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療育花育の記録 ともくん#11

ともくんは、平成25年生まれ。障害名はついていません。いわゆるグレーゾーン。普通学級に1年通い、勉強も頑張りました。2年生からは、障害クラスに入り、お母さんもともくんものびのびたのしく生活できるように少しづつなってきました。
いきものが好きで、カマキリを飼ったり、抜け殻を収集したり、遺跡を掘りに行くのが好き。いろんないきものにとても興味があり、調べるのも得意。おともだちからは、いきもの博士と呼ばれることも。

ともくん 20240422 「繊細さと慈愛」


終了後の経過について 親御さんから

「今日は疲れたから2本だけにするからね。」
と学校帰りに言い、家に帰ったら自分で庭の花を切ってきていました。
廃材のビンに生けると言い、自分でビンを選んで来て、新聞紙、ボールに水、ハサミ全て自分で用意したのて内心びっくりしたと同時に積み重ねてきたからこその成長を感じました。
とってきたオレンジの小さな花を器に入れて台の上に置いていると、そこにちょうど白いボードが倒れ掛かってきて花が折れてしまうというハプニングが起こりました。
かんしゃくをおこすかなと思ったら、意外にもすんなりもう一度庭にお花を取りに行きました。
すると今度は全然違う花をとってきました。
15分前には用意でき、「今日はポケモンカードを飾る。」と言って用意しました。
自分で余裕をもって用意できたのは初めてでした。

教室が始まり先生が「こんにちは」と言ってくださってもあいさつはせずで、「お疲れかい?」と聞いてくださっても応えず、
「学校どうだい?」「宿題とかあるの?」「そっちはあったかい?」と話しかけてもらっても全然応えようとしませんでした
北海道はまだ寒くて、8度くらいでまだ桜は咲いてないとのこと、そんな話の流れで「今日はどんなお花、植物にしたの?」と聞いてくださってもこれまた答えず、画面越しに見えるお花から「それなあに?」と聞いてくださると初めて「謎」と口を開き、
そのお花を画面に近づけ、「きれいだ。」と言っていました。
すると先生は「謎の植物で生けてみてね。どういう風にすると美しいかやってみてください。お願いします。」と言われた後、
「自分で準備できるようになってすごいね。」と褒めてもくださいました。
「黄色いの何?」と聞いてくださると「たんぽぽ」と答え、「かわいいね。」と言ってくださり、
やっと自然に会話ができるようになっていました。

生け始めてから、先生から「ビンに入れるところ(茎)の葉っぱとってあげたらいいよ。そしたらお花の方にいっばい栄養いくから。」とアドバイスがあると素直に葉っぱをとっていました。
パッパッと生けてすぐさま「できた」と大きな声で言いました。
「ちゃんとバランス考えてたね。お水いっばい入れたらいいよ。」と言ってくださいましたがお水を入れようとせず、なぜか電気を消してしまいました。
「謎の花きれいだね。」と言ってもらうと電気をつけました。
先生が「テーブルに置いてみようか?」と言ってくださるとテーブルに置いて飾っていました。
「一番上まで水を入れると花きれいに見えるよ。」と言ってくださいましたが、入れようとはせず、ポケモンカードを並べて「お花とあって良いんじゃない。ポケモンだから。」と言った後、
カードのポケモンの名前を言っていました。
「美しいよ。」と先生は言ってくださりとも君も嬉しそうにしていました。
とも君はいっこうに水を入れようとしないので、先生が私に入れるよう言われ水を入れました。「お水は命だからいっぱい入れたらいいよ。」と言ってくださいました。
なぜだかうちの農園の商品のハチミツや黒豆ご飯セットの黒豆っちょ飯やブラック豆子を飾りました。
先生は「とっても美しいです」と言ってくださった後、椅子でゴロゴロして「じゃあさよなら~」と言い行ってしまいそうになったので先生が「挨拶しよう。」と言われましたが、
のれんの向こう側まで行って「ありがとうございました。」と言っていました。
ちゃんと顔を見て心を込めて挨拶ができるようになってほしいものです。
いろいろ思うことはありますが、疲れていても休むとは言わず最後まで取り組めたことはすごく頑張ったなと思いました。

