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Wrath of Noahの”Wrath of Noah”を解説します

2021年12月、Wrath of Noah の1stアルバム”Wrath of Noah”が、遂にCDとなってリリースされた。

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このnoteは、そのリリースを記念したセルフライナーノーツだ。

個人的な話ではあるが、ベーシストとして、作曲家として、作詞家として、そしてプロデューサーの1人として、このアルバムに参加した僕は、「曲を生み出す面白さ」を知ってしまった。「表現する面白さ」を知ってしまった。

Wrath of Noah に限らず、MELT4 など色んなバンドに参加しているが、全てのバンド活動の原体験は、このアルバムの制作過程にある。そんな特別な1枚だ。

特別な1枚だからこそ、かなり丁寧に解説を書いた。ぜひCDを手に入れて、曲を流しながら読んでいただきたい。

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Wrath of Noah は元々、早稲田Sound Workin’ Shopというバンドサークルのメンバーで組まれたバンドだ。

ギターのMAATHII(以下「マーティー」)ボーカルのHAYA SEA(以下「林さん」)が1995年生まれの同級生で、ドラムのふぉれすとりばー(以下「森川さん」)は1992年生まれの最年長、ベースのHARU(筆者)は1998年生まれの最年少といった4人で構成されている。

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(左からマーティー、筆者、林さん、森川さん)

確か2017年の秋か冬だったと思う。マーティーが「スラッシュメタルバンドやりたいんだよね」と言い、この4人が集められた。マーティーがいくつか曲を作っていて、僕も曲作りを初めた頃だったので、2人で曲を出し合い、2018年の春に4人での活動を始めた。

その矢先、2018年4月から、ボーカルの林さんが仕事の都合で北海道の北見市に引っ越すこととなった。それ以来、彼が帰省するお盆と年末年始が、このバンドの主な活動時期となっている。

この1stアルバム「Wrath of Noah」は2018年の夏に楽器陣の大部分をレコーディングし、その後何度かの歌録りやアレンジを経て、2020年11月15日にデジタルリリースされた。そして約1年後の2021年12月、遂にCD盤としてリリースされた。

何しろ森川さん以外の全員が、人生初のレコーディングである。ドラムとボーカル録りは、主に僕が引っ張る形でDIYで行ったが、勝手が分からず無理なスケジュールを組んでしまったり、お互いの経験不足ゆえの衝突も繰り返した。

それでも色んな方々のサポートのおかげで、なんとかリリースに漕ぎ着けることができた。

ミキシングとマスタリングは、兼ねてより仲良くしていただいている、最強のメタルコアバンドSable HillsのRictさんにお願いした。

ギターとベースの録音も彼の機材を借りて行い、厳しいダメ出しと励ましを受けながら、いいテイクが録れるまで何度も弾き直した。鉄壁のリズムギターと、それを後押しする強靭なベースを録れたのは、間違いなく彼のおかげだ。

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人生初レコーディングがRickさんとの作業だったのは、後の大きな財産となった。録り音にシビアなレコーディングを経たからこそ、MELT4など他のバンドでのレコーディングでも、とことんシビアに音を聴き、良いテイクが録れるまで一切妥協しない姿勢が身についたと思う。

そしてアートワークは、ぷにやかたわちこまるさんに描いていただいた。全て手書きの絵で、「Wrath of Noah」というコンセプトを、見事に形にしてくださった。

着色された完成版が届いたときの感動は、いまだに忘れられない。下手な音源を作ってしまったら、このジャケットに負けてしまう。そう思って、一層レコーディングにも気合いが入った。

おかげさまで最高の7曲を、最高のクオリティでリリースできた。改めてこの場を借りて、心からの感謝を申し上げたい。

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1. God Buster

作曲:HARU
作詞:HAYA SEA

記念すべきWrath of Noahのデビュー曲であり、アルバムのリードトラック、つまり代表曲である。

僕の人生初作曲、林さんの人生初作詞、バンドとしての初リリースなど、初尽くし。全てはここから始まったとも言える、大切な1曲だ。

メタルのリフを作りたいとギターを持ったとき、自然とイントロのリフが出てきた。今聴いても「超かっけえ!」と思える最高なフレーズだと思う。そこに乗る林さんのボーカルラインも素晴らしい。初期衝動は本当にすごい。初期衝動、万歳。

個人的な最大のハイライトは、森川さんのドラムだろう。一発録りのテイク2で、修正は一切なし。あの速さ、あの手数のドラムをたった10分弱で録ったのだ。
あまりにも凄まじかったあの瞬間は、生涯忘れることはないだろう。

2. Immortal Diver

作曲:MAATHII
作詞:HARU

マーティー初作曲の曲だ。デモを初めて聴いたとき、無条件に「勝った…!」と思った。何に勝ったのかは分からないが、とにかく勝ったのだ。後にこの感覚を「優勝」と呼ぶのだと知ることとなる。

イントロからメインリフ、AメロBメロからサビ、中間パートからのギターソロ、そして圧倒的優勝のツインリードを経て最後まで突っ走る。王道にして一切の隙がない展開は、本当に見事だ。

レコーディングでは、森川さんの凄まじすぎる一発録りに触発され、ベースも一発録りで弾き切った。あの5分間は、ものすごい集中力だったと思う。このアルバムでのベースプレイの中では、1番のお気に入りだ。

