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ああそうか、「私」の話だった 『傲慢と善良』

 身につまされる話だった。
西澤架の婚約者・坂庭真実が失踪する。真実はストーカー被害に遭い、架の部屋に逃げてきたばかりだった。真実はストーカーに連れ去られたのではないか?真実を見つけるため、架は彼女の過去を調べ始める。

 何重にも積まれた「傲慢」。
 タイトルの通り、出てくる登場人物は皆「傲慢」さをもっている。娘の就職や結婚に干渉せずにはいられない真実の母、架がかつての恋人に抱いていた感情、そして真実もまた――。「傲慢と善良」の意味は、説明しすぎなくらいに語られつくされている。特に結構相談所を運営する女性が話す「婚活がうまくいかない人の特徴」はあまりに的を得ていて恐ろしい。こう書くとネットのまとめ記事のようだが、婚活に加え、人間関係の色々な面で炙り出される「傲慢と善良」を突いてくる。だから婚活をしたことがない人だって身につまされる怖い話なのだ。傲慢って、周りの人は気がつくのに本人は全く自覚がないところが恐ろしい。自覚がないから「傲慢」なのだろうが。正直、本作を読んで「私って傲慢だったんだ…..」と思い至りずっと落ち込んでいる。朝井リョウの『死にがいを求めて生きているの』や『何者』を読んだときに近い。ちなみに本作の文庫版の解説は朝井リョウが担当している。

辻村深月『傲慢と善良』朝日文庫、2022年
カバーに描かれた女性が俳優の奈緒に見えるなと思っていたら、映画では奈緒が真実役をやるらしい……!
 

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