わたしは今まで、居心地がいいコミュニティというものに属したことがなかった。 学生時代もそうだし、社会人になってからも、趣味の仲間うちでもだ。 今夜は、久しぶりに小説教室に参加した。 教室では、生徒が書いてきた何万字もの作品を読んで一人ひとり感想を言う。 所詮は素人が書くものだ。プロとは比べ物にならないし、こんなものを読んでいる時間があるのなら、正直プロのものを読みたくなってしまう。 はじめのうちは、作品を隅々まで読んでいた。腐してやろう、という気持ちもないわけではなかった
まさか四十にもなって、マクドナルドで夜を越すなんて思ってもみなかった。 ゼミの飲み会が終わり、気がつくと若い同級生たちはどこかに消え、ナカタさんとふたり、私は夜中のマクドナルドになだれ込んだのだった。 五十のナカタさんは、フライドポテトのLを三つも頼んでトレーに全部開けて、どうぞ、なんて言うもんだから、シナシナとカリカリが一緒になってしまいましたよと文句を言うと、ああすみませんと笑っていた。 鉛筆みたいな長いポテトをつまんで頬張ると、あ、これは揚げたてですと言って口
二十代中盤のころ、わたしがよく遊んでいた男性の話である。 彼は当時、東京駅でお土産を売る仕事をしていて、よく思われたかったわたしは、似合ってもいない麦わら帽子をかぶってそのお土産屋でよく饅頭を買った。 数十分後に「◯◯さん(わたし)ありがとう、まだ近くにいる?」というラインがきたので、よく思われたかったわたしは「大丈夫だよ、仕事がんばって」とだけ返信をした。 彼に対しては、重荷になりたくないというのがどうもわたしの根底にあるようだった。 二十代のわたしは、まわり
前職で知り合った同僚のおばさんと、たまにLINEをする。 彼女からわたしに連絡を寄越すときはたいてい、職場でなにかがあったときだ。 上司との定期面談で新しい仕事を振られた。ズームで毎月行われる全社員集会で会社の業績があきらかに傾いていることがわかった。人事部のあの人がミーティングで堂々と社員の個人情報をひけらかしていた、などである(これだけ聞くとけっこうやばい会社に思えるかもしれない)。 以前わたしが勤めていた職場というのは、本社とはべつに非常にこぢんまりとした