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ミスチルの「韻」の数々 (前編)

はじめに

ミスチル公式が25周年ライブの映像をyoutubeにアップしてくれたということで、やっぱミスチルいいなと感じました(こなみ)。そこで(そこでというよりかは単純に文章書きたい欲が湧いてきただけなんですが)今回は、ミスチルのお家芸ともいえる「韻踏み」について、そのすごさをまとめてみました。とはいっても、調べ始めたらかなりの量があったので、前後編に分けて、前編はシングル曲、後編はアルバム曲を載せることにしました。並びは時代順です。それではどうぞ。

CROSS ROAD

(1番Aメロ)Lookin' for love  / 今建ち並ぶ街の中で / 口ずさむ『ticket to ride』/  あきれるくらい 君へのメロディー

4thシングル、4thアルバム「Atomic Heart」(1994年) 収録。初のミリオンセラーを記録し、ミスチルがブレイクするきっかけとなったこの一曲。出だしの一節にぎゅうぎゅうと詰め込まれている。わざとらしいが、これが逆に初々しさを引き出せていて良い

シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜

9thシングル、6thアルバム「BORELO」(1997年) 収録の、言わずと知れた名曲。売上は180万枚を突破し、ノンタイアップシングル歴代1位を記録した。ちなみに売上金はすべて阪神大震災の義援金に充てられている。それでは見てみよう。

(1番Bメロ)ねえ 等身大の情で挑んでるのに / 世間は暗い
(1番サビ)恋なんて言わばエゴとエゴのシーソーゲーム / いつだって君は曖昧なリアクションさ / 友人の評価はイマイチでもShe So Cute / 順番を待ってたんじゃつらい 勇敢な恋の歌

韻を踏むためにbe動詞抜きにするんかい!というツッコミは脇に置いておこう。それもまた一興。

名もなき詩

10thシングル、5thアルバム「深海」(1996年) 収録。ミスチルのシングル史上では「Tomorrow never knows」に次ぐ230万枚の売上を記録した。

(1番Aメロ)ちょっとぐらいの汚れ物ならば / 残さずに全部食べてやる / Oh darlin 君は / 真実を握りしめる / 君が僕を疑っているのなら / この喉を切ってくれてやる / Oh darlin 僕はノータリン  / 大切な物をあげる oh
(1番Bメロ)こんな不調和な生活の中で / たまに情緒不安定になるんだろう? / でも darlin 共に悩んだり / 生涯を君に捧ぐ
(2番Aメロ)どれほど分かり合える同志でも / 孤独な夜はやってくるんだよ / Oh darlin このわだかまり / きっと消せはしないだろう oh
(2番Bメロ)君の仕草が滑稽なほど / 優しい気持ちになれるんだよ / Oh darlin 夢物語 / 逢う度に聞かせてくれ

ダーリン」に合わせて「だーれー」「ノータリン」「悩んだーりー」「わだかまーりー」「ゆめものがたーりー」。ダーリンの底力をこれでもかと見せつけてくる韻の踏み方である。

Everything (It's you)

13thシングル、「BORELO」収録。活動休止直前のシングルで、9作目のミリオン。韻については特に力説するほどでもない。小気味よくさらっとやってのけている。

(2番サビ)STAY 僕が落ちぶれたら / 迷わず古い荷物を捨て / 君は新しいドアを 開けて進めばいいんだよ
(ラスサビ)STAY 何を犠牲にしても / 手にしたいものがあるとして / それを僕と思うのなら / もう君の好きなようにして / 自分を犠牲にしてもいつでも / 守るべきものは / ただ一つ 君なんだよ

ニシエヒガシエ

14thシングル、7thアルバム「DISCOVERY」(1999年)収録。活動休止中に発表された。ライブでよく演奏される曲。

張り付けの刑になったって / 明日に向かっていきてくんだって
Ha ha ha ha / ただじゃ転びやしませんぜって / 非常事態ってやつも歓迎です / さあ Ha ah / ニシエヒガシエ / 必死で 猛ダッシュです

なんか耳触りが良いと思ったらここも微妙に韻を踏んでいたのか!という箇所が、この「ニシエヒガシエ」「必死で猛ダッシュです」。それまでのミスチルの韻は、どちらかといえばわざとらしいものが目立っていたが、ここら辺を境にどうやら何気ない押韻が得意技になってくるっぽい。

下のライブ動画、この00年代中盤の声が個人的には一番好き。

光の射す方へ

16thシングル、『DISCOVERY』収録。

(1番サビ)僕らは夢見たあげく 彷徨って / 空振りしては骨折って リハビリしてん wow wow / いつの日か 君に届くならいい / 心につけたプロペラ / 時空を越えて 光の射す方へ
(2番サビ)僕らは夢見るあまり 彷徨って / 大海原で漂って さぶいぼたてん wow wow / もっとこの僕を愛して欲しいん / 月夜に歌う虫けら/  羽を開いて 光の射す方へ

歌詞をまじまじと見つめるまでは気付かなかったが、1番と2番の同じメロディーの箇所で「プロペーラー」「虫けーらー」と何気ない韻が隠れていた。また、1,2番どちらも「してん」「いい」「プロペ」というように、最後がa音で統一されている。これらは意識しないと発見できないだろう。

余談だが、「大海原で漂って」の後なんて言ってるんだろうと長年の疑問だったが、「さぶいぼ・立てんだ」って言っているの、初めて知った。さぶいぼ=鳥肌ということも初めて知った。無知!

