ショートショート¦夕焼けの輪唱
とんとん、と、足で地面を蹴りながら、ひなりひなりと揺れるブランコの上で、結衣は小さく口ずさんでいた。
「遠く離れたあの人に こえは届かないけれど♩」
夕焼けに染まる空の下、声は風に溶けていく。
ふと、誰かが同じ歌を追いかけるように歌い始めた。
「いっしょに歌おう♩」
驚いて歌を止めたけれど、辺りを見回しても、誰もいない。ただ、夕焼けの光が長い影を落としているだけだ。
「わたしに話しかけているの?」
結衣がつぶやくと、今度はたくさんの声が重なって返ってきた。
「そうだよ、そうだよ♩一緒に歌おう♩」
誘われるように、結衣はもう一度歌を口ずさんだ。すると、その歌がどんどん広がり、輪唱のようになっていった。影たちが踊るように揺れ、夕焼けはますます赤く輝いた。
歌い終わると、声たちはそっとささやいた。
「ありがとう。また来てね♩」
歌声を胸に抱え、結衣はゆっくりと帰路を辿り始めた。夕焼けの輪唱は、きっと心が寂しいときにだけ聞こえるものなのだ。
終-【410字】
こちらの企画に参加させて頂きました✧*。
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「夕焼け×ブランコ」でAIと創った画像が、とても可愛かったので。「みんなのフォトギャラリー」に追加できるように、載せておきます。
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