終了後、いつもお話をする時間をとってもらっています。先生は、「とも君は繊細な子。前は大ぶりの花だったが花の選び方が進化してきた。器が広がった感じがした」と言ってくださいました。
確かに前はお花屋さんで大きくて高価な花を選びがちだったのですが、ここのところ庭に自然に生えている花で小柄な花を選ぶようになってきたのを感じます。
自然体な感じを受けます。
また、選ぶ花も私とは違うなあと感じます。
お花から親と子の価値観の違いに気付かされます。
先生の話はいつも納得するものがあります。
「大人はもっともっととなりがち、でもとも君はそうはいかないところがすごい。とも君は根っこが根付いている。美しさを意識してしゃべっている。それは人間の感性として大切なこと。今日はとも君はやさしくバランスをとってやっていた。すごいなと思った。」と話してくださいました。
そして、「少しずつだよ。」と。
本当にとも君に付き合っていくにはいつも根気がいり、親だけでは限界を感じます。
こんな先生の一言一言が励みになります。いつも学校で疲れて帰ってからの教室なので、いつも疲れ気味です。
それに対して先生は「疲れていない時は、もっとすごいんだろうね。心のゆとりは大事だから。とも君はお花生けてる時って、ちょっとでも落ち着くんだよ。疲れててもやるからすごいね。」とお話してくださいました。
疲れてても確かに参加はするので、お花から元気をもらっているのかもと思いました。
今まで生けた花はずっと残していてドライフラワーになっています。
今後どうするのかなあと思っているとお話しすると、先生は「ドライフラワーになることを何回か話してるからとも君にインプットされてて、ちゃんと残ってるんだよ。ちゃんと聞いているんだよ。」と言ってくださいました。
いつも聞いているんだか聞いてないんだかという感じですが、ちゃんと聞いてるってことなんだなって嬉しく思いました。
このままずっとドライフラワーで残していくのか、いつか何か作品になるのかどうするのか楽しみにしておきたいと思います。
学校では、同学年の中ではできないことが多いので、
こうやって自分の好きなことでちょっとでも心が解放されたり、
とも君らしさを先生に認めてもらえる
ことで自分に自信ができていくと良いなあと思います。
今回も学びの多い教室となりました。ありがとうございました。

写真記録


お疲れ気味だったが、花に触れていると次第に落ち着いた


頬がゆるんできた


疲れていても集中している



眠たくなってきている



前回を踏まえた検証と考察

しばらくの間、環境に慣れるまで、刺激は少なく現状維持。待つに徹する。

まだ環境の変化でお疲れモード。以前より集中への切替が遅い。以前ならできていた集中もなかなか腰が据わっていない。

印象記録

疲れている中、それでも嫌だとは言わず、花に触れることへの姿勢は崩さないともくん。
準備から後始末、ご挨拶の節目まで、ひとりきりでやり切ることができる。
ルーティンが身に付いている。

そんな中でも、花を触る手はほんとうに優しく、
作品からよりも、
花に触れている時の彼の手の動きから、
彼の本質と、繊細さ、彼の命あるいきものへのあたたかな慈愛が表現されていた。

現場から

選んだ花の名前を伺うと、「なぞの花」と応える。疲れていない時の彼なら、探求心でいっぱいなのだが、なぞの花のまま終了する。
しばらく癒しのほうへシフト。

ともくんから「飾る」という言葉を初めて聞く。
美しくしたいという、気持ちの表現だったので、前回から出てきた感性のなかの一部でもある美意識という芽が少しづつ定着する予感を感じた。

次回考察

引き続き、次への刺激は控え、待つことに徹してみる。


―to be continued

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花育研究家 森直子
2003年から一万人以上の方に花育をしました。現場でどんな風に、どうしたか、結果どうか等、遺さないまま頭の中にあり、書きのこして、いつか誰かの役にたったらいいな、と思い書き始めました。サポート励みになります。活動費として使わせていただきます。よろしくお願いいたします。