゴッホの見た未来』のウィレム・デフォーをはじめ、『大統領の執事の涙』のフォレスト・ウィテカー、『ギルバート・グレイプ』のジョニー・デップ、ほか。
監督は、『7月4日に生まれて』、『JFK』、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』、『スノーデン』のオリバー・ストーン。
ベトナム戦争を描いた名作
note でこの記事をご覧くださっている方々は、大体どれくらいの年齢層が多いのでしょうか? もしかしたら、10代~30代あたりのお若い世代にとっては「ベトナム戦争」というワード自体が “生まれる前の遠い昔”、“歴史の教科書で習った出来事” という温度感でイメージされるかもしれませんね。
まずは軽く「ベトナム戦争」って?――というところから。
豆知識: 「ベトナム戦争」とは?
アメリカン・ニューシネマについては、こちらの記事でもう少し詳しく書いています。ご興味がありましたら、どうぞ。
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ちなみに、ベトナム戦争が終結した1975年当時、わたしは8歳。ランドセルを背負って『ちびまる子ちゃん』のような吊りスカートを履いていた小2の頃なので、ぎりぎりリアルタイムということになります。幼心に、連日ニュースなどでも取り上げられ、世界中が注目する一大関心事だったことは、おぼろげながら記憶に残っています。
戦争が終結した後も、アメリカでは「ベトナム帰還兵」が抱えるPTSDの深刻さなどが社会問題として残りました。このあたりは、ロバート・デ・ニーロ主演の名作『タクシー・ドライバー』や、本作の監督であるオリバー・ストーンの『7月4日に生まれて』など、多くの映画で描かれています。
1960年代以降、ベトナム戦争を題材にした映画は数えきれないくらい製作されていますが、その中で名作を挙げるとすれば、こちらの5作でしょうか。
わたしは『ディア・ハンター』のみ未見(観たい!)。それ以外の4作品はすべて観ています。どの作品も「ベトナム戦争」というものが当事国アメリカの視点でしっかり描かれていて、おすすめです。
わたし自身、これらの名作映画を観たことが、ベトナム戦争についての知識を広げるきっかけになりました。また、複数の作品を観てゆくと “アメリカにとってのベトナム戦争とは、どんなものだったのか” という全体像も見えてきて、より理解が深まった気がします。
こんなふうに、映画って自分の世界を広げてくれるんですよね。
本作をまだ未見の方は、前述したような当時の社会背景などを踏まえておくと、オトクかも♩ より深く作品の良さを味わえると思います。
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さて、数多あるベトナム戦争映画の中で本作が凄い点は、何より監督のオリバー・ストーン自身がアメリカ陸軍の兵士として実際にベトナム戦争へ赴いた経験を持つ「帰還兵」である、ということ。
本当に、上に引用した解説文の通りで!(読みながら首がもげそうなほど頷きました。笑)
実際に現地で “身をもって”、“五感で” 体験した人にしか表現できないであろう、本当に細やかな描写が凄いのです。(しかも映画監督という表現のプロ!)
平和の尊さがひとしお大切に感じられる昨今の世界情勢だからこそ、本作のような映画は後世に残していかなきゃな……と痛感します。
ウィレム・デフォー!
