最高の人生のはじめ方
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2012年のアメリカ映画。愛妻を亡くして筆を断ち、酒に溺れる老作家。湖畔の家に移り住んだ夏、彼が隣家の親子と交流を深めてゆく様子を描いた、心あたたまるヒューマンドラマ作品です。
主人公の老作家を演じるのは、モーガン・フリーマン。監督は『スタンド・バイ・ミー』、『恋人たちの予感』、『ミザリー』のロブ・ライナー。原題 "The Magic of Belle Isle"。
邦題ややこしい問題。笑
まず、はじめに。
本作は、ほっこりした気持ちになれる、とても素敵な映画です♩
なので、作品の内容には全く異論はないのですが、重大な難点がひとつ。
わたしの感想ツイートをもう一度見てみましょう。
途中から観て、「あれぇ? コレ前に観たはずなのに、このくだり、知らないなぁ…?」と不思議に思いつつ、全編見覚えのないまま最後まで観てしまった。
…あれ? ジャック・ニコルソンは?
『最高の人生の見つけ方』と混同してた! 邦題、紛らわしいよ!笑
(*筆者注釈: 後日あらためて、全編観ました)
そうなんです。
同じロブ・ライナー監督の別の作品『最高の人生の見つけ方』(こちらはジャック・ニコルソン&モーガン・フリーマン主演)と邦題が酷似しているために、勘違いしていたのですね。
ややこしいので、ちょっと整理してみました。
公開年順に並べると、こんな感じ。
ん……!?
デザインのレイアウトからロゴのフォントまで
/
そっくりやないか~い!!!(ペシッ)
\
そりゃあ、間違えるのも無理ないですよね。
この確信犯的な紛らわしい日本版デザイン。あざとい……。笑
1|最高の人生の見つけ方(2007年)
○ 監督: ロブ・ライナー
○ 脚本: ジャスティン・ザッカム
○ 主演: ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン
○ 原題: The Bucket List
2|最高の人生のはじめ方(2012年)
○ 監督: ロブ・ライナー
○ 脚本: ガイ・トーマス
○ 主演: モーガン・フリーマン、ヴァージニア・マドセン
○ 原題: The Magic of Belle Isle
3|最高の人生のつくり方(2014年)
○ 監督: ロブ・ライナー
○ 脚本: マーク・アンドラス
○ 主演: マイケル・ダグラス、ダイアン・キートン
○ 原題: And So It Goes
4|最高の人生の見つけ方(2019年)
○ 監督: 犬童一心
○ 主演: 吉永小百合、天海祐希
◆ 1~3は、すべてロブ・ライナー監督による作品。
◆ 1と2の両方で、モーガン・フリーマン主演。
◆ 4だけ日本の映画で、2のリメイク作品。
リメイクの4を除いて、共通項は「ロブ・ライナー監督作品」ということ。ただし、各作品とも、脚本、配給会社は違います。
原題も、"The Bucket List"(1)、"The Magic of Belle Isle"(2)、"And So It Goes"(3)と、全く異なっており、各作品のタイトルを直訳すると――
1|The Bucket List
「バケットリスト」
死ぬまでに人生でしたいこと100個を書いたリスト。
2|The Magic of Belle Isle
「ベル島の奇跡」
作品の舞台の地名が "Belle Isle"(ベル・アイル=ベル島)。
3|And So It Goes
「そして今は」
訳すのが難しい言い回しなのですが、「物事って、そんなふうに流れてゆくものだよ」的なニュアンス。
当然ですが、原題の方が “その作品がどんな映画か?” をちゃんと表しているのになぁ。
こうして見ると、ぜんぶ違う、全く別の映画だというのがわかります。
一作目『最高の人生の見つけ方』のヒットにあやかって、日本でのセールス担当部門が二匹目、三匹目のドジョウを狙ったのでしょうか。
・・・
監督や脚本家にとっては作品のタイトルってとても大事なものだろうなぁ、と思うのですが、いくら何でも、この “邦題のつけ方” と “ヴィジュアル・デザインの寄せ方” は、かなり安直過ぎるし、雑過ぎやしませんか??
おまけに、すごぉぉーーーく紛らわしいし!
(おかげで、混同しちゃったじゃないかー)
わたしは一人の映画ファンとして、日本版の責任者に申し上げたい!
