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リカヴィトスの丘

その日はカラッと晴れた、過ごしやすい日だった。
仕事で1ヵ月ほどヨーロッパにいる関係で、休日はできるだけ色んな所に行こうと思って、アテネまで足をのばした。

シンタグマの広場は活気があるのかないのか、人だけが集まっている一方でそのエネルギーは分散されていた。
正直に言うと、ギリシャは一昔前の観光業で流行ったところで経済破綻をしたイメージしかなかった。関東でいうと鬼怒川温泉のような、みんな知っているけれどわざわざ今行こうとはしないような。

僕は、知らない街に行くと必ず見渡すことから始める。高台や近くのタワーのようなところから先に訪れることにしている。
短時間でもなんとなくその街を知った気になるし、少しばかり滞在する場合でもこれから訪れるであろう新しい出会いに思いを馳せる時間を取れるので満足度が上がる。
今回も例によって、パルテノン神殿よりも先にアテネの街を見渡したいと思い、歩道に沿って永遠と車が縦列駐車されている坂道を登ってゆき、リカヴィトスの丘へ向かった。

せっかく休憩なしでリカヴィトスの丘のロープウェイの前まで登ってきたにも関わらず、次のロープウェイが出るのは20分後だった。
仕方なく、ご丁寧にロープウェイ前にカフェがあったので、そこで休憩することにした。今となっては名前を忘れてしまったけれど、コーヒーと氷をガシャガシャと混ぜたギリシャ名物のアイスコーヒーのようなものをもらった。

シンタグマ広場に比べると人も少なく、どちらかというと猫の方が多い。
看板猫と相席して休憩した後に、ナザールボンジュウが並んだお土産売り場をプラプラとしたらロープウェイの時間に。

殆どトンネルの中を登ってゆくロープウェイから降り、洒落たレストランを横目に階段を上ってゆくと、教会の目の前に広がった石畳からアテネが一望できた。
ここが首都とは思えないような眺めだった。
どこを見るでもなく、目下に広がる景色の全てに薄く焦点を当てるようにして景色を楽しむ。

ロープウェイを降りると、カフェの猫が擦り寄って来た。
「お前はいいところに住んでるんだぞ。」

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Haru
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