本作の主人公は、アメリカの大学生クリス・テイラー。
ベトナム戦争真っ只中のアメリカ社会で、次々と徴兵されてゆく同世代の若者たち。そのほとんどが、黒人やその他の少数民族、あるいは貧困層の青年たちであることにテイラーは義憤を覚えていました。
両親の反対を押し切って、大学を中退してまでベトナム志願兵として軍へ入隊するテイラー。まだまだ頭でっかちの正義感の強い若者、といった風情です。
そんな彼なので、配属先の最前線へ到着するやいなや、激しく後悔する羽目になるのですが――。
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ところで、本作のタイトルにもなっている「プラトーン」(platoon)とは「小隊」という意味。
テイラーが配属された小隊には、ウォレス中尉(マーク・モーゼス)という小隊長がもちろんいるのですが、まだ若く経験も浅いため影が薄く、階級は下(2等軍曹)ながらも実戦に長けたバーンズ軍曹(トム・べレンジャー)が小隊を仕切っていました。
ただ、このバーンズという人物、苛烈な死線をくぐり抜けてきたせいなのか、迫力と統率力はあるものの、なかなか非道な面を持った男。
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そんな小隊の中で、過激なバーンズを諫める役割を担うのが、3等軍曹のエリアス(ウィレム・デフォー)なのでした。
格好いいんだな、これが!(ウィレム・デフォー、好きです♡)
役に立たないお飾りのトップ、実権を握るリーダーはパワーで牛耳る暴君、それに真っ向から対立しリーダーとは真逆の方針を持つサブリーダー。
彼らの小隊は、下っ端の若い兵士から見るとダブルバインドが起きていて、機能不全に陥っている組織の典型だったりするんですよね。
これ、会社などの組織で働く人にはわりと “あるある” な状況かも……なんて、観ていてちょっと思いました。
もちろん本作の場合、そんな “会社あるある” とはまたニュアンスが違い、戦争という異常な状況下では「軍隊」という組織でさえもきちんと機能しない場面が多々あること、それくらい緊迫と混乱を極めた現場であることが描かれています。
更に言えば、そんな状況(戦争)を作り出し、派兵しているアメリカ政府への批判も暗に描いているような気がしてきます。
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余談ですが、ウィレム・デフォー、わたし好きなんです。いい俳優さんですよね~。個人的には、あの面構えが何とも言えず良い♩ 映画の中で思いがけず彼の姿を見つけると、なんだかうれしくなってしまう。
実は、ゲーム作品にも出演していたりするんですよ♡
撮影風景とウィレム・デフォーのインタビュー映像はこちら。
アドベンチャー・ゲーム『BEYOND: Two Souls』、もちろんわたしもプレイしました! ストーリーが映画のように濃密で、めちゃくちゃ面白いので超おすすめ。
バーバーのアダージョが素晴らしい
『プラトーン』と聞いて、やはり真っ先に思い浮かべるのが、ポスターやDVDのジャケット等でも使われている象徴的なこの名シーン。
「ネタバレなし」を旨とするわたしの映画 note では、余計なことは申しますまい。ぜひ本編で、存分にご覧いただきたいです。
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このシーンを唯一無二の印象的なものにしているのが、米国の作曲家サミュエル・バーバーによる『弦楽のためのアダージョ』。物哀しい曲の雰囲気が作中のシーンと最高に合っていて、素晴らしい!
『弦楽のためのアダージョ』は、ジョン・F・ケネディの葬儀で使用されたことでも有名なのだそう。
上記、太字部分でちょっと吹き出しました。バーバーさん、お気の毒。作品が素晴らしければ素晴らしいほど独り歩きをしてしまう、クリエイターの悲しい定めでしょうか……。笑
でも、本当に『プラトーン』とは切っても切れない名曲だと思います。あのシーンにこの曲を使おうと思った人、エライ!!(オリバー・ストーン監督? それとも、本作の音楽を担当したジョルジュ・ドルリューかな?)
わたしなんて、この曲を聴いただけであのシーンを思い出して哀しい気持ちになり、ちょっとうるうるしてしまうもの。
世界が平和でありますように。
ベトナム戦争を実際に体験したオリバー・ストーン監督による本作。戦争とは、人間から “人間性” を奪ってしまう愚かしい行為であることを痛烈に描いた作品です。
戦争がもたらす狂気のリアルさに、人によっては見ているのが辛くなるようなシーンもあることでしょう。
でも、こんな「今」だからこそ、本作の存在意義は大きいのでは――とも感じます。戦争は「映画」の中だけで充分。戦争映画を純粋に「作品」として楽しむことが出来るような、平和な時代が世界中に訪れてくれることを願うばかりです。
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最後に、おまけ。
小隊の通訳の兵士 ラーナー役で、俳優デビューして間もないジョニー・デップが出ています。
ご覧になる時はチェックしてみてくださいね。
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