3. Will Never

作曲:MAATHII & HARU
作詞:HARU

マーティーと僕の初の共作。Aメロのリフをマーティーが持ってきて、イントロとサビのリズムを僕が思い付き、合体させて完成した。

この曲を作ったとき(2018年頃)は、比較的キャッチーなスラッシュメタルだなぁくらいに思っていたが、改めて今聴くとジャパメタでもありそうで、ベイエリアにもありそうで、クロスオーバースラッシュでもありそうな、一口では括れない面白い雰囲気の曲だと感じる。

韻を踏みまくってる林さんのマシンガンのようなボーカルと、森川さんの怒涛のツーバス連打が気持ちいい。だがライブではかなり体力を持っていかれるので、演奏後にはMC必須。

4. Psycho Inserter

作曲:MAATHII
作詞:HAYA SEA

鬼のリズム押し曲。Whichlyに近い雰囲気がありつつも、サビのリフのお祭り感というか、狂人じみた雰囲気が、曲のカラーを決定付けた。マーティーのこういうリフを作る感じ、羨ましかったりする。

歌詞は実はかなりドラマチック。歌い出しは”Restricted-18 games enraptured my heart”なのだが、つまり”そういうこと”だ。壮大なR18の世界観を描いている。

中間パートの大きな落としは、各メンバーの絶好の遊び場となっている。林さんは色んなテイストのスクリームを出し、森川さんは全部パターンの違うフィルインを繰り出し、僕のベースは不協和音といい感じの和音を行ったり来たりしていて、飽きがこない展開に仕上がったと思う。

5. Suicide

作曲:MAATHII
作詞:HAYA SEA

Wrath of Noah 史上最速のチューン。「速え!強え!かっけえ!」と言いながら、日々優勝を重ねているタイプのヲタクたちからは、絶大な支持を得ている1曲だ。ラスノアメンバー4人も、もちろんそのヲタク達の一部である。

スウェディッシュデスメタルの影響をモロに受けたメインリフ、あのリフが嫌いな人とは僕は仲良くなれないだろう。徐々にボルテージが上がって辿り着いたサビ、不気味な音階の上に乗るキャッチーなシンガロングパートがあり、「怖い音楽なのに楽しい」という、デスラッシュの旨みを閉じ込めたような展開。やっぱり今日も優勝せざるを得ない。

サビ直前の”I was broken, we can’t see Messiah” のボーカルラインは、実は想定とはリズムが違うミステイクだったが、そのミステイクが異常にカッコよかったので、そのまま採用した。

鉄壁のダウンピッキングと、爆速で突っ走るドラム、うねりまくるベースライン。全パートに聴きどころがあるので、注目して聴いていただきたい。

6. Killing Bull Demon

作曲:HARU
作詞:HARU

「牛悪魔殺し」。丘の上の迷宮で暴れるミノタウロスを殺す男の物語。このアルバムで最も長い曲だが、実はリフがたった3つしか出てこない。EXODUSとSLAYERとSODOMのいいとこ取りみたいな曲だと思う。

実はレコーディングをしたとき、自分で作詞作曲しておきながら、この曲は何故かあまり好きじゃなかった。おそらく作詞作曲の全てを1人でやったのが初めてで、不安の方が勝っていたのだろう。

だが完成して何ヶ月か経って、酔っ払った帰り道で改めて聴き直したとき、かっこよすぎて気付けば早稲田通りで右手にメロイックサインを掲げていた。そのとき、一切の不安がなくなった。

手前味噌ではあるが、何より中間リフ以降が素晴らしい。若干メロディアスな不気味さが、手に負えない邪智暴虐のミノタウロスを表現しているというか、そんな感じの世界観を上手く表現できたと思う。

短いキャリアではあるが、この中間リフは僕の人生で1.2を争うほどいいリフだ。

7. Wrath of Noah

作曲:HARU
作詞:HAYA SEA

バンド名を冠したタイトルトラックだ。林さんがサビに「ラスオブノォォア!」と入れたら、見事にハマって鬼のカッコよさになったので、この曲がタイトルトラックとなった。

最もメロディアスな曲だ。メロディアスな展開はキャッチーだが、だからこそ大人しい雰囲気になりやすい。それを避けるために、本能でビートに乗れるようなスラッシーなリフを、ふんだんに盛り込んだ。

メロディックデスメタルっぽくもあるが、あくまでスラッシュメタルの文脈で作られている。このバランスこそが、Wrath of Noah がWrath of Noah たる所以なんだと思う。

マーティーによる泣き泣きのギターで優勝してほしい。そしてそれをただの泣きとして終わらせない展開で、もう1度優勝してほしい。

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振り返ればこの7曲を作ってから3年が経つ。我々も本質的にはあまり変わっていないだろうが、3年も経てばやはり別人になる。

今回このセルフライナーノーツを書き、当時のケツの青さを懐かしむと同時に、自分の変化を見つめ直すことができた。

全ての物事は、時間とともに良くも悪くも変わる。作る曲も同じことで、良くも悪くも変わる。

だからこそ、自分の過去を振り返り、現在を再確認し、そのうえで未来を見据えることが大切なんだと思う。

僕はこのアルバムを、人生の1枚目としてリリースできた事実を誇りに思うし、制作中に得た経験や感動は、お金には換えられないほどの宝物だった。3年経ってもそう思える。本当に幸せなことだ。

ぜひこの素晴らしい7曲を、末長く聴いていただきたい。Wrath of Noah で「速え!強え!かっけえ!」と言いながら、優勝を繰り返していただけたら本望だ。



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