鈴木大拙の思想について徒然なるままに
1.大拙との出会い このエッセイがどれほどの方に読まれるかわからないが、数少ない読者に鈴木大拙の魅力が伝われば、これに過ぎる喜びはない。私と鈴木大拙との最初の接点は金沢市の鈴木大拙記念館である。同館は谷口吉生により設計された建築で、白亜の小閣が水面に凛として映える姿が印象的な佇まいである。それ以来、少しずつ大拙に親しんできた。記念館で記憶に残る事ことがあった。外国人の観光客が立ち入り禁止の場に入って注意を受けたときのことである。それを見た初老の紳士が、立ち入り禁止を明記しない