隣人

2月の末だったか、隣人が引っ越してしまった。
私が実家に帰省している間に、だ。
隣人には三年共にした間に二回しか会っていないのだが、ごく普通の女子大生だった。
それだけしか関わりがなかったのに、どこか喪失感が湧いてくる。
慣れ、とは怖いものだ。

そんな彼女との思い出、といっても
私が勝手に作ってしまった思い出しかない。
ベランダでの出来事だ。
私の住んでいる地域はとにかく風が強い。強すぎるのだ。
だから、ベランダにレジャーシートなんかを敷いてみれば、ベランダの隙間からお隣に「こんにちはー!」なんて当たり前であって。
私と彼女はその一例と言ってもいい。
彼女が敷いていたスターバックスのレジャーシートが何故かよく我が家のベランダにきていた。
あまりにきすぎて、
(コイツ、うちの子になりたいのかしら…)
なんて思った日もある。
お隣さんはとても静かで、音漏れなんてなかなかしないのに、ある日、yonigeのアボカドを流しながら一緒に歌っていた。
(あらっ!珍しいこともあるのね!私も好きですよ!!!)
と思いながら、もっと聞こえるようにベランダに出てみたら、また奴がいた。
そう、スターバックスのレジャーシート。
(……。)(……サッ。)
一気に気持ちが冷め、そっと静かに彼女の家に返したことを覚えている。

夏なんかは、ベランダによく出るんだけど、その音漏れから、彼女が嵐好きだったり、名探偵コナンを見ているだとか、ぶっちゃけどうでもいい情報を手に入れてしまったこたも、思い出と言ってしまえば、思い出なのかもしれない。

だからなのか。
この、なんとも言えない喪失感を感じるのは。
きっと、春からは社会人として頑張っていくんだろうなぁ。
彼女とは、今後会うことはないだろうけど、どこかで頑張ってほしい。

そんな事をしていれば、お隣に新しい人が引っ越してきたみたいだ。
朝からゴソゴソいっている。
こんな私の喪失感なんて一切無視に世の中はまわっていくんだ。
それと同時に、新しい人に期待してしまっている私がいる。
きっと、4月からの新しい生活に希望と不安を抱きながらもキラキラしているんだろう、とか思っている。
この気持ち、何かきっかけがないと持てないし、尊い、といってもいいくらい、私にとっては眩しい気持ちであって。

私を置いていってしまった隣人も、
私の隣に新しく来てくれた隣人も、
頑張っておくれやす。
私も、頑張るから。
人の縁とは、不思議なものだナァ。

#独り言 #つぶやき #日記 #隣人 #出会い

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