(小心者なので、ヒーローに代弁してもらいました。笑)
ほんわか気分になれる映画♩
さて、ここからは本作の内容について。さらっと主な登場人物をご紹介。
主人公
〇 モンテ・ワイルドホーン(モーガン・フリーマン)
『ジューバルの冒険』というウエスタン小説が代表作の老作家。妻を病気で亡くして以来、創作意欲を失い、酒を飲んでばかりの日々。亡き妻との間に子どもはなく、車椅子で生活している。
甥のすすめで、夏をのんびり過ごすため、湖畔の避暑地へやって来た。家主の犬の世話をすることを条件に、甥が知人の家を借りた。皮肉屋で厭世的な発言はするが、そこそこに人付き合いもこなす。
隣の一家(オニール家)
〇 母/シャーロット(ヴァージニア・マドセン)
まもなく離婚予定のシングルマザー。離婚後の生活拠点として、かつて自身の祖父母が住んでいた湖畔の家に3人の娘たちを連れて住み始めた。
〇 長女/ウィロー(マデリン・キャロル)
思春期で、ちょっぴり反抗的。スマホばかりいじっている。(以前住んでいた)友達のいるニューヨークに帰りたい。両親の離婚には不服。
〇 次女/フィン(エマ・ファーマン)
好奇心旺盛。物怖じせず、サバサバと物を言う。家の手伝いもよくする。貯金した34ドル18セントで、モンテに “想像力のレッスン” をお願いする。
〇 三女/フローラ(ニコレット・ピエリーニ)
もうすぐ7歳になる末っ子。上の前歯(乳歯)が抜けるお年頃。父親を恋しがっている。ゾウさんが好き。
主演はモーガン・フリーマンとあって、安定の良い演技。
物語の序盤、甥に連れられて湖畔の家にやってきた当初は、自分自身や世の中に対して、どこか諦めたような皮肉めいた物言いが目立つ主人公のモンテ。
『グラン・トリノ』のイーストウッドのように、バリバリに不愛想で偏屈な老人なのかと思いきや、新しい人々の中に自ら進んで入っていくことこそしないものの、お誘いがあれば受けるし、訪ねて来る人があれば拒まない―― という柔軟さは持ち合わせているようです。
失礼のない程度に人当たりも良く、とても紳士的。このあたりはさすが、もともと知的な文筆業の人だからかなぁ、なんて思いながら観ていました。
お隣の女所帯、オニール家の奥さんや娘たちと話す時も
"Yes, Ma'am."
と、とても丁寧なんですよね♩
なので、周囲の人たちとのぶつかり合いなどといった大きな事件もなく、観ている側としては「あれ?」と一瞬肩すかしをくらうのですが、逆にその平和さが心地良いのです。
安心して観ていられる、っていうのかなぁ。
だんだん、心がほんわかしてきます♡
オニール家の親子と交流しながら、少しずつ親しくなってゆく様子。
飼い犬のラブラドール・レトリバーとのやりとり。
三姉妹たちの愛らしさ。
モンテ、三姉妹にスマホの使い方を教えてもらう、の図。
可愛いシーンです♩ まるで、おじいちゃんと孫みたい。笑
『天使のくれた時間』などがお好きな方は、本作のほんわかしたあたたかさも、たぶんお好きなのでは♡ ――と思います。
主人公の飼っている「わんこ」が可愛い!♡
モンテが夏の間借りている家に、家主が残していった犬の「リンゴ」あらため(笑)、「スポット」。犬種はラブラドール・レトリバーです。
この子がね、ほんっと可愛いんですよ~!♡
実はわたし、大の猫派ですが、犬も好き♩(動物はたいてい好き。笑)
わたしの母がこれに輪をかけて動物好きで、実家には最も多い時で犬が1匹、猫が4匹(+熱帯魚がわんさか)いました。
実家の犬はこれまで何度か代替わりしていて、初代から三代目までは、ずーっとラブラドール!(現在の四代目だけミックスの小型犬)
そんなわけで、わたしにとって最も身近で親しみを感じる犬といえば、大きなラブラドールなんですよね~。
だから、本作に出てくるワンちゃんを観ていると、本当に可愛くて可愛くて! ラブラドールのふとした仕草や表情など「ああ、こういう顔、してたしてた♩」と、つい目尻が下がってしまいます。
"Fetch!" と "Retrieve!" のくだり。笑えます♩
さりげない名言多し。
主人公モンテの台詞は、作家という設定だけあってウイットに富んでいて、粋な名言がいくつも出てきます。
「想像力を使うんだ。人類が持つ最も強い力をね」
「そこに無いものを探し続けろ」
「ドアが閉まれば、次のドアが開く」
などなど、含蓄あるモンテの台詞にハッとすることも――。
名言に富んだ『モリー先生との火曜日』を思い出させてくれました。
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