文字を守るということの意義
現在世界中で話されている言語は数千種類もあると言われています。
その中で言語を文字体系化したものはどれくらいあるか?これはおおよそ二割ほどしか文字になっておらず、そのほとんどは言葉としては存在していても文字として読むことは出来ません。
自身の周りだけで生きていくような刹那的な生き方であれば、会話のみで済むので文字は必要ではありません。
ですが文字があることで言葉を介さずに意志を受け渡しすることで暮らしを豊かにしたり、また文字を通して過去に起こった物事を知るという意味でも文字は人々の暮らしには欠かせない存在であるといえます。
先日来書いていたクレタ島について手元のメモに線文字のことが書いてありました。
おおよその人が聞いたこともないであろう聖刻文字・線文字について、まずお目目を拝借させていただければと思います。
*お目目を拝借って初めて使ったけど、耳以外の場合は何て言えばいいんですかね。どなたかご存知の方ご教示ください。
お目汚しだとちょっと意味合い変わるし。
ミノア文明の文字
古代ギリシャの大本であるミノア文明があったクレタ島。
そこには往時を思わす数多くのものが発掘されています。
その発掘物からは三種類の文字が見つかり、発掘された年代別に分けそれぞれ「クレタ聖刻文字」「線文字A」「線文字B」と名づけられました。
聖刻文字
まず聖刻文字ですが、これは紀元前18世紀以前の発掘物に描かれたもので、青銅器文明の時代の遺物に文字が書かれています。
しかし未だ未解読の文字となっており、私なんかがパッとみても「どれが文字?」となるレベルの紋様でした。
現代の文字と言うより図形のほうが近く、象形文字のような図柄となっているがそれが何を表してるかまでは分かっていません。
線文字A
次に線文字Aですが、聖刻文字よりももっとハッキリ文字として描かれていますが、こちらも聖刻文字と同じく解読には至っていません。
文章のパターンが一定ではなかったり、そもそも見つかる数が少なかったりで、解読は難航しています。
ここの文字が解読されれば時代的にもミノタウロスやラビリントスの謎が解明されるかも?なのですが、今後の研究を待つしかありません。
線文字B
最後に線文字Bですが、これはクレタ島だけではなくギリシャのペロポネソス半島を中心に多くの場所で使用されていました。
クレタがミケーネなどのギリシャ国家に攻め込まれ滅ぼされた後に、線文字Aに代わり線文字Bが扱われるようになりました。
おそらくですが聖刻文字→線文字A→線文字Aが文明の先端だったクレタを中心にギリシャ諸都市に文化伝播→線文字Bがギリシャ側で誕生→クレタが攻め込まれ線文字Bがクレタにも波及、という流れかと思います。
文化の植え付けには自国の文化で過去のものを上書きするのが植民地としてのやり方だとは思いますが、それによって過去の歴史が失われてしまうのはとても惜しいし悔しいですね。
文字の元祖
ここでちょっと流れを変えて文字の歴史についておさらいしてみましょう。
文字は史や志を繋ぐ際に使われるものです。
そして人類は文字という大発明によって世界中で爆発的に生活圏が広がっていきました。
現代にも残る四大文明では全て文字が使われており、広がる文明には文字の力が大きかったことがうかがえます。
エジプト文明 ヒエログリフ
ヒエラティック、デモティックとならぶ古代エジプトの三種の文字の内の一つ。
いつから使われていたかはまだ解明されてはいないが、紀元前4000年頃の壺に描かれているものがあるそうだ。
メソポタミア文明 楔形文字
文字の形が楔のような形をしていることからそう呼ばれる。
紀元前3000年以上前から使われており、シュメール人が記録の為に発明した。
インダス文明 インダス文字
紀元前2600年ごろから紀元前1900年ごろにモヘンジョダロやハラッパーなどの都市で使われた。
現在も解読の為の研究が進んでいるが、全容はまだ分かっていない。
中国文明 甲骨文字
古代中国の殷の時代に使用されたと言われる文字。
亀の甲羅に文字を描いたことでそう呼ばれる。
中国語の具体的な文書としては最古のものとなり、現代の漢字は甲骨文字を土台にしている。
とまあ各文明には形をもとにした象形文字があり、今から5000年以上も前から文字をいうものに触れている。
今日までかつての文明が発明した文字を世に残しているのは、甲骨文字を基にした漢字しか存在しない。
それは一体なぜか?それは象形文字はとにかく数が多かったのだ。
表意文字と表音文字
文字には大別して二種類あり、それは表意文字と表音文字で分けることが出来る。
表意文字
表意文字というものがある。これは「文字単体で意味を成す文字」を指し、漢字がそれにあたる。
例えば漢字の「空」という字があります。これは「そら」だったり「からっぽ」などの意味を持ちます。仏教では「悟りを開いた後の世界」を指したりもします。
この文字を他の文字で表現すると「sky」など複数の文字が必要になります。
表意文字は文字自体が意味をもっているため、他の文字よりも短く表現できます。
一見するととても便利な文字ですが、大きな問題点があります。
それは文字の数。事象自体を文字にするために文字の種類が膨大になる傾向があります。
上記に出した楔形文字も初期は1000以上の文字がありましたが、表意文字から表音文字を増やし体系を変え400種類から200種類へだんだんと文字数自体が少なくなっていきました。
文字に触れる人すべてが高度で膨大な知識を備えていないと扱うことができない、というのが表意文字の大きな問題点となっています。
そのせいか四大文明ではどこも象形文字という表意文字を扱っていましたが、中国以外は段々と表意文字が廃れていき現代では漢字(と数字)以外の表意文字は失われてしまいました。
*コンキスタドールに滅ぼされてしまったアステカ文明では表意文字を使っていましたが、侵略によって文明が失われてしまったため現代にはつながっていません。
もう少し紳士的な方々であったら現代にも残っていたかもと思うと、非常に残念です。
表音文字
こちらは表意文字と異なり、文字自体に特に意味はなく音節や音素(子音や母音など)によって文字を区分けする方法。
現代に残る多くの文字はこちらであり、平仮名やアルファベットなどが表音文字にあたる。
表意文字に比べ発音の数だけしかないので、多くても100種類ほどの文字となる。
そのため高い学力がなくても習熟しやすいため、現代にも数多くの文字がつながることが出来た。
文字を繋ぐ
『書を守ることは世界を守ること』
これはgoodアフタヌーン掲載の『図書館の大魔術師』に出てくる言葉であるが、まさに人類が歴史を繋ぐため必ず守るべき行いだといえる。
文字によって先人の想いが粘土板や動物の骨などの『書』として残り、現代までその思いを繋ぐことができている。
しかし一部の心無い人達によって、その想いは途切れ未来に繋がらない。
先人たちの想いに対し私達現代人に出来る努力は、『文字』に敬意を表し、用い保護し未来へ繋いでいくことと思う。
アインシュタインもこう言ってました。
「人類最大の発明は複利である」と。
文字じゃなかった。あたしゃ文字だと思ってるよ。
あとがき
違う、これが書きたかったわけじゃないんです。
文字を繋ぐことで何千年も前のものが残ったものにこんなものがあるんだよーと紹介するだけの記事の予定が、文字についてあれもこれも前提必要だわ。あらこれもこれもだわ。ってやってたらそれを書く気力が尽きた。
中国なんて何回も王朝変わってるのに、科挙を突破したスーパーエリートたちが文字だけは決死で繋いできた、その結果現代でも表意文字が残ってるんや!って言いたかったのに、まーここで言えたからいいか。よしとします。
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