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Mr.Childrenニューアルバム『SOUNDTRACKS』感想とレビュー

こんばんは!!

2020年の終わりまで1時間を切っていますが、ミスチルのニューアルバムの感想を書きましたのでご覧ください!アルバム全体の特徴→各曲レビューの順です。

アルバムの特徴

大きく3点あると思います。

その1 音の立体感

兎にも角にも、まずはこれでしょう。今回ミスチルは、『Q』以来20年ぶりの海外レコーディング(ロンドン・LA)を行いました。この発案者がギターの田原さんだったことから、セルフプロデュース以降、バンド全員で試行錯誤しているんだなって思いましたね。

共同プロデューサーにスティーヴ・フィッツモーリス氏を迎え制作。全然知らなかったんですけど、この人U2やサム・スミスのミックスを担当している世界的に有名な人らしく、直近だと宇多田ヒカルの活動再開時のアルバムのミックスも担当しているっぽいですね。

一つひとつの音が浮かび上がってくるような、そんな印象を受けました。ストリングスが多用されているもののあくまで骨格はバンドサウンド。小林武史のプロデュースだとどうしてもバンドの音が後景に退いてしまい、かといってセルフプロデュースに完全移行した『重力と呼吸』はやや音に物足りなさも感じたと。そんななかでこんなバケモンみたいなサウンド聴いてしまったら…もうそれまでの曲の音なんて聴けないですわ(そんなこと言わない)。でもそれくらい、音楽には全くの素人の僕でも肌でわかるくらい、立体感のある音に仕上がっていました。新境地ここに開かれり。

その2 桜井さん自身の心情の変化

ミスチルのメンバーもみんな50歳です。桜井さんは今回様々なインタビューで「終わり」を意識するようになったと語っていました。以前、ファンクラブ会報で「次作は深海みたいなアルバムになる」という発言もあり(記憶違いだったらごめんなさい)、それが強く意識された”コンセプトアルバム”になっているのではないでしょうか(各曲レビューでも書いてます)。「日常を慈しむ」「"終わり"というある種ダークな面に意識を向けている」という点で、『深海』と『HOME』を足して2で割ったようなイメージです。

前々作『REFLECTION』のときくらいから「いつまで歌い続けることができるんだろう」という意識が生じてきた桜井さん。だからこそ23曲をとりあえず出し惜しみせず出そうという方向に走り、前作『重力と呼吸』では「バンドの力強さ」を前面に押し出したという流れの延長線上にある今回のアルバム。新たな可能性を模索して海外レコーディングをし、曲もコンセプトに合う10曲に絞るなど、かなり洗練されたアルバムであるのは間違いないです。

その3 時代の変化と楽曲の変化

今回は初聴で「Bメロがない」「イントロがない/あっさりしている」「Cメロがない」など、おや?と思う曲が多かったです。サブスク全盛の時代、ミスチルもついにトレンドには抗えなくなってきたのかな?と感じましたが、インタビューを読むに桜井さん自身、そうした時代の変化は敏感に感じ取っているようでした。

それでは、以下各曲レビューをしていきたいと思います!

1.DANCING SHOES

アルバム発表時点で数少ない未発表曲の1曲目、どんな曲なんだろうとワクワクしていたら期待を裏切りませんね。不穏な幕開けです。ミスチルのアルバムの1曲目、3作に1回はこういう系の曲だなと。「DISCOVERY」・「I」・「言わせてみてぇもんだ」あたりですね。度肝抜かれました。

歌詞に目を向けてみると、「良くも悪くも注目浴びればその分だけ叩かれる」「流行り廃りがあると百も承知で そうあえておれのやり方でいくんだって自分をけしかける」「四半世紀やってりゃ色々ある」といったセンテンスは明らかに桜井さん自身を投影していますね。

ミスチルのお家芸といえる韻踏みが健在なことも確認できました。1番と2番で同じ箇所を同じ母音で揃えているのが技巧的です。

 1番 後退りしたり→地団駄踏んだり→なにこのくだり
 2番 サルバドール・ダリ→ってちょっとグロくない?→普通じゃない感じがいい
 1番 その両手に繋がれた→タンバリン代わりにして
 2番 その両足にかせられた負荷に抗いステップを踏め

どのセットもすべてaiで揃っていますね。耳触りが心地よいです。

2.Brand new planet

流れとしては『SENSE』の「I」→「擬態」を連想します。ここからアルバムの本開幕。浮遊感のある音色で肌寒い朝に歩きながら聴くと良さげです。「Documentary film」とならび本作の2本柱といえるでしょう。

