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療育花育の記録 ともくん#18

ともくんは、平成25年生まれ。障害名はついていません。いわゆるグレーゾーン。普通学級に通い、勉強も頑張りました。障害クラスにも入りました。
いきものが好きで、カマキリを飼ったり、抜け殻を収集したり、遺跡を掘りに行くのが好き。いろんないきものにとても興味があり、調べるのも得意。おともだちからは、いきもの博士と呼ばれることも。

ともくん20241221  「みんなで祈る」



終了後の経過について 親御さんから

「先生が今回はクリスマスの花を生けても良いしお正月の花を生けても良いし、とも君の好きな花を生けたら良いよって言われていたよ。」
と話すと、とも君は「お正月の花にする。」と言い、
今回は珍しく前日にお父さんと一緒にお花をイオンに買いに行って菊の花と榊を買ってきたので、
もう少しお正月らしくても良いのかなという感じがしたので、
当日も道の駅(いろんなお花が販売されている。)に行くことがあったので、一応お正月らしい金銀に塗られたものや花を見せてはみましたが「いらない。」といったので何も購入せずに帰りました。


帰りの車の中でもう一人の花育教室の生徒さんのあきらくんのことを急に思い出して、あきらくんはどうしているのか聞いてきたので、「会いたいん?」と聞くと「どっちでも。」と言ったので、
そういう時はだいたい会いたいということなので、会いたいんだろうなと思い何だかあったかい気持ちになりました。


帰るとお父さんが「南天の実庭にあるで。」と言ってくれましたが、
「いらない。」と答えました。

自分で準備を始めましたが、水切り用の水をボールに汲んでないので聞いてみると、「水汲んだら危ないし、前みたいになるし。」と答えたので、
以前水をこぼしてパソコンが壊れたことちゃんと覚えていて学習したんだなと成長を感じました。

教室が始まり、先生が冬休みやクリスマスのことや「休みと学校とどっちが好き?どっちも?」と聞いてくださっても何も答えようとせずポケモンカードを見せていました。

「先生の家にも20年前のポケモンカードがいっぱいあって捨てずにとってあるよ」とお話してくださったり、
「ミイラ(今まで生けた花のドライフラワー)、今度とんど焼きで出すんでしょ?」と聞いて下さっても答えずでしたが、花瓶のことを聞いて下さると花瓶を見せて「花はどう?」と聞いて下さると
榊の葉を画面に向かって見せると「可愛い葉っぱだね。とも君選んだの?」と聞いて下さっても答えずひたすら見せる行為を続けていました。

そして先生が「よろしくお願いします。」とあいさつを言われましたがとも君は何も言わずで始まり、「自分で用意してすごいね。」と褒めてくださっても反応無し。
「お正月にお花を飾る意味は、神様がここに来るように。一年間無事に健康に過ごせますようにと祈りを込めてお花を生けるんですよ。一年間無事に健康に過ごせますようにと思って生けてください。」とお正月にお花を生ける意味を教えてくださってお花を生ける時間がスタートしました。

すると、ボールに水を汲みに行き、榊の葉を束ねている紐がとれなくて、「紐切れないんだけど。」とやっと声を出しました。
先生が「ハサミで切ったら?」と言ってくださると、ハサミを取りに行って紐を切っていました。
「作ったお花に年神様が来るよ。」「何の葉っぱなの?」と聞いて下さると「榊」と答え、「すごいね。榊なの!来年良い年になるね。!神様どうぞうちに来てくださいねと祈りながら作ってね。」と言ってくださり、
やっと会話するようになったかと思うと、ビデオオフにしたので、「だめよ。」と私が言うと「秘密なんだもん。」と言うので「そのこと先生に言わないと。」と言うと、
先生も画面が映らなくなったことを言われたので、「言わないと。」と再度言っても言わないので、私がとも君の代わりに「秘密にしたいみたいです。」と伝えると「そしたら、生け終わったら終わりましたって教えてね。」と言ってくださり、そうすることになりました。


とも君は、手際よく菊の花を束ねている透明シートをハサミで切った後、菊の花の水切りをして10秒ちゃんと数えては、何回か花瓶に生けていました。

最後の一本は長くないとと言いながら花瓶の真ん中にデーンと斬新に立てていました。
思うがままにパパーと生け終わると、「片づけしないと。」と言って、ボールの中の切った茎や葉っぱをそのまま台所の生ごみを入れる三角コーナーに捨てに行ったので、
私が「火葬しないといけないから新聞紙にくるまないと。」と言うと、生ごみの三角コーナーから拾ってきて、新聞紙にくるんでちゃんとゴミ箱に捨てることができました。
すぐに素直に行動でき、このことにも成長を感じました。

