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新しいResarch PRJ始めました。第1弾は、とっくんへのインタビュー!

※この記事の前半部分は、プロジェクトの話。
後半が、とっくんへのインタビュー記事になります。

新しいプロジェクトについて

聴くのは好きだけど、書くのは億劫。
ここ数年の僕は、この状態が続いており、インタビューをして記事を書くのも遅々たるものでした。なので狙わずスローメディア。笑

2022年からのインタビューは、別の場所にアーカイブがあります。

その時のテーマは、「職員室の関係性をよりよくするためのマインドセットやTIPSとは?

インタビューは、記事の3倍ほど行っているのに記事にできていない。
深く学びあるお話を聞かせてくださったみなさんに対して、記事化できていないことを悔やむ自責の念が消えることはないでしょう。

ごめんなさい!!

記事化できないことを後悔する気持ちのその裏で、全てのインタビューは文字起こしし、インタビューさせていただいていた内容から、TIPSを抽出し、デザインに落とし込む探究をおこなっていました。近々、その探究結果は、公開していこうと思います。

自責の念に駆られながらも、最初のインタビュープロジェクトでは、
職員室における関係性をよりよくするという探究をまとめることができました。

また、そのプロセスを経て、僕自身が取り組みたいことは、この探究のプロセスの続きを他の学校における課題でも行うことだということに気づくことができました。さらに、もう少し具体的に書き記しておくと、探究を通じて今の自分が取り組みたいことの輪郭も少し見えてきたんです。現時点での現状把握のためにその辺りを、昼の情報番組ぽかぽか風にメモを残しておこうと思います。

探究から見えてきた自分のこと

  1. 学校という、課題がたくさんある組織体のことを”関係性”と”仕組み”という視点から理解を深めていくのが好きっぽい

  2. 教育が大きな過渡期にある今、学校組織への眼差しを深めることに意義を見出しているっぽい

  3. 今の自分にない視点や行動プロセスを持って実践している人の話を聴くのはかなり好きっぽい

  4. 複数の人の話から要素を抽出し、共通項として練り上げ、整理するプロセスは情熱をもって取り組める部分っぽい

  5. 聴くのも好きだが、それを整理するのが得意なことっぽい

書いたことをまとめると…
整理するという専門性をブラッシュアップすれば、まだ見えていない現象を構造化する技術が身につく。つまるところ、コンスタレーション。
多くの人の話を聴きながら学校にまつわる課題の解決法を探究することが自分も納得できる、多くの人にとって無益ではない取り組みになるかもしれない。

この数年の右往左往しながら人生の転機を歩んできた僕からしたら、意外と、ここ数日で自分がやりたいことがすっと見えてきてるなというのが、面白い。

あと、ぽかぽか風に「っぽい」という言葉を使ってみたけど、断定的ではなく、可能性を含みながらの方向性を定める言葉で、結構好きっぽい。

とまあ、自己認識を言語化でき始めたここ数日。

これまでと違うこと

これまでの自分と違うのは、
言語化したから、「よし動き出そう」というプロセスを取るのではないということ。10代、20代のころは、書き出して整理してみて、よし新しい一歩を動き出そうという探究をしてきました。

30代になって、言語化するよりも先に、プライベートや仕事で起こる様々なことを抱えながらも重い腰のまま歩き出し、今の自分”で”取り組みたいことに、足の小指ぐらいは突っ込みながら、少しづつやれる範囲で進めてきたからなんとなく言語化ができ始めたということ。探究を続けないことには、僕の場合は、違和感も何も感じられない。

これまで:言語化→ビジョンがクリアになる→それに基づいて動く

今:とりあえずスローでもいいので動く→制約・違和感を感じながら、実践する→実践する中で感じたことを言語化する→そこからまた探究する

言語化できたから、新しいことに取り組むのではなく、
言語化できたから、取り組んでいることにさらに意義を見出し、もっとやってみようと同じ領域に突っ込めるようになってきたんじゃないかなと思う。

今は、そんな形でいいと思うんだよな。

だから、僕が次のフェーズに進むために歩む小さな一歩は、

学校の課題を解決するために、インタビューと整理のプロジェクトをより正確な探究プロセスをベースに別のテーマでやってみること。

そういった意味で、5月ぐらいから小指をつっこみ、小さく始めていたプロジェクトが芽を出し始めたので紹介したいなと思います。

今取り組んでいること

今回のテーマは「学校の先生を軸足にしつつ、自分の探究したいテーマで学校外で探究している人や仕事を生み出している人が、その学びをどう自分の所属する学校に還元しているかを探る」インタビュー。