この曲、Bメロがないんですよね。演奏も1番・2番・大サビで微妙に変化させていて盛り上がりが表現されています。

同じような歌詞でも、次のように微妙に変えているのが今までにはあまりなかった新しさがあるかなと思いました。

1番 静かに葬ろうとした憧れを解放したい
大サビ この手で飼い殺した憧れを解放したい

さて、歌詞といえばやはり「可能”星”」↔︎「新しい”欲しい”(星)」のセンスが光ります。曲名を直訳すると「真新しい惑星」。なるほどこういうことだったんですね。素晴らしい。前作『重力と呼吸』ではあまりしびれる歌詞がなかったので、そんないい歌詞はもうポンポン作れないかなと思っていたところでコレ。すみませんでした。

あとどうでもいいんですが、2番の「頭を掠める現実逃避」の「hあ〜たまを」の歌い方、ツボです。

3.turn over?

4番以降重めの曲が続くということもあり、3番にこういった曲を配置するのはいいアクセントになっているなと感じました。

似たタイプの曲としては、最近だと「運命」、より遡れば「Replay」など初期の曲たち。ミスチルのシングルって(というかシングルに限らずですが)5分超えるヘビーな曲が割と多くて(僕はその説教じじいくささを含めて好きなんですが)、そのなかでふとしたときにサクッと聴ける曲があるのはとても貴重ではないでしょうか。なんせ3:25という異例の短さ。軽やかで爽快感あるメロディーが初期のミスチルを彷彿とさせる、そんな"掌サイズ"の一曲です。

曲名についてですが、「なんでクエスチョンマークがついてるの?」という疑問、正直分からないのでここでは触れません。ご意見お聞かせください。

あとどうでもいいんですが、2番の「どこまでも透き通っていて」の「どこま”で↑”」の歌い方、ツボです。

4.君と重ねたモノローグ

シングル最短(3:25)からシングル最長(7:32)という落差。緩急がたまりません。ただ、最長とはいってもアウトロは別物と言っていいと思うので、一粒で二度おいしい楽曲となっています。曲本体は、3月に聴いたときは「水上バス」っぽいなと思った記憶があります。アレンジで特におお!って思ったのは、最後の数十秒くらいでドラムがフェードアウトして曲が終わりかと思ったらまたドラムが復活して。遊び心たっぷりなアレンジです。

映画『ドラえもん』の主題歌オファーが来たとき最初に書き上げたのはこっちだったらしいですね。映画は観てないですが、おそらく僕=のび太、君=ドラえもんですかね。「君は僕の永遠」というフレーズで締めくくるのが素敵です。

あと曲名、「君と重ねた↔︎モノローグ(独白)」という反対の言葉をつなげるってなんか「Mr↔︎Children」っぽくないですか?

5.losstime

!?!?!?『深海』感溢れる一曲。3:25 → 7:32 → 2:27と、これまた緩急の鬼すぎる。痺れます。残された人生がわずかな老婆を描いた曲。次の曲とセットで聴くとじーんと響きます。

6.Documentary film

2本柱の2本目です。どっちが好きかと言われれば、僕はこっちです。MV抜きで聴くとブラプラだと思うんですが、あの短編映画のようなMVを見てしまうとそれ込みでこっち派ですね。このMV、冒頭のアニメーション映像を見て、そのような演出が多用されるライブを思い出してしまいました。コロナが収まってライブ行きたいですね。あと最初のナレーションがACのCMみたいだなとも思いました。

何せ音がいい。「くどい」と「壮大」のギリギリ境界を攻めるストリングスが◎。間奏のギターもいい味出てます。

歌詞に目を向けると

希望や夢を歌った BGMなんてなくても 幸せが微かに聞こえてくるから そっと耳をすましてみる

これ、「ひびき」の

幸せなんか そこらじゅういっぱい落ちてるから 欲張らずに拾っていこう

を思い出しました。

あとはやはりここでしょうね。

枯れた花びらがテーブルを汚して あらゆるものに「終わり」があることを リアルに切り取ってしまうけれど
そこに紛れもない命が宿ってるから 君と見ていた 愛おしい命が

こんな生々しい歌詞を書くんだという驚き。僕自身はまだ大学も半分あるし、人生これからなのでこの境地に達していません。いずれ分かる日が来るのかな。あーでも高3の今頃これ聴いてたら感傷的になってたんだろうな。などと思いつつ。ミスチルは10年先も20年先もずっとそばにいてほしいものですが…いつまで聴けるんでしょうね。

