ショートショート¦迷い文字カウンセラー
「誤字は心のゆらぎを映す鏡です」
どこからどう見ても怪しい看板に、戸惑いながらも、わたしは扉を開けた。
「書き間違えた文字がその人の無意識を暴く」
セールスマンはそう言っていて、売り文句だと分かっていたけれど、わたしは、藁にもすがる思いで、その話に食いついた。
部屋の中には品の良いスーツを着た男性が座り、机には、事前に提出した、わたしの書いた文章が置かれている。
「なるほど、ここですね」
彼はペンで原稿を軽く叩いた。
「『希望』が『恐望』になっていますね。最近、不安なことはありますか?」
ドキッ…とする。確かに、最近は仕事で失敗をし続けていて、自信を失っていた。
「それから、『未来』が『未解』と。進むべき道が見えていないのでは?」
鋭い指摘に言葉を失う。わたしの心を読み取ったかのように、彼は柔らかく微笑みながら言った。
「誤字は修正できます。心の迷いも、ゆっくり整えれば大丈夫です。」
わたしはその言葉にすこしだけ救われた気がした。
終-【410字】
こちらの企画に参加させて頂きました✧*。
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いつもありがとうございます。喫茶店で珈琲飲みながら、優雅に創作します(嘘)。頂いたものは、記事を書く際の題材として使い、お返し出来たらな…と思っています。