あくまで軸足は学校。そのための学びをしている人たちに、インタビューをして、質的研究のアプローチで整理すること。GTAなのか、TAEなのか、理念を構造化するそのプロセスに没頭していきたいと思っています。ゆくゆくは、質的研究方法をもっと深く学んでいきたい。そのための準備も少しづつ進めて行かなければなと思っています。今回のプロジェクトは、今改めて、大学院に通っているとのさんと一緒に取り組んでいきます。1人じゃないっていうのもまた楽しみの1つ。

このプロジェクトの第1回目のインタビューは、風越のとっくんにインタビューをしました。とっくんの企みであるハコールに参加しつつ、僕らの企みにも協力してもらう。この関係性は嬉しい限りです。

新しいプロジェクトなので、前置きが長々となってしまいましたが、以下、とっくんへのインタビューです。

とっくんへのインタビュー

今回からのテーマは、学校の先生を軸足にしつつ、自分の探究したいテーマで学校外で探究している人や仕事を生み出している人が、その学びをどう自分の所属する学校に還元しているかを探るインタビューになります!

第1弾として、軽井沢風越学園(以下、風越)で働くとっくんにインタビューしました。2年前に独立して、今年は週に4日、風越で働き、残りの時間は探究しているとっくん。学校内外を横断しているとっくんの中では、どんな学びが展開されているのか?ご一読ください。

インタビューでのキーワード

①  4はほぼ5なのよ笑

②  自分が取捨選択できる環境を作ること

③  学びは仲間探し

④  プロセスを開く

ゲストプロフィール

片岡利允(とっくん)
1992年生まれ。奈良県桜井市出身、長野県軽井沢町在住 。教育学部卒業後、奈良県公立小学校で4年間勤めたのち、軽井沢風越学園の設立準備に伴い、軽井沢へ。さらに風越学園立ち上げから4年を経て、30歳になり、独立することに。今は、引き続き風越学園を中心に、個人でも活動中。今年で教員10年目。主に「作家の時間(ライティング・ワークショップ)」など、学び手中心のワークショップやプロジェクトの授業づくりを模索してきたジェネレーター。その他、授業づくりネットワーク理事、『ハコール』編集長など。

インタビュー内容

殿村(以下:との):とっくん、今日はよろしくお願いします!改めてですが、今は風越の教員としてどんなことに取り組んでます?

ー 今年の話でいうと、個人事業主2年目で、週4日風越学園と業務委託契約を結んでる。業務内容は多岐にわたるけど、基本的には1年生から4年生とプロジェクト作りをしてるかな。後は、国語の読み書きが好きなので、ライティング・ワークショップを中心にした授業。授業以外だと、スタッフミーティングを中心になって進めてることが多いかな。その他にも、個人的に企業研修の案件をもらってきて、研修プログラムをやったりもしている。

との:風越以外の取り組みとして、学校外ではどんなことやってます?

ー 一言では言えない雑多な動きが色々ある感じ。仕事にならない動きが多いかな。そのひとつに、例えば『ハコール』編集長がある。なんだかんだ週1は自分で動けるようにしているけど、相変わらずメインは、風越でスタッフをしているという感じかな。

ハコール創刊号表紙
※『ハコール』:現在とっくんを編集長に、みんなで作成しているミニコミ雑誌。本当に書きたいことを書き、読みたいものをつくる参加生成型メディア。まもなく創刊号が発刊。創刊号の特集テーマは、「30」。インタビュワーたちも編集者として関わっている。

との:学校内外で活動しているとっくんだけど、風越で働いているときにスタッフとして意識していることは?(※風越では、教員のことをスタッフと呼ぶ)

ー 自分自身がご機嫌でいること。そこを一番意識してるかな。風越設立の時だと学校をつくるぞと、力が入っていたけど、自分自身が3年目に大きな壁にぶち当たってその先が見えなくなってからは、学校の中での自分の立ち振る舞いが変わったんじゃないかな。今は、そのあと一旦退職して、でもまた継続的に風越に関わっているという状態なんだけど、いろいろあって、シンプルに自分がいい状態でいるということが一番。困っている人がいたら話を聞ける自分でありたいし、この人だったら相談できるという自分でいれるかとか、一緒にたくらめる人であること。組織の大きな動きに関わっている部分もあるけれど、業務委託なので、「自分で取捨選択できる」。それを自分の手元に持っておきながら、自分がいい状態でいることを一番意識しているね。何でも自分自身からはじまるからさ。自分の顔が死んでると、場に及ぼす影響は想像以上に大きいからね。いまだに危ない時もあるけど。笑

との:実際に新しい働き方2年目は、どうなんですか?

