エリート会社員とお話し
とある経営者のお家に招かれ食事をすることがあった。
私と友人でその人の家に行った。食事会にはわたし達とは別に2人が同席していた。30歳くらいの社会人の人たちだった。まったく初対面だが、温和な雰囲気ですき焼きを食べた。
わたしと一緒に来た友人は会社員だが、わたしは就職もしたことがない。半引きこもりからヤケになって路上で物乞いをしている人間だ。立派な社会人を目の前にして、あまり自分からは積極的には自分のことを語らなかった。ぼんやりとすき焼きを食べる時間が過ぎた。
家に誘ってもらった経営者はわたしの路上活動をおもしろがってもらい付き合いのある間柄だ。その経営者の方が、わたしが路上でお金をもらったり、飯を奢ってもらったり、路上で人とつながって居場所をつくる試みをしてるということをわたしに代わりみんなに話した。
わたしも促され自分の経験を話した。すると、会社員の人がわたしの物乞いの話を面白がり、自分の業務と重ねて話を展開した。リクルートで働いているという。エリート会社員だ。
働けずに物乞いをするなんて世間からは社会性のない奴だと言われる。しかし、物乞いも路上に出てお金を得る最低限の能力をつちかったり、そこで何らかの人間関係をつくっていく。その人なりの社会性というものがあるのだとリクルートの人が語った。
その人は、リクルートで転職支援の業務をしている。しかし、業務における仕組み、パターン化などで歯がゆい思いをしているそう。業務では、その人の話を聞いてその人の強みを活かせる仕事を紹介する。
社会性とは何かという話になった。例えば、働いてない人だが家族は大事にしているなど、その人にはその人なりに社会的側面があるという。そういったものは市場評価されにくい。しかし、そういった個人個人の社会性を伸ばすことが、その人のよりよい生き方につながるのではと。本人のよりよい生き方を思うならそういうのを手伝いたいのだが、今のシステムのあり方ではタッチがしにくいという話をしていたと思う。
リクルートというと、大学時代に就活セミナーでリクルートの社員が話しているのを見たことがある。常に笑顔で声が高く、サイボーグのようだと不気味になってしまったことしか覚えてない。日本の就活を牛耳るリクルート。就職する人間はこのような表情を常にしとくべきと語っているかのようで、わたしには恐怖心と反発心しかなかった。
今回も、勤務先がリクルートだと聞くとギョッとした。わたしのような物乞いなんてドン引きされて終わりだと思っていたが、こんな形で評価されてしまって意外すぎた。切り口も新鮮である。
わたしの路上での物乞い経験はアナーキーな知識や感覚のある人にしか分かってもらえないと思っていたが、リクルートのような資本主義のど真ん中の人に面白がられて話が展開していくとは思わなかった。
やっぱり、社会的立場が高い人から肯定的なジャッジを受けると承認欲求が満たされるのはある。人の子だから。
そして、正社員など社会人と話すのもまた面白いなと思った。やはり、社会人は経験がある。人を見る目もあるだろうし、経験から語られる言葉にはそれなりの厚みや面白さがある。本で読んだだけの知識や理論が骨だとすると、経験から発せられる言葉や分析には肉のついた旨みを感じられる。
今後は社会人とも仲良くさせてもらいたい。
ということで、異業種交流がしたい(当方、ろくに働いてないけど)。