
教材開発:AIが織りなす「教材アップデート」—学生とAIの発想力のコラボレーション-
(1)授業での大ヒット!
「ねておきたら○○になっていた」。
このシンプルな書き出し(*わたしの鉄板ネタです)が、学生たちの創造力を一気に解放しました。印象的だった作品を一つ紹介します。
ねておきたら、スマホになっていた。
じぶんの体から、爆音が鳴った。持ち主は起きない。スヌーズされた。5分経って、また鳴った。自分がうるさい。持ち主は、まだ起きない。起きる気配がない。スヌーズされた。
また5分経って、またまた鳴った。自分がうるさい。持ち主は、まだまだ起きない。スヌーズされた。
またまた5分経って、またまたまた鳴った。持ち主は起きない。
あ。慌てて起きた。すごく慌てて自分をみた。
血相を変えて部屋を出ていく。
遅刻だろう、たぶん。
この作品では、スマホの視点を通じて私たちの日常の一部をユーモラスかつ鋭く切り取っています。「使う側」と「使われる側」という立場の逆転が、単なる空想を超えた深い視点を与えてくれてます。この創作体験は、学生が自分のアイデアを自由に表現しつつ、新たな視点を得る機会となりました。
(2)学生の提案とAIのサポート
この授業のリフレクションに、一人の学生が次のように書きました。
…同じお題でも、どんな場でどんな気持ちでいるかが違うと、さまざまなストーリーが生まれることが分かりました。今度は、逆に決められた背景からストーリーを考えることもやってみたいです。
この「決められた背景からストーリーを考える」という提案は創作の視点をさらに深めるよいアイデアです。ただし背景があらかじめ決められているという創作課題を作ることは容易ではないです。アイデアはよいですが、課題づくりは困難を極めるはずだと半ば諦めかけました。しかし「もしかしたら…」とChatGPTに指示をしてみることにしました。
ステップ1:ChatGPTに学生がしたのと同じ「ねて起きたら○○になっていた」を書いてもらいました。悪くない出来です。
ステップ2:これを踏まえて、「決められた背景からストーリーを作る」という創作課題を考えてもらいました。以下です。
創作課題 1: 「不思議なバス停」
背景: 町の外れにある、ほとんど使われていないバス停。時刻表には一つの時間だけが書かれていて、それがいつも夜中の3時。あなたがそのバス停で待っていると、ついにその時が訪れる。
課題: 夜中の3時に到着するバスに何が起こるのか、どこに向かうのか、そしてあなたがなぜそこにいるのか、自由に想像してストーリーを作ってください。
創作課題 2: 「願いがかなう鏡」
背景: あなたは古びた骨董屋で、どんな願いでもかなうと言われる小さな鏡を見つけます。その鏡に向かって最初に願ったのは、とても些細な願いでした。
課題: 願いがかなうことを知ったあなたは次に何を願うのか?鏡にはどんな秘密が隠されているのか?最初の小さな願いから物語がどのように発展していくのかを書いてください。
創作課題 3: 「消えた一日」
背景: ある朝目が覚めると、日付が自分の知っているはずの1日よりも1日先に進んでいます。昨日の記憶が完全に欠けていて、周りの人は何事もなかったように普通に過ごしている。
課題: 消えたその1日に何が起こったのか、そしてあなたがそれをどう取り戻すのかを書いてください。周りの人に問いただす中でわかることや、気づきなども自由に描いてください。
ChatGPTの創作課題は、学生の提案をさらに具体化し、創造的な刺激を与えるものでした。正直、ヒットの予感しかないです。
(3)AIと人間のコラボで進化する教材
このChatGPTの「決められた背景からの創作課題」は、過去の教材に新たな命を吹き込むものでした。過去に蓄積された教材が、学生のアイデアとAIのコラボによって「再創造」されているということを感じました。
特に印象的だったのは、AIが提案した課題が学生の興味を引くだけでなく、指導者である私にとっても新しい気づきを与えてくれた点です。たとえば、「不思議なバス停」という課題は、時間や空間の制約が生むストーリーテリングの可能性を広げます。また「願いがかなう鏡」という課題は、他者との関わりや共感をテーマにした深い物語を創作できる可能性を秘めています。
(4)未来への展望
この経験は、教育におけるAI活用の可能性を改めて実感させてくれました。AIはただの補助ツールではなく、人間の創造性を引き出し、広げるパートナーになり得ると実感しました。
今後も、この三者が織りなす「コラボレーション型教材開発」をさらに探求し、新しい学びの形を追求していきたいと思います。読者の皆さんも、ぜひAIを活用して教材や授業のアップデートに挑戦してみてください!