ー まず最初に言っとくと、4はほぼ5なのよ。笑 これが今年の大きな気づき。週4学校にいると意識としては5日持っていかれる。去年は週3だったから今年とは意識の違いがかなりあるね。今は、風越以外の残り時間で何か別の仕事に就くみたいなパラレルワーカー的にやっているわけではないし、学校外の副業をするために本業の勤務日数を減らしているのではないんだよね。大事にしたいのは、「自分が取捨選択できる環境にあること」とか「主導権が自分にあること」。最初に戻るけど、自分がご機嫌にいるためにこれが大事なんだよね。じゃあ週1は何しているかというと、可能性を模索しているとしか言われへんねんけどね笑。自分の可能性って自分にスペース(余白)があることで考え見出すことができる。毎日全て学校のことを入れていると、イレギュラーな予定を入れられないし、そんな話も入ってこない。スペースを持ちながら動いていると、いろんなことが飛び込んでくるのよね。今年の企業の案件なんかは、そんな動きの中で入ってきた。

軽井沢風越学園でのひとこま

とのそう言った意味では、可能性を探究していて見つけた兆しってあります?

ー 可能性の1つは、『ハコール』かな。これは仕事ではなくほぼ遊びだけど、本気で遊べそうなことを見つけた感じがしてる。ギチギチに働いていたらこの遊びはできなかったと思う。あとは、今年教員10年目なので、教員としての節目としてアウトプットもしていきたい。ここ数年、周りの人に「いつ本を出すの?」と言われることも多いから、これまでの10年を振り返って本にするみたいなこともやってみたいよね。今年一年は、そういうことも週1のスペースの中でやっていきたいかな。余白の中で節目をつくる動きをしていけそう。

石橋(以下:はる)去年は週3、今年は週4ほぼ5だから、可能性を探る時間としては減ってるよね。その点に関しての焦りはある?

ー んー、焦りはあまりないかな。その環境の中でやれる時にやれることを最大限やっているっていう感じ。先に目的・目標・期限を立てることで力が湧いてくるタイプではないしね。どちらかというと、出会った人たちと話をしながら、やれることを考えて、とにかくやってみるタイプ。3年前に壁にぶち当たったときみたいに自分の中に閉じこもって進むことはしんどいけど、ちょっとずつ周りの人に分かち合っていくと気持ちが楽になってくる。力が湧いてくる。個人事業主は基本的に1人だけど、自分が信頼できる人や出会った人はみんな仲間だと思ってるから、なんかあったら一緒にやってくれるだろうと思ってるし、助けてくれるだろうとも思ってる。1人で缶詰になっていると、だんだんネガティブになっていくから、焦ったとしても、自分から定期的に外へ開くことを意識している。

はる自分を開く、分かち合うという言葉だけど、そのことと学校外での学びを作るとか学びに参加するとの関係はある?もしよければ、外の学びに参加したきっかけも教えてほしい。

ー そうね。学校外の学びについて言えば、まず、奈良の公立小学校の教員1年目から苦労したからね。一人、暴れん坊の子がいたのだけど、その子とむきあうための武器は、初任の頃は全然持っていなくて。それでも、本気で向き合うために、武器集めとして外に学びに出たのが初任の1年目だったな。当時の自分を振り返ると、現場の中のリソースだけでなんとかするのは無理があったのよね。どうすることもできなかった。むしろ、外に開いていかないと自分はどうなっていただろうと思うこともあるよ。それ以降もどんどん開いていって、2年目は毎月東京に出て行って学んでたね。二人も参加していたLCL(こたえのない学校が開催しているプログラム)は、1期も2期も連続参加した。6年前に軽井沢にきたけど、最初の数年は学校づくりに全力投球で、軽井沢に閉じこもっていたことによる苦しさもあったと思う。そういう時期も大切だと思うけど、外へ出て動きながら出逢いの中で分かち合いながら可能性を模索し続けることが自分に合ってると思う。人との出会いの中で可能性を模索していったていうのは、今につながっているかな。

はるいつごろ、その学習方法が確立していったの?

