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今日の一曲 4曲目

『ギャップ萌え』という言葉が世にはある。
例えば『ヤンキー少年が実はコッソリ捨て猫の世話をしている』や『普段会社ではシゴデキなのに家ではダラけてしまう』などである。
これはメリハリが効いていることによってその大きく開いた差を楽しみ、またその差がどちらも好意的な場合により魅力が増していくということであろうか。

このギャップ萌えというものどういった環境でも生まれる。
人の性質だけではなく、映画や小説でも同じだ。

そしてそれは音楽でも同じことがいえる。

私の好きな曲の傾向として、序盤はしっとり後半は激しくというものがある。
サビで一気に盛り上がるタイプの曲だ。

『地獄のオルフェ』という曲をご存じだろうか?
日本では『天国と地獄』という曲名でよく紹介され、運動会の徒競走などでよく利用される曲だ。
ギリシャ神話(ローマ神話)が密接に関わっている曲なので私は大好きな曲なのだが、この曲もギャップ萌えを上手に利用している。
穏やかさと急なアクシデントを描きつつ、静かなしっとりめな展開、厳かで煌びやかな色調が描かれたかと思えば、「あれ?なんだ?何かが始まる・・・?」という予感とともに一気に楽しい展開に持っていく。
この厳格さからの一気に幕が開き明るい空気が入り込みギャップが生まれるような展開が大好きだ。

しかし今日の一曲はこれではない。
というより『天国と地獄』を紹介なんて「世界的に超有名曲なのに!?」と言われそうで、末端の社会の歯車ライターである私が紹介など軽々に出来るはずもない。

今日の一曲はもっとポップに、しかしギャップ萌えを感じるこの曲
『Buyer Client』の「dabscription」だ

かつて70年代~80年代に流行したシティポップは2010年以降、『エモい』や『チルい』などの癒しソングとしてリバイバルされ注目を浴びている。
音楽の流行はまさしくその当時当時の『現代』に求めるものが詰まるものである。
つまり2020年代の息の詰まった世の中で、安らぎや癒しを求める人が多いということだろうか。

だがこの曲はそれだけで終わらない。

前半はまさにエモさを感じるチルソングであるのだが、後半から急にそのカラーを変え、青が赤に変わるどころか虹色に光り輝くような展開を魅せる。
最初シャッフルで流れてきた時の「『Buyer Client』って誰だろ。いい感じの曲作るなぁ・・・」なんて電車の車窓から見える夜景にゆったり思いを馳せていたら、顔面パンチされ窓の外に飛ばされるような衝撃が駆け巡り瞬時にプレイリストに叩きこみました。

これだけ味が変わる曲であれば、一粒で二度おいしいというわけで是非おすすめしたい一曲だ。

また直接楽曲の評価ではないが、MusicVideoでの演出として左右の黒枠を伸ばすシーンがあるが、それによって前半では映らなかった場所で『本来の彼ら』が何をしていたかが分かるというのもエモい演出だ。
『go!go!vanillas』の「平成ペイン」を思い出し(もしかしたらインスパイア?)と思うところもあるが、ギャップを生む演出としては非常に優れている。
ご存じでなければ是非どちらも視聴いただき、比較されてみるのも面白いと思う。


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