そんな名曲ですがただ1つ文句をつけるとするならば…
プレミア公開は存分に楽しませてもらった一方、これはアルバム発売日までとっておいてよかったんじゃないか、と。The song of praiseのTV先行公開も含め、アルバム全10曲中7曲が発売前に既出だったんですよね。この2曲をとっておいたら衝撃度はもっと高かったのではないかと思います。アルバムのlosstime → Documentary filmという流れがファインプレーすぎるので尚更。ただミスチル側も、恐らくはコロナ禍のなかでファンに少しでも楽しんでもらいたいという配慮があってこそのことだと思う(だから怒涛のテレビ出演もしてくれたんでしょう)ので、その好意はしっかりと受けとめたいと思います。ミスチルありがとう。

(追記)紅白ド迫力でしたね〜。12年ぶりの出演で過去の代表曲でもなくタイアップやシングル曲でもなく、"ただの"いちアルバム曲をぶっこむ勇気ですよ。格が違う。たぶん今年出演したのはあくまでコロナ禍におけるライブの代替策でしょうから、まさに永久保存版の紅白でした。

7.Birthday

後半戦の幕開けを告げる曲。ネットでの評価はイマイチな感じもあるのですが個人的には最近よく聴いています。ドラムの叩き方が1番・2番・大サビで刻々と変化していて、未来に向かって離陸しようとする前向きな印象を受けました。バンドの剥き出しで力強いサウンドに、最後はストリングスも加わってgood。

8.others

レモンサワーのCMで何度も聞かされたあのフレーズ、、、冒頭の一節だったんかい!という。しかもしっとりしたラブソングだと思っていたのに、まさかの明らかに不倫らしき描写があるというギャップ。実は歌詞がどぎつい「fantasy」をBMWのCMに平然と提供した過去を思い出します。音的には「つよがり」っぽさを感じました。歌詞は大人すぎて僕には理解できません() アウトロがいい味を出しています。

9.The song of praise

絶対ZIP!よりもnews zeroの方が似合うだろ!という感想はさておき、これもいきなりサビから始まるイントロなしの曲。ほぼバンドサウンドのみであり、コバタケが絡むと壮大なアレンジが加えられていたんだろうなとは思いつつ、これはこれでいいなと。温かさで包まれる音色です。

それと、Cメロを渇望していた僕はミスチル特有の怒涛の詰め込み式のこのCメロに歓喜しました。そう、Birthdayやブラプラ、ドキュフィルどれもCメロなかったのでちょっと残念だったんですよね。いやぁいいわこれ。

さて歌詞です。2点あって、まず一つ目に「毛頭」「論外」。この言葉の響きがいいですね。こんな直截的な単語を今までミスチルが使っていたイメージがあまりなかったので割と衝撃でした。次に「僕が立っている居場所を愛していく」の枕詞が「憎みながら」→「呪いながら」→「嫌いながら」と微妙にずらしているんですよね。ブラプラでも同じような手口を使っていましたがやはり今までにはあまり見られなかった傾向かなと。

10.memories

いつバンドが入るんだろう?最後ブワーーーっと入ってくるのかな?と待っていたら最後までストリングスやピアノだけだった、という肩透かしを食らった曲。

歌詞を見てみましょう。

ねぇ誰か教えてよ 時計の針はどうして ずっと止まっているのだろう 約束の時間の前で
あの日2人で見た 眩しい夢のカケラ 色褪せずに キラキラ光ってるのに
固く目を瞑って 今手繰り寄せる どこまでも美しすぎる記憶
心臓を揺らして 鐘の音が聴こえる 僕だけが幕を下ろせないストーリー

長々と引用しましたが、これ「この世からあの世へ旅立っていく狭間」を漂っている人の気持ちを表現した曲なのかなと感じました。今回のアルバムのコンセプトも考えると合点がいきました。最後を飾るにふさわしい美しい曲です。

さて、

あの日2人で見た 眩しい夢のカケラ

という歌詞を見た僕は「桜井さん”夢のカケラ”という言葉好き説」を思いつきました。

パッと思いつくだけで2つあって、まず「innocent world」には

変わり続ける 街の片隅で 夢のかけらが 生まれてくる oh 今にも

という歌詞があり、「Starting Over」冒頭の元々の歌詞はたしか

飛び出した夢のカケラを 一つひとつ拾い集める

だった気がします。完全な思いつきなのでどうでもいいですけどね笑。

終わりに

以上!

僕個人としては、コバタケ流アレンジとバンドサウンドがうまく調和されていろんな方向性の曲が詰まった『REFLECTION』が最高傑作だとは思っていて(多分それは僕がまだ人生経験が浅い若者ということもあるんでしょうけど)、ミスチルもまだ老け込んで欲しくないなという気持ちは強くあるのですが、完成度でいうと過去イチの傑作ではないかなという感想です。次作も海外でやるのか(やらなそうな気はする)、新たな展開が待ち受けているのか。今後に期待!!


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