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ANCHANGがANCHANGさんになった日
2021年9月19日、渋谷はGARRET Udagawaにて、MELT4とSEX MACHINEGUNSと2マンライブが開催された。
当日は緊急事態宣言下で声出しNGだったが、会場と画面の前の皆さんの熱いバイブスが、ステージ上までバシバシ伝わってきた。
この感動を上手く言葉にできなかったあの日の僕は、小田和正よりも言葉にできない男だっただろう。ぜひとも明治安田生命のCMに起用していただき、たくましくスポンサー料を頂戴したいものだ。
とはいえ感謝の気持ちは言葉にしないと伝わらない。というか言葉にしたいから、させていただきたい。
ご来場いただいた皆さん、配信を見てくれた皆さん、主催してくださったGarretスタッフの皆さん、心より感謝申し上げます。本当に本当に、ありがとうございました。
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さて、せっかくSEX MACHINEGUNSとの2マンライブを取り上げたのだ。当日の裏話も含めたエッセイを記したい。
実はこの日、僕はフジロックよりも緊張していた。
無理はない。僕にとってマシンガンズとは、中高生の頃にテレビやカタログで見ていた「向こう側の人たち」だったからだ。
ーーー中学生の頃、僕はロックに目覚め始め、ギターにどうしようもないほど憧れを抱いていた。
両親には「ギターはダメ」と言われていたが、そこはさすが思春期の男子。ダメと言われれば余計に興味が湧いて仕方がない。
しかし僕は同時に、真面目で硬派な野球少年でもあった。「ダメと言われたのにギターギターと騒ぎ続けるのは男らしくねえ」という中学生男子特有の謎プライドを持っていた。若干の昭和の香りすら感じる。
そしてギターへの溢れる興味を悟られぬよう、元環境大臣よろしくクールでセクシーに振る舞おうとしていたのだ。
だが当然、ギターへの熱は冷めるわけがない。
ギターが欲しい。いや、手に入らなくてもギターの音を聴きたい。聴くのが無理なら見るだけでもいい。とにかくギターギターギターギター。
当時の僕は、ケータイを持っていなかった。家にもギターの影すらない。はて、どうしようか。
親のパソコンでこっそりギターを調べまくった。テレビの中にギターを探しまくった。
そして遂に「新堂本兄弟」という番組を見つけた。Kinki Kidsやタカミーを中心としたバンドが、ゲストと毎週セッションをする。当時の僕にとっては夢のような番組だった。
僕のお目当てはトークではなく、もちろんタカミーと変形ギターである。
ある日の「新堂本兄弟」に、ANCHANGが鉄板のようなエクスプローラーとともに登場した。デーモン閣下がゲストの回で、小柳ゆきの「愛情」を歌う中、ANCHANGはタカミーとギターソロバトルをしていた。
これが僕とSEX MACHINEGUNSとの出会いである。
2人のギターソロバトルには、それはそれは痺れた。何を弾いてるかはわからないが、とにかく「ギターかっけえええ!」と思った。
もちろん録画して、何度も何度も観た。ばあちゃんが座る居間のテレビで、飽きるまで観た。いや、たとえ飽きても、次の日にはまた観ていた。
年相応の記憶力となっていたばあちゃんも、「また相撲に詳しい悪魔が歌っとる」と思っていただろう。ばあちゃん、ごめん。心の中で謝りながらも、僕の目はギターソロの応酬に釘付けだった。ちなみにその録画は、いまだに実家のHDDに入っているはずだ。
無論、ここまであからさまにギターへの憧れが態度に出ていると、もはや家族にはバレバレであった。全くクールでもセクシーでもない。
しかし、そこはやはり思春期男子。ヨダレだらだらの犬のような顔をしながらも、無駄に硬派なプライドをなぜか捨てられず、「別にギター欲しいわけじゃないし…」とうそぶいていた。なんとも恥ずかしい思い出である。
ーーーあれから約10年。人生は不思議なものだ。
あそこまでギターに憧れていた少年は、なぜかベースを選んだ。何年も飽きずにバンドを続け、SEX MACHINEGUNSと2マンライブをすることとなる。
2マン開催が決まったのは、7月中旬のことだ。
ああ、今日からANCHANGじゃなくてANCHANG「さん」だなぁ、同じシーンの大先輩だもんな。でも僕の中では画面の向こうのギターヒーローANCHANGだもんなあ。
そんなことをぼんやりと思った記憶がある。
そしてライブ当日。マシンガンズが同じ楽屋にいる。僕の頭の中は、ファンの視点と共演者の視点を行ったり来たりしている。
目の前にいるのがANCHANGであるがANCHANGさんでもあり、SHINGO☆であるがSHINGOさんでもあって、SUSSYであるがSUSSYさんである。そんな状態なもんだから、色んな意味で緊張する。
とはいえ、楽屋が同じだったので色んなことを話した。サポートドラムのトーマスさんと「業務スーパーは何が美味しいか?」について情報交換したり、SUSSYさんにコストコ利用術を聞いたりもした。SHINGOさんとはネット上に書けないような際どい話(ほぼ下ネタ)もたくさんした。
同時に楽屋は、僕らのような若輩者にとって貴重な学びの場だ。真面目な話もたくさん聞いた。普段どんな曲を聴くのか?なぜあの機材を使っているのか?どうやって曲を作っているのか?などなど。
ANCHANGさんから、数々のマシンガンズの名曲が生まれた過程を聞いたときは、ANCHANGさんの哲学に触れた気がした。
ありがたいことにたくさんいただいたアドバイスの中から、1つを記そうと思う。
「MELT4は振り付けしないやろ?同じ若手のスラッシュメタルだったらHell Freezes Overが、もう振り付けっぽいことをやっている。MELT4はしない方がいい。とにかく他と違うことをしなきゃアカん。」
このアドバイスに、ANCHANGさんの哲学が詰め込まれていると思う。僕は痺れた。他と違うことをし続けて、武道館までのし上がったSEX MACHINEGUNSが言うのだ。説得力が違う。
月並みな言葉ではあるが、真剣なアドバイスをいただけて本当に嬉しかったし、何より勉強になった。
あの瞬間から僕の中で、画面の向こうの有名人ANCHANGは、大先輩のANCHANGさんになった。
そして会場を後にした帰り道、僕がバンドを辞めてファンに戻る日までは、画面の向こうのANCHANGという認識を封印することに決めた(果たしてそんな日が来るかはわからないが)。
師匠を超えるのは弟子の務めとはよく言うものだ。
MELT4とSEX MACHINEGUNSは公式な師弟関係ではないにしても、ANCHANGさんから、SHINGOさんから、SUSSYさんから、学び、実力をつけ、追いつき、追い越せればと思う。
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さて、MELT4の10月のライブは以下の2本だ。未発表の新曲もガンガン演奏する新セトリを用意しているので、ぜひ遊びに来てほしい。
10/24(日) at 新高円寺LOFT X
ONE’S TRUTHレコ発ツアー
(チケット予約はこちら)
10/29(金) at 渋谷CYCLONE
DOROTHY DOLLのハロウィン企画
(チケット予約はこちら)
フジロックやマシンガンズとの2マンを経て、MELT4がどれくらい大きくなったのか。ぜひ、ご自身の目と耳で確かめていただきたい。