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tokidoki126
変わらずここにある
陽のある時間帯は、
ひと気もほとんどない閑散とした街。
夜になると、
ギラギラとネオンが輝き、たくさんの人で賑わう街。
大きな歓楽街の真ん中に、まわりの風景にまったく馴染まない、趣ある佇まいの建物がある。
そこは、私が大学生の頃にアルバイトをしていた、ある老舗飲食店だ。
その店にはネオンなどなく、あるのは入り口につけられた小さな灯りのみ。
とても賑やかな街の中にあるが、ひとたび暖簾をくぐれば辺りがどんな場所だったのか忘れてしまうくらい、静かな時間の流れる店。
店の旦那さんに、なぜこの場所に店があるのか、聞いたことがある。
すると、歓楽街の真ん中にこの店があるのではなく、店の周りが歓楽街になったのだと言う。実はこの店、江戸時代から変わらずここにあるそうなのだ(旦那さんは6代目)。
もちろん建て替えや手入れなどはしているだろうけれど、どおりで趣のある佇まいをしているわけだと納得した。
世界を騒がせた流行り病以降、あの街はどうなったのだろうと思う。
旦那さんの店が、今も変わらず営業していることは知っている。
けれど、周りにあったギラギラとしたネオンが輝く店や、いつも外に立っていたきらびやかな衣装をまとった人たちは、今も元気にやっているのだろうか。
昔からこんな風に、避けられない時代の流れに飲まれ翻弄されながら、あの店の周りの風景は変わってきたのかもしれない。
そしてまた、変わっていくのかもしれない。
そんなことを思うと、少し胸がぎゅっとなるのだ。