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オズの魔法使
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
TVつけたら偶然やっていたので、『オズの魔法使い』を観た。んー、何度観てもやっぱ面白い!! 名作でござる。
— もりはるひ (@haruhi_mori) February 11, 2015
ところで、色が次々と変わる馬は、あんなことして大丈夫なんだろか?
1939年のアメリカ映画。ジュディ・ガーランドが歌う『虹の彼方に』(Over the Rainbow)で有名なミュージカル映画の古典であり、映画史に残る名作。色鮮やかなファンタジーの世界「魔法の国オズ」の描写は、今観ても心躍ります。原題 "The Wizard of Oz"。
送り仮名の「い」は、ないのです。
映画は観たことがなくても、そのタイトルだけは、ほとんどの人が知っているであろう『オズの魔法使い』。もともとは、ライマン・フランク・ボームによるアメリカの児童文学作品です。
各社からいろんな訳が出ていますが、オリジナル版と同じ、デンスロウによる挿絵の、福音館と岩波のものを載せておきますね。
原作童話のタイトルは、どの本も『オズの魔法使い』。英語の原題は "The Wonderful Wizard of Oz" です。
一方、映画版であるジュディ・ガーランド主演の本作。正式な邦題は『オズの魔法使』。
よぉ〜~く、ご覧ください。
映画の邦題は「魔法使い」の送り仮名「い」が付かないのです!
わかりやすく、表にしてみました♩(こういう作業が好きで、ついつい作ってしまう。意外と時間かかるのに……笑)
ちょっとした豆知識、よかったら覚えておいてください。(いつ使えるのだろうか。笑)
『オズの魔法使』の思い出
わたしにとっては、この映画、特別な思い出のある作品だったりします。今はもう社会人になっている息子が高校生の頃、文化祭でクラスの出し物として公演した作品なのです。
当時のツイートが残っていました。
きょうは、息子の高校の文化祭へ。たのしかった! バトン部の女子たちの、華のあること!(なんとも、ウラヤマシイ)。生物部のタヌキの骨格標本(生徒が作った!)を見たり。美術部で涼んだり。息子のクラスの演目は、劇「オズの魔法使い」。さすが3年生は迫力。高校最後の文化祭、たのしんでねー!
— もりはるひ (@haruhi_mori) September 8, 2012
教室の中に並べられた客席で開演を待っていると、お隣の席の女性に声を掛けられました。その女性は、息子のクラスで生物を担当してくださっているH先生という方で、公立校の先生にしては “ほよよ~ん” “ポヤ~ン” とした、柔らかい空気を漂わせていらっしゃるのが印象的でした。
そのH先生がニコニコと
「どんな劇になるのか、楽しみですねぇ~!」
「わたし、『オズの魔法使い』が大好きなんですよ~♩」
と話しかけてくださって。
わたしは普段から人見知りで、ママ友づきあいもしないし、学校の先生方とも滅多に雑談などしない(でも、息子の晴れ姿は見たいので、行事にはいそいそと出かけて行く、笑)タイプなのですが、そんなささやかな会話のおかげで珍しく緊張せず、和やかな気分でいられたっけ――。
(H先生、お元気かなぁ。「そんなにぽわ〜っとしていたら、生徒からナメられちゃうのでは?」と、保護者のわたしが心配になってしまうくらい(笑)おっとりしていたH先生。今でも覚えています。あの時は、ありがとうございました♩)
・・・
息子の役どころは、劇の導入部や締めくくりなど、要所要所で語りを行うナレーター役。本番では多少の緊張は見えたものの、さながらジブリ映画『耳をすませば』で劇中劇の案内役をするバロンのようで、堂々としたナレーターぶりでした。(親バカ)
他のクラスメイトの子たちも、演者から裏方まで、それぞれがしっかりと自分の役割をこなしていて、予想以上の見応えにびっくり!
コミカルなやりとりで笑いを取るところ、短い時間にまとめる脚本の構成、黄色いレンガの道(Yellow Brick Road)やドロシーが履いているルビーの靴(Ruby Slippers)までちゃんと再現していたりして――。
中でも「オズの大魔法使い」を演じた、息子と仲良しのS君! クラスでアレンジした独自の演出により “オネエ” という設定の役どころで、役者の技量によっては三文芝居になりかねないところを、圧倒的な存在感と演技力で作品を盛り上げていました。
(普段のS君は、物静かで優しい男子。その彼が、舞台でエキセントリックな役柄を見事に演じる姿に、感動しきりでした。あの時、わたしは “人の才能が存分に発揮されて、輝く瞬間” を目の当たりにしました。とっても素敵な光景でした!)
