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小さきものたち

 公園でやっているフードフェスみたいなものに行ったのだが、公園の遊具で小さき人たちがわじゃわじゃと遊んでいた。ぶつからないように動体視力を鋭敏にして通り過ぎる。昔小さき人たちと関わる仕事をしていた時は常に視野を広く、動体視力を鋭敏に、五感のアンテナを張り巡らせて仕事をしていた。またあの仕事がやりたい気持ちと自分には向いていないという気持ちがぶつかり合って、複雑な気持ちになる。

 コーヒーを買って外の椅子に座り飲んでいたら、犬が突然こちらを向いて吠え始めた。公園には犬を連れた人がたくさんいたため、他の犬を見つけて吠えているのかと思って周りを見たが犬は見当たらず、なぜか私たちに向かって吠えている。何が気に入らなかったんだろう。格好つけてコーヒーを飲んでいるとよくこういうことが起こる。スタバに1人で行くと必ずでかい音でむせてしまう。私たちはそういう星の下に生まれてきた人間だ。

 家に帰ると小さきぬいぐるみ達が背中合わせに朗らかな様子で座っていた。小さいけど私たちの暮らしにかけがえのないものたち。1人はかなり古くからいる子で、もう体が透けてしまっている。ぬいぐるみ病院に入院させてあげたほうがいいとは思っているのだが、離れるのが心細くてきっとこの子も泣いてしまうだろうなと思って、その機会を先延ばしにしている。もう1人は最近ちょっと体臭が現れてきて、毛並みもペタッとしてしまった。お風呂に入れてあげたほうがいいだろうなと思いながらも、水が嫌いなこの子は嫌がるだろうし、なんだかこの子が一皮剥けてしまうような気がして、妙な寂しさからこちらも先延ばしにしている。長く一緒にいるためには必要なケアだとわかってはいるけど、なかなか手をつけられないでいる。ぬいぐるみをさっと洗ってあげられる人を尊敬している。そういう人たちにぬいぐるみお風呂会を開催してほしい。みんなでお風呂に入れれば、愛された痕跡の残ったこの子を洗うのも寂しくないような気がする。

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