安らげる場所
あの日のカフェゼミが行われる日の午前中、私は某カフェチェーン店で次の日のプレゼンの仕上げをしていた。
その日は風邪をひいていて、なんだか温かい飲み物と落ち着ける場所を体が求めていたのでカフェに行く予定はなかったのだが、ふらっと入ってみた。お昼時だったからか、お店の外まで列が並ぶぐらい混んでいた。昼休憩中のOLさん、新作を飲みにきた大学生、パソコンで作業している人など、見渡すとそれぞれ違う目的でそこにいる。
飯田さんのお話の中に、「一杯のコーヒーはカフェへの入場料」という話があった。私にはそれがすごく共感できた。風邪をひいていたけれど、プレゼンも終わらせなければいけない。体も心も休める場所が欲しかった。私にとってその日のカフェは贅沢な休憩場所でもあり、課題を進める場所でもあった。家でも学校でもない、もう1つの自分の居場所。友達とカフェに行く時は会話して飲み物を飲んでと楽しく過ごしているが、1人でいく時は時間の流れをゆったり感じられるように安らげる場所だ。「サードプレイス」は気軽に知人とおちあえる場とお話しの中であったが、私にとってのカフェがサードプレイスなのかはまだわからない。
考えてみると、高校生ぐらいの頃から私は割と頻繁にカフェにいく人間な気がする。もちろん飲み物をスーパーで買って家で飲んだほうが安上がりだし、わざわざいく必要もないかもしれないけど、たまにお金をかけてでもカフェに行きたくなる。気軽に立ち寄れるカフェの雰囲気が好きな私は、大学生になったらカフェで働きたいと元々決めていた。なんでだろうと考えた時、ふと思った。忙しい日々の中で自分の気分を少しでも落ち着かせられる場所を求めているんだなあと。
カフェゼミの時に実際にカフェを経営されてる方の話を聞く機会があった。やはり理想と現実は違ってカフェの経営はとても難しいみたいだ。東京での土地代の高さによって場所を十分に取れないことや、店の回転をどう早くするかなど、生の声を聞いてみて初めてわかることばかりで、正直驚いた。もっと聞きたいことや話したいこともあったが、まだ自分のコミュニケーション力が足りず、対話に対しては全く満足できてない。カフェゼミという初めての体験をしてみて、知識を得るのにも広げるにも自分の知りたいという欲と聞く力がとても大切だと感じた。
普段食事もできるカフェのホールで働いている私は、お客様と話す時もマニュアル通りに接していればなにも不具合はなく、必要最低限の会話だけしていれば時間が過ぎていく。飯田さんの話を聞いてみて、自分の思っていたカフェとパリのカフェはかけ離れているのではないかと思った。私の思っていたカフェは飲み物を飲むには少し高くて、でもその分自分へのご褒美の時間を味わえる場所であった。その反対でパリのカフェはコーヒーが1ユーロで飲める。地元の人にとっては日本のカフェよりもっと気軽に入れる場所なのではないか。人生に一度はその雰囲気を味わってみたい。公園に行くような感覚でカフェにいく気分を。日本は機械化が進み、人と人とのコミュニケーションなども少なくなっている今の現状で、最終的に未来はどうなってしまうのかわからない。なんだか寂しいようで便利なようで複雑だが、地域の人々との関わりや、誰もが安らげる場所が日本にもっと増えたらいいなと切実に思う。