I'll be

『DISCOVERY』収録。後に17thシングルとしてシングルカットされた。ジュビロ磐田から海外移籍した名波浩に贈った曲である。シングル版がI'LL BE、アルバム版がI'll be。個人的にはアップテンポな前者の方が好きだが、この曲、ライブでほとんど歌ってくれない。いつになったら披露してくれるのだろうか。

(1番Aメロ)気が付きゃ勇み足 / そんな日には深呼吸をしてみるんだ 
(2番Aメロ)ピーナッツをひとつ 噛み砕きながら / 飲み込んでしまった想いは / 真夜中 血液に溶けて / 身体中をノックした
(1番Bメロ)街がジオラマみたくみえるビルの最上 / 形を変えながら飛ぶ雲が見えるかい? / 今日はゾウ 明日はライオンてな具合に / 心はいつだって / 捕らえようがなくて / そんでもって自由だ
(2番Bメロ)いつも心にしてたアイマスクを外してやればいい / 不安や迷いと無二の親友になればいい / 旅立とう 明日は無いぞってな具合に / 胸に刻みながら / 一歩ずつ進んで / いつだって夢中だ
生きてる証を時代に打ち付けろ / 貧弱な魂で悪あがきしながら / 何度へましたっていいさ / 起死回生で毎日がレボリューション / 人生はフリースタイル / 孤独でも忍耐 / 笑いたがる人にはキスを / そしていつだって I say yes. I'll be there

「(今日)はゾウ明日はライオンてな具合に」と「(旅)立とう明日は無いぞってな具合に」と、1番と2番の同じメロディーの部分で韻を踏んでいるのが絶妙。一体どんなこと考えていたらこんな押韻が思いつくのか。あとは「(フリース)タイr」「(忍)」も一応拾ったが、こんなところまで挙げていたらむしろ韻に失礼なのでは思うくらい自然だ。

youthful days

21stシングル、10thアルバム『IT'S A WONDERFUL WORLD』(2002年) 収録。

繋いだ手を放さないでよ / 腐敗のムードをかわして 明日を奪うんだ

u-a-iの押韻。しょぼい(当社比)、が、気づいてしまったので載せないわけにはいかない。あとはこじつけかもしれないが「tsなーいだー」「はなさなーいでよー」、「[kawa]ーして」「[a]ーすを」の計4箇所も全てa音で統一されており、聴いていて気持ち良い言葉の並びになっている。

しるし

29thシングル、13thアルバム『HOME』(2007年) 収録。『14才の母』主題歌。近年の代表曲。といってももう10年以上前か。直近のシングル『君と重ねたモノローグ』が発売されるまでは、シングル最長(7分10秒)だった。

(1番サビ)ダーリンダーリン / いろんな角度から君を見てきた / そのどれもが素晴らしくて / 僕は愛を思い知るんだ / 「半信半疑=傷つかない為の予防線」を / 今、微妙なニュアンスで / 君は示そうとしている
(2番サビ)ダーリンダーリン / いろんな顔を持つ君を知ってるよ /  何をして過ごしていたって / 思い出して苦しくなるんだ / カレンダーに記入したいくつもの記念日より / 小刻みに鮮明に僕の記憶を埋め尽くす
(ラスサビ)泣いたり笑ったり / 不安定な想いだけど / それが君と僕のしるし

「名もなき詩」であれほど”ダーリン”について韻を踏んだ10年後、同じ”ダーリン”を題材に、より成熟した韻踏みを見せてくれるミスチル。素晴らしい。

GIFT

32ndシングル、15thアルバム『SUPERMARKET FANTASY』(2008年) 収録。NHK北京オリンピック・パラリンピック放送テーマソング。このときミスチルが唯一紅白に出場した。毎年出ろや。という話はさておき、この曲はファンの間ではミスチル史上の押韻最高傑作との呼び声も高い。さっそく見ていこう。主に4箇所ある。

(1番)一番きれいな色ってなんだろう? / 一番ひかってるものってなんだろう? / 僕は探していた 最高のGIFTを / 君が喜んだ姿をイメージしながら
『本当の自分』を見つけたいって言うけど / 『生まれた意味』を知りたいって言うけど / 僕の両手がそれを渡す / ふと謎が解けるといいな / 受け取ってくれるかな
(2番)地平線の先に辿り着いても / 新しい地平線が広がるだけ / 「もうやめにしようか?」 自分の胸に聞くと /「まだ歩き続けたい」と返事が聞こえたよ

