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古いアパート

近所にある、金属製の外階段や手すりがところどころ錆びた二階建ての古いアパート。

なんとも言えない趣のあるそのアパートの
取り壊し工事が始まった。

誰かにとって帰る場所だった、その場所。
誰かにとって楽しいまた苦い思い出が詰まっているだろう、その場所。

意味のある場所だったそれが
重機によってガラガラバリバリと
あまりにもあっけなく、遠慮なく崩されて
瓦礫に変わっていく。

それを見ていると、
崩れていく建物とともに
そこにあった記憶や思い出の数々まで、
泡のようにはじけて
消えてなくなってしまうような気がする。

まるで夢でも見ていたかのように。


駅も近いから、
アパートが消えてしまったあとには
また新しい何かが建つのだろう。
そしてそこに新しい人たちがやってきて
また新しい記憶が作られていくのだろう。

けれど
崩れゆくアパートを見ていると
どこか寂しくて、胸がぎゅっとするような
たまらない気持ちになるのだ。


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