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自治体で行なった犬の殺処分の理由(2022年度)
前回の記事でお伝えしたように、年々動物保護施設へ収容される犬の数は減少しており、さらに返還・譲渡の数は増加傾向にあります。その結果、現在の殺処分数は動物保護施設へ収容された数のうちの約1割となっています。詳しくは以下の記事を参照してください。
このように割合および絶対数は減少傾向にあるものの、残念ながらいまだ殺処分自体は無くなっていません。そこで、殺処分に至ってしまう理由はいったい何なのかについて調べてみたいと思います。
その前にまず、どのような経緯で犬が動物保護施設に収容されるかについてみてみたいと思います。以下のグラフは2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日)の我が国の動物保護施設に収容されるに至った犬を①飼い主からと②所有者不明に分類したものです。動物保護施設へ収容された犬のうち88%(19,816頭)は所有者不明、12%(2,576頭)は飼い主からでした。
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次に返還・譲渡された犬の内、成犬と子犬で違いがあったのかを調べてみたいと思います。一般に成犬の方が譲渡が難しく、子犬の方が譲渡が容易ではないかと推察できるかと思います。
以下のグラフは2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日)の我が国の動物保護施設に収容されるに至った犬を①成熟個体(成犬)と②幼若個体(子犬)に分類し、さらにそれを⑴返還・譲渡と⑵殺処分に分類したものです。幼若個体の定義は、主に離乳していない個体を示しており、また自治体によっては成熟個体と幼若個体を分類しておらず、その場合は全て成熟個体の数に入れています。
その結果、動物保護施設に搬入された成犬では約90%が返還・譲渡となった一方、子犬では81%にとどまっていることが分かりました。これは、子犬の方が返還・譲渡が多いという予想と異なる結果となっておりました。
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環境省の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」では殺処分に至った理由を3つに分類しています。それは、①譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)、②①以外の処分(譲渡先の確保や適切な飼養管理が困難)、そして③引取り後の死亡です。2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日)に我が国の動物保護施設に収容され殺処分を実施された犬の理由をグラフにまとめてみました。
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その結果、殺処分の理由第1位は譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)、第2位は引取り後の死亡、第3位は①以外の処分(譲渡先の確保や適切な飼養管理が困難)という結果でした。殺処分の理由の内19%は「引き取り後の死亡」ということで、我々がイメージする殺処分ではないことが分かりました。また、殺処分理由の第1位である「譲渡することが適切ではない」には治癒の見込みがない病気も含まれており、殺処分も止むを得ないと思われる事例も含まれていました。
今後、殺処分数を減少させるためには、まず動物保護施設に持ち込まれる犬の数を減らすことが考えられます。特に、無計画に衝動的に飼育を始めて飼いきれなくなる犬を減らすことが重要であると思われます。この点は、ペットショップやブリーダーで安易に子犬を販売しないことが必要であり、さらに飼い主にも子犬を買う前に自治体や獣医師会などが主体となって十分な教育を行う必要があると思われます。
また、動物保護施設に持ち込まれた後では、如何に「譲渡先が確保できなかった」という理由での殺処分(理由②に該当するもの)を減少させるかが課題であると思われました。今回理由が判明しませんでしたが、一般に譲渡されそうな子犬の殺処分率が高い理由(パルボウイルスなどの感染症で死亡とか?)が判明すると何らかの対策が可能かもしれません。
今後も、1匹でも多くの犬が飼い主の元で幸せに天寿を全うできるように活動していきたいと思いますので、応援の程よろしくお願い致します。
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