・・・
あれ以来、『オズの魔法使』と聞いて、まずわたしが思い浮かべるのは、劇で一番印象に残ったこの曲♩(黄色いレンガの道をたどって/Follow The Yellow Brick Road)
Follow, follow, follow, follow,
Follow the yellow brick road♩
わたしもよく口ずさむのですが、"yellow brick road" のところの舌が回らないんですよね~。笑
魅力的なキャラクターたち♡
本作の登場人物をササッとご紹介。
〇 ドロシー(ジュディ・ガーランド)
カンザスの農場に住む女の子。エムおばさん、ヘンリーおじさん、愛犬トトと暮らしている。虹の彼方のどこかに素敵な場所があると夢見ている。
ある日、竜巻で家ごと飛ばされて、トトと共に魔法の国「オズ」へ運ばれてしまう。カンザスに帰りたいドロシー。出会った北の良い魔女グリンダから「黄色いレンガの道をたどってエメラルド・シティへ行き、オズの魔法使いに会えばカンザスへ帰してくれるでしょう」と聞き、旅を始める。
ドロシーを演じるジュディ・ガーランドがとにかく可愛い!♡
バラ色の頬。ツンと少し上を向いた鼻先。ブルーのギンガムのドレスに、ふんわりカールした長い髪。
ジュディ・ガーランドが劇中で歌う『虹の彼方に』(Over the Rainbow)は、彼女の代表曲であると共に、映画史に残る名曲中の名曲!
少し哀愁を含んだ曲調と、ジュディ・ガーランドの歌声。虹の向こうにあるという素晴らしい夢の国に想いを馳せた歌詞もまた、詩的で良いのですよねぇ……♩
・・・
〇 トト(テリー)
ドロシーが可愛がっている愛犬。カンザスの農場では、トトの “おいた” が原因で、ご近所の大地主ミス・ガルチの怒りを買い、処分されそうになってしまう。魔法の国オズでは、西の悪い魔女からドロシーを救うのに大活躍。
とっても芸達者な、賢いワンちゃん!
ドロシーや他の出演者たちがトトを小脇に抱えるシーンが多く登場するのですが、おとなしく抱っこされていて「すごいなぁ」と感心しました。お芝居も上手♩
犬好きの方には、ぜひ観ていただきたいです。
〇 ブリキ男(ジャック・ヘイリー)
〇 カカシ(レイ・ボルジャー)
〇 ライオン(バート・ラー)
〇 カカシ(写真・右から2番目)
魔法の国オズで、ドロシーが黄色いレンガの道をたどっている時に最初に出会う仲間。体のすべてが “わら” で出来ているため、「脳みそ」(知恵)がないことが悩み。
〇 ブリキ男(写真・左)
ドロシーがオズで出会う仲間のひとり。斧で木を切る “木こり” だったが、体が錆びついてしまい動けなくなっていたところを、ドロシーが油を差して助けた。ブリキの体の中身は空っぽで、「心」(ハート)を持っていないことが悩み。
〇 ライオン(写真・右)
ドロシーがオズで出会う仲間のひとり。ライオンなのに臆病で泣き虫。「勇気」がないことが悩み。
カカシは「脳みそ」を。
ブリキ男は「ハート」を。
ライオンは「勇気」を。
それぞれ、自分に “欠けているもの” があり、悩んでいます。彼らは「エメラルド・シティにいる〈オズの大魔法使い〉に頼めば、欠けているもの(脳みそ/ハート/勇気)を貰えるかもしれない」と、ドロシーの旅に同行するのです。
三者三様、ひとりひとりの個性が際立っていて、とてもいい♩
演じる役者さんたち(カカシ:レイ・ボルジャー/ブリキ男:ジャック・ヘイリー/ライオン:バート・ラー)がまた、みんな芸達者! 時にコミカルに、時にあたたかく、それぞれのキャラクターを演じています。
特に、カカシを演じたレイ・ボルジャーが素晴らしい!
カカシって全身が “わら” で出来ているので、骨がありませんよね。骨=芯になるものがないので、元気良く歩いていても、数歩、歩く度に脚が “フニャッ” となって、ずっこけてしまうんです。(その度に、ドロシーが横で引っ張り上げて、立たせてあげるの。笑)
こういう細かな演技が素晴らしい♡
キャストの三人とも、もとはボードビリアンだったそうで、こういったコミカルな体の動きが上手だし、表情がとても豊か。チャップリンを思い出させるその表現力は「さすがだなぁ」と思います。
本作で彼らは二役を演じていて、カンザスの家の農場で働く使用人(ハンク/ヒッコリー/ジーク)でもあるんですよね。ドロシーがおうちへ帰った後のシーンでは、人間の姿の三人を観て、思わず「ああ……♡」と、懐かしさや親しみを感じてしまいます。
〇 西の悪い魔女(マーガレット・ハミルトン)
魔法の国オズの西にいる悪い魔女。「東の悪い魔女」の妹。姉の「東の悪い魔女」より、もっと邪悪。(北の良い魔女グリンダが授けた)ドロシーが履いているルビーの赤い靴を狙って、ドロシーたちを追い詰める。
マーガレット・ハミルトンの演じる、絵に描いたような “悪い魔女” っぷりが素晴らしいです!笑(この方も「ミス・ガルチ」と「西の悪い魔女」を二役で演じています)
ところで「西の魔女」というと、本好きの方は、梨木香歩の『西の魔女が死んだ』を思い出すかもしれませんね。
この小説に登場する「西の魔女」は悪い魔女ではないのですが、作者の梨木香歩さんは童話『オズの魔法使い』からイメージを膨らませて物語を書いたのだとか。
魔法の国「オズ」の描写が素晴らしい!
