見出し画像

詩『私のザルザン』

身を切る願い
どうか どうかと唱える
思い描く 叶えられた未来
願いに託す 掛け替えのない記憶

夢に触れる
使い古された 柔らかな綿の毛布
愛しい 愛しい 目を閉じて頬ずり
幸せの香り 感触
手放すことのできない やわらかな愛
沈む 沈む ここは安心

命はんぶん
それより もっと
お渡しします
どうか どうか 叶えてください
願いが事切れぬよう 生かしてください

宇宙よりも果てしない
穴の空いた心
信じることに絶望して 瞼の落とし方を探った

時間など解決はしてくれない
顔を上げて見つめる先は来た道
向いた先が前であるとは限らない

前を向かぬことは悪いことらしい
誰かは困り 誰かは怒った
心には風が吹き抜け 体の芯は凍え続ける
私は 誰かを安心させるために穴を塞ぐ
指の隙間から風が吹き 手も凍える
誰かが言う
痛々しくて 見たくない 寒い
塞いで 塞いで 早く
分かるでしょ みんな そうしているんだよ
言葉などない ないけど 言うのだ
悲しんでいるのは私なのに
誰かのために 手で穴を塞ぐ
私のためにはない 慰め
それが 時間が解決するということらしい

これからは 何にも願わない
ただ大切にすること
それだけだった
知っていたのに 知らなかった
頼りにした信仰は萎み やがて消えた
慎ましきは ただ在るだけであった

涙が落ちる速度で星が落ちた
体の温もりを宿した光
地面に落ちて 種となって芽吹く
枯れた花の種は 地球を置き去りに
宇宙の果てまで飛んでいった

身を切る思いで願った
心の一部を切り取り
体から抜け落ちた 希望に満ちた願い

がらんどう
期待も 希望も 失った
なんども なんども
心が 心臓を強く握りしめる
鼓動を止めようと
息もままならないほど 強く ずっと

涙は 星と同じ速度で流れた
月に勝るように 星は煌々と輝き
たくさん消えていった

絶望を知らない ザルザン
宇宙の果てで 静かに夢をみる
叶えられなかった 美しい願い
幸せを見続ける

心から抜け落ちた一部
ザルザンは幸せ
私が欲した願いの姿のまま
静かに目を伏せる
私の理想のままに 微笑む

私であって 私とは違う 私
せめて 願ったままの姿で生きて欲しい

私のザルザン
希望 願い 
私が失った幸せ
幸せ そのもの

絶望なんて知らない
幸せだけを知っている
私の心 心の一部

私のザルザン



いいなと思ったら応援しよう!