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ギリシャ神話の話3 ギガントマキア7
攻防
「雷よ!!」
ゼウスが雷霆を掲げると無数の雷が黄金の蛇となってテュポーンに襲い掛かる。
テュポーンは逃れようと必死に飛び立ちゼウスとの距離を取る。
「ここじゃあその自慢の巨体は狭いだろう、もっと広い所で戦おう、か!」
そういうとゼウスは地面を思い切り踏み込み、テュポーンに向かって突撃した。
テュポーンは苦悶の表情を浮かべ、体をくの字に折り曲げ北へ吹きとんでいった。
ゼウスはヘルメスの方をチラリと一瞥し、ヘルメスはそれに応え片手をあげた。
「親父!負けんなよ!」
ゼウスは吹き飛ばされたテュポーンを追いかけ、飛び立っていった。
山脈投げ
テュポーンはオリュンポスのあった位置から北側のトラキアまで吹き飛ばされてしまった。
先程食べた絶望の果実の効力は高く、思った以上に身に力が入らない。
その時稲妻のように鋭い光が自身に向かってきてるのに気付いた。
───ゼウスだ
そう察したテュポーンはゼウスの勢いを止めるべく、自身の長大な腕を大きく広げ足下のバルカン山脈をゼウスに向かって投げつけた。
![](https://assets.st-note.com/img/1717512705824-V9oA64xUbl.png)
現在はブルガリア北部の山々
山脈は大きな礫となり空を覆いゼウスに向かって飛来した。
ゼウスは雷霆を掲げ雷を迸らせる。
すると降ってきた山々は次々と勢いよく弾き返され、テュポーンへと直撃した。
山脈に埋められたテュポーンは這う這うの体で瓦礫となった山を振り払い逃げていった。
「逃がすと思うかテュポーンよ」
そういうとゼウスはテュポーンを追いかけるために再び飛び立った。
山落とし
自分がこの世に生を受けてから、ここまで苦しむことがあっただろうか。
テュポーンは自問自答するが思い当たるものはなかった。
大地とタルタロスという二つの大きな祝福を受け、生まれたときから地上最強だと思っていた。
しかし上には上がいる。逆らうべき存在ではなかった。強い後悔がテュポーンを襲っていた。
逃げるために南下していたテュポーンは気づけば海まで来ていた。
このまま進み海の果てのタルタロスまで逃げれば・・・そう思っていたテュポーンは急に空が暗くなったことに気づく。
───太陽が見えない。
空を見上げてもそこに輝いているはずの太陽が昇っておらず、いつの間にか夜になったのか?と錯覚した。
見上げた空に一筋の光が差し込んだ。
あの光は、まさかとテュポーンは目を細める。
「終わりだ。神々の系譜史上最大の怪物だったものよ」
ゼウスが掲げていた手を振り下ろすと、空を覆っていた巨大な影がゆっくりとテュポーンに向かって降りて行った。
落ちてきたソレはテュポーンをも包むほど巨大な岩の塊であった。
「グオオオオオォォォ・・・ォォ・・・」
怪物が発した叫びはやがて地上に激突した岩の轟音にかき消され、終には静寂だけが残った。
テュポーンを地の奥底へと押し込んだ岩、それは後にエトナ山と呼ばれる火山であった。
![](https://assets.st-note.com/img/1717513797928-gjvhzoGdB4.png)
そこには欧州最大の活火山が今も活動している。
終戦
「終わったか!?親父!」
ヘルメスがゼウスのもとに降り立ち問うと、ゼウスは目を閉じ確かめるように小刻みに首肯する。
「あぁ、やつは・・・」
ゆっくりと目を開けエトナ山を見つめ
「あの下だ」
「島の底ならいくらアイツでも弱ってる状態じゃ出てこれねぇな」
安心したのか笑みを浮かべるヘルメス。
───ゴゴゴゴッ
と鈍い音があたりに響く。
音は今しがたテュポーンを地の底に沈めたエトナ山の方から聞こえてくるようだった。
「あいつ、出てこようとしてる・・・?」
ヘルメスが浮かべていた笑みは消え、ゴクリと唾を飲み込む音がゼウスにも聞こえるほどだった。
地響きは続きエトナ山は鳴動するように溶岩を噴出した。
だがそれもしばらく経つとおさまっていく。
「あの様子じゃ、あと1万年は出てこれんだろう」
ゼウスがそういうとヘルメスは胸をなでおろした。
「そういやガイアは!?」
「あのばあさんなら、テュポーンを追いやってるときにタルタロスの方へ逃げてったわ。あの様子じゃしばらく悪さも出来んだろ」
ヘルメスはその場で大の字に寝転がり天を仰いだ。
「長ぇ戦いだったなー」
そう空に向かって唱えると目を閉じ大きく息を吐く。
テュポーンとの戦いで荒れ狂っていた嵐はやがて緩やかな風となり、二人の間を通り抜けていった。
二人は神話史上最大の戦いの余韻を噛みしめるように、過ぎていく風の行く先を見つめていたのだった。
あとがき
長い!
あと文体の差を統一せないかん
長期に渡り書いていたせいでもうバラバラ。
最初からプロットきって書き込めばこうはならんかったのに勢いで色々試すから酷い。
これはいずれ書き直します。
がいったんは区切りってことで、個別の神様の話書きたい。
そもそもクロノスのこと書きたい!で始めたのに、いつになったら書けるのやら
![](https://assets.st-note.com/img/1717599866577-23VGTMosw9.jpg?width=1200)
火山活動は地面の下でテュポーンが暴れてるから起きてるってことになってる
ではまた次回!