ー どうだろう?教員になってからかな。教員になる前の大学時代を振り返ると、割と小さな大学で、自分の大学の中で複数のコミュニティに所属したりつくったりしながら活動していたた。大学の端から端まで歩いてるなかで、色んな友達に声かけてたから、周りから“友だち番長”と言われるくらい”陽”が出ていた時代だったね。大学4年の時、友だちに言われて思いつきでやってみた、北海道から地元奈良までのヒッチハイクの旅は結構大きかったかもしれない。ヒッチハイクと徒歩だけで帰ってくる2週間の旅の予定だったんだけど、いろんな出会いの中で実際は10日で帰ってこられた。何が起こるか、何のためにやるのか、そういうことが予め何もわからない中で、「やってみたい!」だけでやってしまったこの体験が、その後の10年の自分の学びというか歩み方を決めたと思う。人と出会いながら、学びが開かれていって、次の道が見えてくる。それからまた別の人と出会って・・・を繰り返していく感じは、この10年の学びの形の原型かも。

とのとっくんの学びの中での人との出会いは、意識的に作っている?

ー そうやね。日常的に本やインターネットで情報収集するけど、これはすごいぞ!何だこれは?と思った時には、やってる本人に会いたくなるから基本的に会いに行くことにしている。例えば、教員1年目に「みんなの教室」(著者:岩瀬直樹)を読んだ時は、ワクワクしながら夜通しで読み切った。そして、著者の岩瀬さん(現在は軽井沢風越学園の校長)に会いに、その年の2月か3月かに信頼ベースの学級ファシリテーション講座に飛んでいって参加した。それは、関係性作りが目的ではなく、会ってみたくなっただけ、学びたくなっただけ。そこで、やはり次の道が見えてきた。やっぱりすごいってなってさらに学びたくなった。そうやって、また新しい人と出会ってを探りながらやってきたんよね。「人から学ぶ」。これは今でも変わらない。この人と出会ったから人生の方向性が変わったとか見えてきたってことがいっぱいあるよ。それは、全然予測できないことだし、よさも上手くいかなさもそこにはあるけどね。それも含めて面白い。ちょっと質問からはずれるかもしれんけど、たぶんずっと動きながら「仲間探し」をしているんだと思う。これは僕の人生の大きなテーマかな。

はる:「仲間探し」。30代に入って考え直したいテーマだね。

ー 「仲間探し」がテーマになったのは、どこか、自分の中に、マイノリティ感を感じながらここまできたこともあるのよね。小学生のとき、いじめられて孤独になってたこともあるし、不安定な家庭事情から自分の中の暴力性が立ち現れて、その時の気持ちを誰とも分かち合えなかったり、同じ境遇の人が近くにいなかったりもしたのよね。ちょっと話はそれるかもやけど、最近の自分の探究テーマの1つに「ルーツ探究」があって。僕は在日コリアン4世にあたるんやけど、4世にもなると言語はもちろん、文化としてはほとんど継承されていないのよ。子どもの頃は自覚していなかったけど、ルーツ的な部分でも他の人と違うところを感じてたと思う。今では、そういうことを表現できる人も増えてきて、同じ境遇の人にも出会うこともあるけど、むしろ自分はマジョリティではないということを痛感することの方が多い。そのマイノリティ感みたいなところもあって、僕にとって「仲間探し」は大きなテーマなのよ。

との:境遇や経験の中でマイノリティさを感じる時があって、今改めて振り返って出てきたのが「仲間探し」なんですね。仲間探しをするっていうのは、学校の中でも同じ感覚ですか?

ー 一緒やね。学校の中でも、今この人と仲間になれるかどうかを意識しながら関わっているね。この人とどうコラボできるやろ?このアイディア誰にいってみよう?とか。例えば、国語に関わるアイディア出てきたら、あすこまさん(国語スタッフ、澤田英輔さん)に言ってみて、相談に乗ってもらったり、あすこまさんの反応をみて、一緒にできそうだったらやってみたりとか。自分のグループ(1〜4年生)以外にも学校の中にはいろんなコミュニティやグループがあるから、そこを越える動きは意識的にしていってるね。役割に閉じこもらず、個人個人の関係性のなかでやれることの可能性をいつも探ってる。

はる:とっくんの中では、学校内外に共通して「仲間探し」っていう大きな軸があるから似たような意識の中で学校内外を動いているんやね。

ー そうそう。3年前自分がしんどくて閉じてた時って、だんだん人にも声をかけることができなくなっていたし、逆に、そうなっていくと周りの人からも声をかけられなかった。声をかけづらいよね。最初に戻るけど、自分を開いて、分かち合うためにも、ご機嫌でいることがけっこう大事になるのよ。

との:なるほど。学校外での学びや新しい動きを作る時に意識しているポイントはある?

