
詩『時雨れる』
⚠️暴力 グロテスク表現
冷たくなった 紫由
カツン カツン
虫黑は 石を振り下ろす
紫由の赤に
カツン カツン
振り下ろす 振り下ろす
石は重く 容赦なく
紫由の顔から 赤が剥がれていく
ポタリ ポタリ
雫が 紫由の閉じた瞼に落ちる
虫黑は 涙をこぼす
ただ ただ泣き続ける
紫由
彼女の名を呼びながら
可愛い顔に 石を叩きつけながら
虫黑は 泣いていた
こんなものが あるから奪われた
こんなものが
こんなものが
キラ キラ キラ キラキラ
小さく輝く
叩き割られた 赤の欠片が散らばる
虫黑は 赤を拾う
温かくも 冷たくもない
ただの赤
虫黑は その赤を口に放り込んだ
ガリ ガリ
硬く砕けたそれは 砂糖菓子のよう
しかし中から溢れ出すのは
熟れた柘榴の果汁に よく似た赤
虫黑は すべての欠片を拾い集め
口に入れていく
かき集めて 口に入れる
またかき集めて 口に入れる
やがて 歯が欠けた
口の中が 歯が 痛い
でも 止められない
それでも 全ての赤を飲み込んだ
口の中は 真っ赤だ
痛いなあ
ぽつりと 虫黑が呟く
外では 雨が静かに降っていた
鬱蒼とした山奥の洞窟に 男がいた
瞼を縫い付けたその男は
自ら縫ったのだと言う
男は痩せこけていた
まるで風が吹けば骨が折れそうなほどに
ただ 不思議なことがひとつ
腹だけが異様に膨れている
日を追うごとに 大きくなっていく腹
男がそれを抱き締め 体を丸めると
赤が飛び散った
まるで雷に打たれたカラスのように
悲鳴が洞窟に響く
男は動かない
その体は 次第に冷たくなっていく
男の腹から ひとつ這い出る
それは 目を開くと顔をクシャクシャにして
産声をあげた
生まれてきたのは 人の姿をした 赤子だった
数日が経ち
ある若い夫婦が その赤ん坊を見つける
子を持てなかった夫婦は
その子を連れて帰ることにした
小さな村に連れ帰られた赤ん坊
女の子だ
彼女は 時雨(しぐれ)と名付けられた
村の婆が 若い夫婦に言い聞かせたのだ
いずれや いずれ
お前たちも 本当の子を授かるだろうて
だから 時雨
一時の 情けとしての名
いずれ 他人になる存在
彼女の額には 災いの象徴が
やわらかなつの ひとつ
前
https://note.com/harubaru_misaki/n/n114cbbaf02d4
これにて完結にします。
読んでくださり、ありがとうございました!
今後、より詳細なストーリーは小説として作品にします。
今年中に書き終えられたらな〜と思うのですが…どうなるでしょうか()
⇩アルファポリスに作品を載せる予定です!