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アップルパイを食べたから
“前回会った時、あのお店で桜のシフォンケーキを食べたから、会うのは春以来だね”
半年ぶりに友人に会った。
彼女は中学の頃からの友人で、
おそらく私よりも私のことを良く知っていて、
ほとんど怒ったことのない私が
過去に唯一、怒りをぶつけたことのある人だ。
社会人になってからは、
お互いの仕事の都合もあるから
そんなに頻繁には会えないけれど、
会えばいつも、
まるで毎日顔を合わせていた頃のように、
リラックスした気分で時間を過ごすことが出来る。
おたがいあまりおしゃべりな方ではないから、
会っても、絶えず会話をしているという感じではない。
いつもおたがいに、
話したいことだけを、話したいタイミングで
ぽつりぽつりと話しているけれど、
たぶんおたがいに、
伝えたいことは、だいたい伝わっているし、
理解して欲しい気持ちは、だいたい理解できているのだと思っている。
私には、友人と言える友人は少ないけれど、
彼女のような人達が少しいるだけで
もう私には十分過ぎるくらいなのだと思う。
次に彼女に会う頃には、
きっとまたいくつか季節が進んでいる。
そして会えた時には、こんな風に話すのだろう。
“前回会った時、あのお店でアップルパイを食べたから、会うのは秋以来だね”
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