一つ目。ファンの間では有名な押韻。「GIFTを」「聞くと」はまだ分かる。「時ふと」って何!?まったくわざとらしくないところが芸術的。これ以外にも、「なんだろう?」×2、「言うけど」×2など、序盤からアクセル全開だ。耳ざわりが非常に良い。

(1番Bメロ)長い間 君に渡したくて / 強く握り締めていたから / もうグジャグジャになって 色は変わり果て / お世辞にもきれいとは言えないけど

ただただ気持ち良い。

(2番Bメロ)知らぬ間に増えていった荷物も / まだなんとか背負っていけるから / 君の分まで持つよ  だからそばにいて / それだけで心は軽くなる

「nもーつも」「もーつよ」で韻を踏んでいて、さらに「いて[yo]」で語尾を全てo音に調えている。

(2番サビ)果てしない旅路の果てに / 『選ばれる者』とは誰? / たとえ僕じゃなくたって/ それでもまた走っていく 走っていくよ /
降り注ぐ日差しがあって / だからこそ日陰もあって / そのすべてが意味を持って / 互いを讃えているのなら / もうどんな場所にいても / 光を感じれるよ

そして2番サビ、畳み掛けるようにして歌われる「誰?」「たって」「あって」「あって」「持って」。もはやここまでくると韻と意識するまでもないレベルである。韻がインフレしている!!

HANABI

33rdシングル、『SUPERMARKET FANTASY』収録。『コード・ブルー』主題歌。ミスチルといえばこの曲という人も多いのではないだろうか。ライブで半音下げて歌っていた時期もあったが、最近は声が復活して原キーに戻っている。さて、ここにも一聴しただけでは韻とは分からない、微妙な韻がある。そう、さらっと控えめに押韻をこなしているのが逆に好感度高い。以下の通りだ。

君がいたらなんていうかなぁ / 「暗い」と茶化して笑うのかなぁ / その柔らかな笑顔に触れて / 僕の憂鬱が吹き飛んだらいいのに
決して捕まえることの出来ない / 花火のような光だとしたって / もう一回 もう一回 もう一回 もう一回 / 僕はこの手を伸ばしたい / 誰も皆 悲しみを抱いてる / だけど素敵な明日を願っている / 臆病風に吹かれて 波風がたった世界を / どれだけ愛することができるだろう?
さよならが迎えに来ることを / 最初からわかっていたとしたって / もう一回 もう一回 もう一回 もう一回 /  何度でも君に逢いたい

himawari

37thシングル、19thアルバム『重力と呼吸』(2018年) 収録。映画『君の膵臓をたべたい』主題歌。シングルでいえばHANABI以来、10年ぶりの「一回聴いただけでビビっとくる名曲」だと個人的には思う。バンドサウンドが前面に出た、ミスチルの最新の方向性がよくわかる曲である。

(1番Aメロ)優しさの死に化粧で / 笑ってるように見せてる / 君の覚悟が分かりすぎるから / 僕はそっと手を振るだけ
(2番Aメロ)想い出の角砂糖を / 涙が溶かしちゃわぬように / 僕の命と共に尽きるように / ちょっとずつ舐めて生きるから

「優しさの死化」「想い出の角砂」。ou音で韻が踏まれているが、そんなことはどうでも良いほどの強烈な表現。

(1番サビ)暗がりで咲いてるひまわり / 嵐が去ったあとの陽だまり / そんな君に僕は恋してた

ひまわり」「ひだまり」。曲の雰囲気を壊さない程度のあっさりとした韻の踏み方。とても良い。

余談だが、ひまわりといえば、一面に明るく咲き誇っている情景を真っ先に想像してしまうが、「暗がりで咲いてるひまわり」というのが、『キミスイ』の世界観をあらわしている。独特の言葉選び。

(2番サビ)違う誰かの肌触り / 格好つけたり はにかんだり / そんな僕が果たしているんだろうか?

2番サビも1番同様に韻を踏んでいる。

(Cメロ)諦めること / 妥協すること / 誰かにあわせて生きること / 考えてる風でいて / 実はそんなに深く考えていやしないこと / 思いを飲み込む美学と / 自分を言いくるめ / 実際は面倒臭いことから逃げるようにし / 邪にただ生きている

そして怒涛のCメロ。ミスチルお得意の畳み掛け。ぐっとくるCメロ。

終わりに

以上になります。後半になってくるとあまりの多さに疲れてきたので、あからさまなもの以外は拾ってません笑。

わざとらしい韻から無意識な韻まで幅広くあり、なかなかのやり手ですね。アルバム曲は後編で!

 

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