ー なんかあるかな。今、がっつり取り組んでいる『ハコール』で考えてみると、とにかくどんどん仲間に声をかけてみるということを大事にしてるかも。初期の計画段階で、全部自分で作りきるのではなく、アイデア段階からいろんな人に声かけて「時間ください」っていう。自分で作りきろうとした時の方が早いかもしれんけど、そういうときって案外うまくいかんのよ。仕事でもそう。その時のプロセスを開いていくことが大事。開いていくことで、共謀者というか、一緒にたくらめる仲間を増やしていく。それが結果として、学びの総体になっていく。学びはコンテンツだけじゃないしね。そのコンテンツをどういうプロセスで作っていくかの総体が広い意味で学びだと思う。そして、そのプロセスをいかに遊び感覚でやっていけるかが結構大事。同じ感覚で遊べる仲間がいるかが重要。『ハコール』なんて、まさにそう。立派な学校外での学びの場になっていると思う。ハコールって今日何回言うねんって感じやけど笑

はる:もうすっかりハコール編集脳だね笑 でも、共謀者っていう言葉いいよね。共謀者であるから、一つの学びのプロセスを一緒に楽しんだら、また別の機会でも、その楽しいプロセスを知ってるから一緒にやりたくなる。そうすると、自ずとそこに生態系みたいなのが出来上がってくるもんね。単線ではなく、複線でつながってる感覚が実感として湧いてくるから学びになっていくんだよね。

ー そう言った意味では、「このアイディア、どうかな?」と毎回、この人にこえかけていいかなとドキドキしながら声をかけて相談してる部分もあるのよ。それで、いい反応が返ってくることもあれば、一緒にやるのはあんまり乗り気じゃない返事が返ってくる時もある。それはそれで全然いいのよ。自分の中では声をかけられる相手であるっていう時点で、その人とは一生の付き合いだなと思っている。一緒にやれるタイミングが今じゃなくてもまたどこかで繋がれるはずだから全然OK。その辺はある意味ドライかも。今じゃない時もあるし、その瞬間で交わる時には交わるし。必要じゃない時はそれぞれで、必要になってくるタイミングが来るから、またその時会いましょうみたいな感覚。でも、同じ時代を生きているからね。お互いのことはSNSでも感じられるので、誰かの投稿を見て、今だ!と思ってその人に声をかけることもあるよ。やろうぜ!って。ハコールの時も、全然コンセプトすら固まっていない段階でも原稿書いてくれる人がいたし、どの人だったらやってくれるかな、やりたいと思うかなはずっと考えてたね。

はる:ちょっと時間もなくなってきたので...ハコールみたいに学校外の取り組みにチャレンジしてて、具体的にとっくん自身にどんな変容が起こっているのか教えて欲しい。

ー 『ハコール』でやっていることや大事にしたいなと思っていることが学校の中で大事にしたいことと連動してくるのよね。たぶん、僕自身は学校の内外を区別できないタイプ。どこいっても大人にも子どもにも「とっくん」と呼ばれるしね。学校の中って日常生活の場だから、うまくいかないことも多い。うまくいかないことが続いて、負の連鎖になり自分が落ち続ける時に、外での動きで自信をつけたり、確信を得たり、別のアイディアやとっかかりを掴んだりして日常の活力にしていく。その結果として、意識的に変容が起きて、生活が変わるという影響があるかもしれないし、職員室の中での関係性が変わることもある。自分自身の変化のきっかけを職場の中でつかめるかつかめないかっていうのは、どんなに学校の中での関係性が良くても構造的に難しいこともある。だから、そこを補完するためにも外でどういうふうに情報収集したり、可能性収集みたいなことをやっていけたりするかっていう部分もあるかな。

との:独立して自分で選べる環境を作ったとっくんとしては、今は、自分の軸足は、どっちにある?