「先生が「できました。」て言ってって言ってたよ。」と言うと大きな声で「できましたー。」と言って、ビデオオンにして作品を見てもらいました。


今回は珍しく何も飾らずシンブルにお花だけでした。「年神様来てくれますようにってお祈りした?」と聞いて下さると「してない。」と言ったので、ちょっとがっくりきましたが、
先生は「花にも心があるからね。来年も年神様きてくれるよ。これで来年バッチリだ~!お正月らしいしょんぼりしない花がいいです。冬は寒いから元気な花生けるのがいいです。
1月1日は神様にお祈りする日だね。今年も良い年になりますようにって。」とお話してくださり、
その後もとも君が上手にやれたこと、夏に会えて嬉しかったこと等気持ちを伝えてくださいました。
そして最後に「ありがとうございました」と挨拶ができました。

先生が「来年も良いお年をお迎えください。」と言われた後、「練習しよう!」と言ってくださり、みんなにも「来年も良いお年をお迎えください。」って言うんだよと教えてくださると、
ともくんも「良いお年をお迎えください。」と言うことができました。
良い光景でした。

「今日はとも君元気だった。こころのゆとりがあって良かった。眠くもないしお腹もすいてないし、よくしゃべるし。」そして「お正月に生ける花は松竹梅、菊。菊を選んでるとも君はすごいね。冬にも丈夫な花を生けられている。榊を選んでるとも君はすごいね。神様くるような花だもんね。」と言ってくださり、
ともくんセレクト良かったんだなあと思え良かったです。
良い一年の締めくくりができたように思いました。
家族もみんな「きれいじゃなあ。」と言ってくれました。嬉しそうにしていました。


今年度に入って、ついに1月14日とんどの日、ミイラの花を火葬することができました。
前日最後に外のウッドデッキにミイラを飾って思い出に写真を撮り、とも君がシャボン玉を飛ばしてあげました。
そしてとんどで焼きました。二日間で良い看取りができたのではないかなと思います。



今回、初めての平日から休みの日に教室を変更しての花育教室でしたが、以前とは違って、とっても元気に参加することができ、変更して本当に正解でした。

前の日から準備ができたし、お花を生ける時も生き生きしているのが感じられたし、とにかく元気だったことがとても嬉しく思え、私も元気になりました。
親子って循環してるって感じました。

学校は、思っていた以上にすごく頑張ってて疲れてたんだなあということもよく分かり理解できました。
先生が言われた通りお花が嫌でやりたくないではなかったんだなあということが明確に分かりました。

もっととも君のこと分かってあげんといけんかったなって反省もしつつ、先生は本当によくとも君のことを見てくださって、理解してくださっているなとありがたい気持ちでいっぱいになりました。
子育ては親だけでできない、こうやって客観的に見てくださって育ててくださる第三者の人の存在って本当に大きく、森先生の存在は私達親子にとって本当に大きなものだなと改めて思う日となりました。


「とも君はちゃんと体験して納得したらすぐやる人、そうなんだと思ったらやる。自分が判断している。みんなしなくちゃいけないからしてる子多いけど、とも君はしたいからしていた。
挨拶もしていた、嫌々じゃなくてしようと思ってしていた。
元々感性をもっている子だから、そこを伸ばしたい。
お母さんも一緒に伸ばしていけたら。
お互いが無いものを補いあっていけたら」と言ってくださいました。
本当に心強く嬉しく思いました。

とうとうミイラの花も火葬されましたが、この体験からとも君の心に何か残っていくものがあればと思います。
長期間かけて”いのちの循環”ということを体験から学べたのではないかと思います。

今回もありがとうございました。

写真記録






前回を踏まえた検証と考察

お正月に皆で祝う花、というテーマを出してみた。

お父様といっしょに花を買って、自分で選んで用意できていた。イメージはどこかに「お正月」の花のイメージがあったのだろう、パブリック的な誰から見ても「お正月」のイメージだった。

印象記録

今日は、テーマの「愛でる心を育む」のトレーニング。
今までは学校が終わって夕方にトレーニングをしていましたが、本日より土曜日の昼間に変更した。
彼の眠たいおなかが空いた疲れた、等々の環境を整えるのに、
やはり、功を奏していたようで、落ち着きや余裕があり、気が通っていた。

現場から

なぜ、正月に生の花をいけるのか、を説明した。
最後は、年神様が来てくれて、無病息災、健やかに無事に一年暮らせますように、とお母さま、ともくん、私とみんなでいっしょに
いのちある花や植物たちに向かって祈願した。
敬謙な気持ちを体験してもらえたらいいな、と感じていた。

今まで生けた花をミイラにしてとっておいたともくん。前回会った際に、ミイラを作品として「人の手によって美しくして生かす」ということを実際に見せてきた。
年の節目がきっかけで、循環させようという心持ちになったことに、彼のなかの何かのこころの成長を感じた。

次回考察

初生けなので、年頭の最初には、私も初心に帰り、清々しい気持ちを共有したいと考えている。

―to be continued


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花育研究家 森直子
2003年から一万人以上の方に花育をしました。現場でどんな風に、どうしたか、結果どうか等、遺さないまま頭の中にあり、書きのこして、いつか誰かの役にたったらいいな、と思い書き始めました。サポート励みになります。活動費として使わせていただきます。よろしくお願いいたします。