本作は、大きく分けて下記の3つのパートで構成されています。
1| カンザス(竜巻で飛ぶところまで)
2| 魔法の国オズ
3| カンザス(おうちへ戻ってから)
このうち、カンザスでのドロシーを描いた最初(1)と最後(3)のパートはモノクロ。
魔法の国「オズ」を描いた(2)パートは、当時まだ珍しかったカラーフィルムで撮影されています。
このカラーで表現されたオズの映像が、本当に色彩豊かでキレイ♩
オズの国で、ドロシーが最初に訪れる「マンチキン・ランド」の大掛かりなセット。まるで現代のテーマパークのようで、ワクワクします。
小人のマンチキンたちの衣装も、デザインがとっても可愛い♡(髪型も、ヘンテコな魔法の国らしく、凝っています)
「黄色いレンガの道」の鮮やかさ!
前述の、"Follow the Yellow Brick Road" のところでご紹介した動画。カラー映像の美しさが、よくお分かりいただけるかと思います。
・・・
特撮(SFX)の面でも、わたしたちを驚かせるような描写が沢山!
「SFX」と「VFX」の違いなどについては、こちらの記事をどうぞ♩
西の悪い魔女が煙と共に一瞬で姿を消したり。
(西の魔女の最期のシーンもすごいので必見です!)
魔女の手下の、背中に羽の生えたサルたちが空を飛んだり。
水晶玉に他の映像が映ったり。
ライオンのしっぽが本物のように勝手にゆらゆら動いたり――。
当然、GCなど無かった1930年代の作品です。当時の特撮技術を駆使して作られたであろう驚きの映像に、ひとつひとつ、感心するばかり。
・・・
衣装デザインもとても優れていて、先ほど挙げたマンチキンたちの可愛らしい衣装をはじめ、素敵なデザインがいっぱい!
百数十人いるというマンチキンたちの衣装。サイズが特殊ですし、これをひとりずつ全部あつらえたのかと思うと、頭が下がります。
西の悪い魔女のお城。衛兵たちの衣装が、めちゃくちゃお洒落です!♡
カカシ、ブリキ男、ライオン。それぞれの衣装や特殊メイクも、細部のディテールまで凝っていて、素晴らしい!
カカシの特殊メイクにはゴム、ブリキ男の顔にはアルミニウムの粉(*)、ライオンの衣装には本物のライオンの毛皮が使用されたのだとか。
*ブリキ男を最初に演じた俳優(バディ・イブセン)は、使用されたアルミ粉が原因で重篤なアレルギー症状を起こし、降板。(症状を読んだ限りでは、おそらくアナフィラキシーかと……。怖い)その後、メイク方法が改善され、最終的にジャック・ヘイリーがブリキ男を演じました。
夢いっぱいの世界を楽しんで♩
これだけ有名なクラシック映画ともなると、撮影にまつわる裏話やトリビアなど、探せば膨大な量の情報が出てくるのですが、撮影中の事故の話や、ジュディ・ガーランドの薬物中毒の話(*)など、影の部分のつらい話題が多いんですよね。
*このあたりのことは、レネー・ゼルウィガーがジュディ役を演じた伝記映画『ジュディ 虹の彼方に』(2019年)で描かれているようです。
予告編はこちら。
わたしも未見なので、気になるなぁ。
・・・
でも、ここまであれこれ書いてきたように、豊かな色彩、驚きいっぱいの特撮、センスあふれる衣装、キャストたちの素晴らしい表現力――もうね、作品全体が “クリエイティブの塊” なんです!
だからこそ、わたしたちの胸を打つし、その後の派生作品も数えきれないほど生まれているのだと思います。
本作をご覧になる時は、ぜひ、その創造性のエネルギーや、夢いっぱいの世界を楽しんでいただきたいなぁ♩
ちなみに、
ところで、色が次々と変わる馬は、あんなことして大丈夫なんだろか?
と感想ツイートに書いたお馬ちゃんは、こちら。
赤や黄色や紫に次々と変化(へんげ)しますので、ご注目♩笑
それでは、わたしの大好きなドロシーの名台詞で締めくくりを。
There's No Place Like Home!
やっぱりおうちが一番!
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