ショートショート￤満床の秘密
わざわざ商談のために大阪まで来たのに、今日はイマイチな感触だった。スマホをスクロールしながらホテルを探しているけれど、どこも満室だ。
「はぁ…やっぱ今日はついてない…」
行くあてもなく、ぶらぶらと歩いていると、「スネーク満床」と書かれたホテルを見つけた。
大きい蛇の模様が描かれた看板。なんだか不気味なホテルだが、背に腹はかえられない。
「満床」と書かれていたが、部屋は空いており、想像以上に綺麗だった。
床の隅で一匹の蛇がこちらを見つめていたが、気にする余裕もなく、疲れ切った体をベッドに投げた。目を閉じようとしたその時、蛇がするりと近づき、バッグを探るように鼻先を動かした。
「え？ なにするのよ？！」
蛇は振り向くと、わたしの財布を咥えて一目散に壁の隙間に消えていった。呆然と立ち尽くしていると壁に文字が浮かび上がった。
「スネーク満床」
その言葉が消えると同時に、わたしは看板の意味を悟った。
「満たされたのは、蛇の腹ってことか…」
終－【410文字】
こちらの企画に参加させて頂きました✧*｡
お題が難しかったので、ことば遊びで。「満床」の類義語を調べると「満杯」「満室」と出てきたので、ホテル設定で書き始めました。更にそこから派生して「満腹」をオチとして、掛けています。(派生しすぎ…？)
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