「マンガ脚本概論」を読んでみた!
「マンガ脚本概論」を読んでみた!
「マンガ脚本概論-漫画家を志すすべての人へ」さそうあきら:著
(@双葉社)を読んでみました!発行年度は2021年10月。
さそうさんは2006年から2021年まで15年間にわたって京都精華大学マンガ学部で教鞭を執られていました。本書のあとがきに、さそうさんはこんなことを書いておられます。「教えるという仕事によって自分がマンガ描きとして成長出来るであろうという直観が働いたのです。」と。まさに「教えることは学ぶこと」これは私が以前、東北新社の教育事業「映像テクノアカデミア」に勤務していた時に実感したことでした。ちゃんと教えるためにはその事項の根源的なことをきちんと理解していないとちゃんと教えることが出来ない!そうすると上手く教えることが出来ず、教えられている方も上手く理解できないし、そもそもそんな授業は面白くない!ということを痛感します。実は来年に向けて自分事ですがマンガの創作をするという目標を立てたので、そのためにいろんな文献などを読んでみようと思い立った次第です!映像テクノアカデミア時代に「脚本」や「シナリオ」の書き方、アイデアの出し方などの本はたくさん読んでいたのですが、漫画の描き方に関する本は小学生依頼!たぶん石ノ森章太郎先生のマンガ描き本か?手塚治虫先生のものを読んだように記憶しています。その時初めてケント紙という紙があり、Gペンやカラス口などの筆記用具があることを知りました。そんな道具もそれらの多くがデジタルに移行して来ています。
作者のさそうあきらさんは京都精華大学で武宮恵子先生の後を継いで「脚本概論」の授業を担当されたそうです!そこで行われた講義の15年間の集大成が本書となって出版されました。アイデアの出し方、キャラクターの発想法!そして最後に「テーマ」とは何か?というところまで細部にわたって語っておられます。本書の最大の特徴は、その講義のテキストが漫画で描かれていることです!各章で具体的な漫画のストーリーの事例などが紹介されるのですが、そのレベルが一般的な教科書とは違うレベルの高さ!そこには映画や他のマンガからの引用もたくさんあります!何を言いたいかというと、さそうさんは、本書の中でもやはり高いレベルの作品に触れることで学んでいる人たちにこのレベルへ何とかにじり寄って欲しいと言う想いがあったのだろう!と感じました。その賢明さ、ストーリーの複雑さ、あるいは感覚的な世界をどう描くのか?までが語られています。これは実はハリウッドの商業主義的な映画にはないものなのかも知れません。日本では本書の出版が証明するように多くのストーリー漫画の文化が醸成されました。手塚治虫先生を旗手としたその流れは大きく拡がっていきます!少年漫画から貸本漫画、そして少女マンガの登場から、青年コミックの登場、レディスコミックやエロ漫画なども登場し、さらには縦読み漫画などの新たな手法も登場して来ました。作風は多様で、作家も多種多様、その圧倒的な多様な表現が日本の漫画文化を深いものにしていきました。そこからさらにアニメーションが拡がっていき、漫画から始まった日本のマンガ・アニメ文化は世界に誇れるIPに成長していきました。日本の出版社の編集者の役割もとても大きいものだと思います。編集者はプロデューサー!というのは私の持論です!作品をより善くするために作家に寄り添い続ける人、実際、スタジオジブリの鈴木プロデューサーは元々、徳間書店の編集者でした。そこから「風の谷のナウシカ」が生まれました!
話しが脱線しましたが、そうしてここで、作者のあそうさんが描いていることはまさに漫画の根幹を貫く企画・シナリオ・脚本のこと。ここをないがしろにしては決していい作品は生まれません。そうして、それが教科書通りで構築されてしまうと決していいものは出来ないんですよ!という言葉は本当に本質をついており、それだからこそ日本の漫画文化は今も世界最高のレベルにあるのではないでしょうか?映画やドラマ(配信系)などの制作が韓国に抜かれてしまっているのでは?と感じておられる方も多いのではないでしょうか?そんな時代だからこそ、本書のような熱量の高いものに触発されて創作のエネルギーを放出していくための準備をすることは決して遠回りなことではないと思います!そのためには良質で高品質な作品のインプットを大量にし続けることである、ということは言うまでもありません。
PS:これと並行して読んだ、楳図かずおの「NHK趣味悠々 楳図かずおの 今からでも描ける!4コマ漫画入門」(@NHK出版:2009年11月)もとても面白く興味深いものでした!やはり実作を高いレベルで行われている先生方の書くものは面白いことが良くわかりました。