ある旅館で


#私の不思議体験

今から三十年くらい前、その頃勤めていた会社の社員旅行で、総勢十人くらいで日光へ行ったときのことです。
東照宮や日光江戸村を観光して、その夜は日光の旅館に泊まりました。
女子社員は私を含め二人しかいませんでしたので、夜の食事と宴会が終わったあと、男性陣と別れ二人で和室の部屋に戻り、連れだって旅館の大きな温泉に入った後、部屋に戻りました。部屋に戻り私はすぐに寝ることにしましたが、同僚の女の子は男性陣とカラオケに行くといって部屋を出ました。九時半頃だったでしょうか。
私は程なく眠ってしまいました。それからどれくらい経った頃かわかりませんが、誰かが部屋に入ってくる気配がしました。同僚が帰ってきたんだなと思い目を開くと、寝ている私の枕元に浴衣の男の人が一人一人立っていました。寝ぼけていた私は同僚が会社の男の人を一人連れてきたのかなと思い、何とも思わずまたすぐに寝てしまいました。しばらくして又誰かが部屋に入ってくる気配がしました。同僚の女の子でした。
 「おかえりなさい。さっき誰かつれて一回戻ってきたよね」
 「ううん。今初めて帰ってきたんだよ」
 (ええっ、じゃ、あれ誰だったのかな)
心の中で、そう思いましたが、夢だったのかなと思い、それ以上何も言いませんでした。
 彼女が 浴衣に着替え始めました。(あ、その浴衣さっき見たのと同じだ。自分も着ている旅館の浴衣と同じ柄。さっきの男の人も着てた)
 あの男の人は誰だったのでしょうか。鍵は彼女しか持っていなかったはずなのに、どうやって入ってきたのか。
今でも、時々思い出すことがあるのです。

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