ー 10年も学校の先生をやっているからね。これが今は軸よね。日常的に学校の中でやっていることは、自分自身の身になっていることやし、自分の得意なことでもある。ライティング・ワークショップとかもそうだけど、日常的に身につけてきたこととかを生かして、今は、奈良市で親子向けのワークショップをやったり、授業実践の発表の依頼があったりするからね。これって、学校を軸にして身につけたことがあって、中から外に向けてやれていること。こうやって仕事としてやれていることは強みになっているということ。それに、例えば学校の先生として働いているから、家族関係の中でも言動に説得力があったり、その上に家族の関係ができていたりするよね。だから、先生に軸足があるとは思う。それに、4はほぼ5やし笑 ただ、いま取り組んでいるハコールはそれを覆す可能性があるとも思っているし、次の10年は軸足がどこにあるかはわからない。重心は常に自分の中に置きたいとは思うけどね。

との:とっくんがハコール含めて、いろんな動きをしていることを風越メンバーにはどう伝えてるんですか?公立校だと、外での活動に対して賛否両論あるけど...

ー 僕の活動を知っている人もいれば知らない人もいる。それは、公立の時と全然変わらんよ笑。基本的には、おもろいやんと言ってくれる人にしか話していないと思う笑。そのあたりは、考えながら戦略的にやっている感じがするね。今の働き方って自由度が高くて、自分の動きにブレーキがかかることが少ないということが自分にとってはメリットなんだけど、これって他の人にとってはあまりメリットではないかもしれんのよね。だから、今のところこの動き(独立して、業務委託として風越と契約する形)を真似する人はいないかな。僕としては、組織の中に2割ぐらいそういう人がいたらいいな。働きアリの法則ではないけど、2割ぐらいそういう多様な働き方してる人がいてもいいよね。働きアリ10割の組織って、崩れる時みんなで総崩れするから。だから、うろうろし続ける人、可能性を模索し続ける人、宙ぶらりんな人がジョーカー的に必要だと思う。俺はそれになろうって去年スタートした時に思ったよ。結構、自分のことを考えて働いているように見えがちだけど、意外と誰よりも組織のこと考えている自分がいるんよね。うろうろ働いている自分やご機嫌でいる自分の動きが絶対、組織にいい風ふかすんやという意識でやってるわ。そういった意味でも外でやってることが中で生かされるということもあるね。

との:とっくん、ありがとうございます。今後、自分がどうなっていくか、どうしていきたいかってあります?

ー 俺、今後何やってんのかな?笑 一緒に考えてくれや〜笑 でも、この「今後どうしていこかな状態」でいることが大事かな。常に悩んで進んでいくこと。だから、『ハコール』の展開も風越の今後も自分のことも予想できない。

はる:とっくん、ありがとう。最後に、この時間を振り返って、話してみてどうだった?

ー いや〜、やっぱり何でもカオスの中からしか生まれないんやなと笑 今も、先が見えない暗いところに自分達はいて、光る可能性はどこにあるのかずっと手探りでやっていくと思うわ。その中で、30代は、大きなテーマをもって進んでいきたいね。今年は、そのための10年の振り返りなのかもしれんね。本っていう文脈もそこからなのかもしれん。その本のタイトルが、次のテーマになるかもしれへんし、新しいテーマが立ち上がってくるかもしれへんし、全て捨てるかもしれへんし。なので、30代のテーマは絶賛募集中です。あなたの一言が僕の今後を決めるかもしれません。笑 ほんま、日々困って悩んでます笑

編集後記

とっくんにインタビューすると、学校の内外の境界線って意外と曖昧だよなと思いました。分けないからこそ面白さにつながる。越境という言葉もあるけれど、境界線を勇気を出して飛び越えるのではなく、自分の軸に沿って内外でも同じような意識で動いていく。それが内外で学びの相似形を形作っていくのだと思う。そういえば、数年前にとっくんと話していた時は、とっくんはずっと葛藤、葛藤と言っていた。その都度、真剣に悩みながら、悩みが深い分、やるってなったら強度や練度を高く実行できているから、次の出会いと学びにつながってるんだろうな。


インタビュワー/ライティング/編集 : 石橋智晴(はる)

横浜創英中学・高等学校教諭。学校組織の在り方をめぐる探究の途中。NPO、横浜市公立小学校、企業等で働き、現職。餃子とキャンプ、娘と愛犬が日々の癒し。共著『描いて場をつくるグラフィック・レコーディング: 2人から100人までの対話実践』学芸出版社(2021)

インタビュワー : 殿村英嗣(との)

生まれも育ちも大阪。大学院修了後、大阪府公立小学校で勤務5年目。子どもとともにつくる理科授業を試行錯誤中。今春から働きながらまたまた大学院進学。教師の学習環境をデジタルと物理の世界から研究中。ホワイトボードミーティング®︎認定講師。

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