細(さざれ)

さざれ石さざれさざれて無となれば夜風となって耳を吹き過ぐ
さわらぬ君に呪いなかれと呟いてわずかに震う夜の水源
恭順をしずかに海へにがしたりさざんざざざと君にかかわる
「くん」という敬称を持つ僕らふたり渋谷PARCOの影に抱きあう
直腸に走る痛みのそれほどに君を嬲れりその末端も
さざやかに、こんな言葉はないけれどさざやかに歩きたくなったの
果てには海……まっすぐ行けば海よりも先に行き着くブーランジェリー
She sells sea shells by the seashore.ねころべば陸のすべてはskyshore(空の岸辺)だ
体温と同じ温度の水ならば溶かすだろうかヒトの弱さを
さざれよ、と唇が言う おそらくはこなごなだったときの夜の名
この躯体さざれてゆけば海へそそぐ海は蒸発して君に降る

あみもの第四十号に投稿させていただいた11首連作です。ご感想いただけると嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?